#29 村長の仕事は……
――村長の家
チヒロとナオは、村長の仕事についての話を続けていた。話を聞いてると、ナオも村長の仕事しているところを見たことがないそうだ。
「そもそも前はそんな会ってなかったんだよねー、村長とは」
「そうなの?」
「うん、チヒロが来てからだよ 会う回数が増えたのは……でもやっぱり仕事は知らないなぁ」
ずっと村に住んでいるナオでも知らない……。2人の謎は深まるばかり……。
「ただいまー!」
どうやら村長が帰ってきたようだ。
「しっかり設定も出来たということで、これで今日からこのパソコンが使えるぞー!」
村長はとても嬉しそうだった。
「いやー、仕事の方も前よりは楽になるな」
「!」
仕事と言った……やはり仕事はしているようだ。そして、ナオが踏み込んだ。
「ねぇ、村長」
「ん?」
「村長って、普段どんな仕事してるの?」
「!」
ナオは、ストレートに仕事のことを聞いた。チヒロは村長の様子を窺う。村長は最初、目をぱちくりしていた。そしてしばらくして、上を向いて少し考えてからナオの方を見る。
「ワシの仕事はな……村長だ」とカッコつけてそう答えた。
「……」
チヒロは呆れる。そしてナオは……
「……あー、なるほど」
「納得するのかよ!!!」
チヒロは思わずツッコんだ。
チヒロは、村長が帰って来るまでの出来事を話した。
「どういうことをやってるのかって話か、最初からそう言ってくれれば良かったのに」
「ったく……」
そして村長は、改めて2人に話す。
「そうだな、普段はボランティアの方を手伝ったり……村の発展のために色々な事業を考えたりしてるぞ?」
「ホントに仕事やってるんだ……」
やはり少し信じがたいな、あの村長がボランティアを手伝い、村の事業を考える。そんな姿がチヒロとナオには思い浮かばなかった。
「何を言ってんだ、毎日村長として働いてますよ。お前らの通ってる空手道場も俺が代表になって作ったんだからな!」
村長は腕を組んでドヤ顔をする。
「あー昔はカツラギ村まで空手の稽古に行ってたけど、小5になってからここに空手道場が出来てみんな喜んだよねー」
「そうだったんだ……」
その後も、村長のこれまでの仕事についてを聞いていると夕方になっていた。
――その日の夜
「うーん、どっちにするべきか……」
チヒロが風呂から出て居間の方へ行くと、村長がパソコンの前で悩んでいた。(仕事しているのかな?)と、チヒロは思い村長の横に座る。
「どうしたの、村長?」
「あぁ、掃除の時に見つけた面白い漫画あっただろ?今お前も読んでるやつ」
村長が言っている面白い漫画……それは、客間の掃除の際に村長がサボって読んでいたあの漫画『ユキさんの日常』のことである。現在、2人はその漫画にハマっていた。
「あれ20巻で終わりかと思ってたんだけどな……続編があったんだよ」
「マジで!?」
「ほれ見てみろ!」と村長がチヒロにパソコンを見せると、確かにあった。
「結構お買い得だな……」
そして結局、続編『ユキさんの日常リターンズ』をネットで購入したそうだ……。
「ねぇ村長」
「何だ?」
「今度、仕事してるところ見して」
「いいぞ、今度な」
村長の曖昧な答えにちょっと納得がいかない様子のチヒロだが、すぐに気にするのをやめる。そしてチヒロは、早く『ユキさんの日常リターンズ』が届かないかな……と楽しみにしていたのだった……。




