#1 チヒロ
――ツキカゲ村のとある家
「チヒロー、起きろー」
「……ん」
向こうから聞こえてきた声に反応し、体を起こす一人の黒髪の少年。少年は、まだ少し眠たそうにしている。
「チヒロー?」
「起きてるよー……」
「朝飯出来てるぞー」
「はーい……」
そう言って洗面所へと向かった少年……『チヒロ』は洗顔と歯磨きを終えて部屋に戻ると、制服に着替える。そして着替えた後、居間の方へと向かった。
「おはよーさん……」
「おう、朝食出来てるぞ」
居間には一人の男が新聞を読んでいた。名前は『カズナリ』。このツキカゲ村の村長をしている。少し長めの銀髪、青い瞳、そして……頭の上にピンと立っている猫耳と銀色の長い尻尾がある。そう、村長は『猫族』というツキカゲ村で一番多い種族だ。ちなみにチヒロは『人間族』という種族だ。『人間族』はこのツキカゲ村ではチヒロ1人だけである。
「今日から学校だったな?」
「うん」
「あれから1年たったのか……早いな……」
「うん、そうだね…」
「さっ早く食べろ、そろそろナオが迎えに来る頃じゃ……」
「チヒロー!」
村長が話している途中で、玄関から大きな声が聞こえる。
「おっ、噂をすれば」
「チヒロー?」
そこに、茶髪で童顔な『猫族』の少年が居間までやってきた。
「あれ、まだ食べてるの?」
「相変わらず早いな、ナオ……」
そんなチヒロの言葉に苦笑をする少年、ナオは学校の日は毎日家までチヒロを迎えに来ていた。
「はっはっはっ、ナオは相変わらず元気だな」
「村長、おはよー」
「ごちそうさま」
「あっ、食べ終わった?早く学校行こうぜ!」
「はいはい、じゃあ村長行ってくる」
「おう、気を付けて行ってこい!」
「「はーい」」
そして二人は学校へと歩いていく。話をしながら歩いて10分、二人が通う『ツキカゲ中学校』へと着いた……。
――ツキカゲ中学校
チヒロとナオは今年から中学部2年生だ。チヒロとナオは一緒に2年生の教室へと向かった。そして2年生の教室に入ると3人の同級生たちがいた。
「あ、2人ともおはよう」
最初にあいさつをしたのは『兎族』の『ハルコ』。長めの茶髪にピンと立ったうさ耳がある、笑顔がとてもかわいい大人しそうな少女だ。
「おはよう!」
次にあいさつしたのは『猫族』の『レナ』。金髪でこちらもピンと立った猫耳がある、こちらの少女は元気いっぱいな印象がある。
「……zzz」
そして最後に『犬族』のトモ。黒髪でピンと立った犬耳がある。現在トモは、机で気持ちよさそうに寝ていた……。
「おはよー!はぁ~、間に合った~」
「マモル」
息を切らして教室に入ってきた少年は、『猫族』の『マモル』。どうやら彼は遅刻することが多いようだ。ともあれ中学部2年生はこの6人である。
「はい、皆おはよう」
「あ、先生」
教室に入ってきたのは2年生の担任であるサトル先生。ちなみに『犬族』だ。
「そろそろ始業式が始まるから校庭に集合しろー」
「「「「「はーい!」」」」」
「……zzz」
「おいトモ、起きろー」
「……ん?」
未だに寝ていたトモをチヒロが起こす。トモは眠たそうな目をこすり、ゆっくりと立ち上がる。
「チヒロー、早く行こう?」
「あぁ、ワリィ」
こうしてチヒロたちの新学期が始まろうとしていた……。