#2 空手
始業式も終わり、2年の教室に戻ってきたチヒロたちはそれぞれ自分たちの席に座る。今日は始業式と先生からの連絡のみで学校は終わった。その帰り道……。
「チヒロー、今日はあの日だよね?」
「ん?あぁ、そうだな。」
「じゃあ、また道場でねー!」
「はいよー。」
ナオと別れたチヒロは村長の家へと帰る。そして昼食を食べた後で村長が思い出したかのようにチヒロに問いかける。
「今日は空手の稽古だったな?」
「うん」
チヒロは週2回、空手の稽古のためにツキカゲ村にある空手道場に通っていた。チヒロのほかに親友のナオ、トモ、マモルも通っている。
「ワシも久しぶりに行こうかな」
「そういえば半年前に行ったっきりだよね……」
「あの時は腰を痛めてしまったが、今回は万全だから大丈夫だ」
村長は腰の痛みがあったにも関わらず、ムリして大技をかけようとした際にやらかしてしまい、そこからしばらくは療養をしなければならない結果になったのだ……。
「これでも昔は空手においては“達人”と呼ばれていたんだぞ?」
「あー、知ってるよ。もう何回も聞いたから」
そんな会話をして、チヒロは空手道場に行く準備を始めようと自分の部屋へ向かった。
――午後4時
チヒロと村長は空手道場に来ていた。そして中に入ると……。
「おう、チヒロ……おや村長!いよいよ今日から復帰ですね?」
「あぁ、やっと本気で空手が出来る!」
久しぶりの空手で張り切っている村長に、チヒロは苦笑する。
「ほら、チヒロも早く着替えて会場に来なさい」
「あ、はい」
チヒロは空手の道着に着替えると、会場へと入る。そして、入る際のあいさつをする。
「よろしくお願いしまーす」
「あ、チヒロ」
「おうチヒロ、遅かったな」
会場には既にナオとマモルがいた。
「よろしくお願いします」
「あ、フミヤ」
チヒロが振り返ると、そこにいたのは金髪の『狐族』のフミヤ。中学部1年年で礼儀が良い少年だ。
「「よろしくお願いしまーす!」」
「おっ、ケンイチとケンジも来たな」
そして、すぐその後に来たのが金髪の『猫族』のケンイチとケンジ。双子の小学部3年で、二人とも活発そうだ。今日のメンバーはチヒロを入れて7人。もう1つの日はこの7人と親友のトモの8人である。
「チヒロ、今日も組手の相手頼むね」とナオ。
「あぁ」
「おいおい、今日は俺と組手だろ?」とマモル。
「あ、僕もチヒロさんと試合してみたいです」とフミヤ。
「俺も俺も!」
「チヒロ、俺ともやろーぜ!」とケンイチとケンジも組手を申し込まれる。
そんなみんなにチヒロも苦笑するしかない。
「よーしお前ら、始めるぞー!」
「さぁ、ワシの伝説が再び始まる……」
そんなこんなで空手の稽古が始まった。