#25 あいつ
――空手道場
「よーっし、みんな集まってるかー?」
空手の先生のテツジがみんな集まっているか確認する。
「集まってまーす」とマモル。
「よし、じゃあバスに乗ってくれー」
テツジはそう言ってバスの運転席に座る。それに続いてチヒロたちもバスに乗りこむ。
……さて、チヒロたち向かっているのは『カツラギ村』というところだ。カツラギ村はツキカゲ村の隣にある村で、今日はその村の空手道場の生徒との合同練習をすることになった。この合同練習は月に1回行われている。
「チヒロー、今日も楽しみだね」
隣の席に座っているナオは楽しみなようだ。
「そうだな……」
「? どしたの?」
「合同練習は楽しいんだけど……あいつがな」
「あぁ~、あいつか……」
チヒロの言った「あいつ」にナオもどうやら察したようだ。そして、チヒロたちが話しているうちにカツラギ村の空手道場に着いた。
「「「「「「「よろしくお願いしまーす!」」」」」」」
「おう、来たな」
カツラギ村の空手道場で待っていた人は『狐族』の『リョウマ』。空手の先生だ。リョウマのほかに、既に生徒がいた。しかし……1人足りないことにチヒロは気づく。
「あの……あいつは?」
チヒロはリョウマに聞く。
「ん? あー、ワタルか……あいつは今日も遅刻……」
「よろしくお願いしまーす!!!」
リョウマが話している途中で、道場の入り口から大きな声が聞こえた。
「よかったー、セーフだった!」
「遅刻だ」
「えー? まだ始まってないじゃん!」
「集合時間はいつも言ってるだろ! それを超えたら遅刻なんだよ!」
そう注意された『猫族』の少年……「ワタル」は納得がいってない様子だったが。さほど気にしてない様子。チヒロとナオが言っていた『あいつ』とはワタルのことだった。
「えー、始める前に少し話があるから聞いてくれ まずは……」
リョウマが生徒に向けて話を始める。
「おい、チヒロ……」
ワタルがチヒロに小声で話しかける。チヒロも小声で話に参加するようだ。
「……なんだよ」
「俺との勝負の勝敗覚えてるか?」
「さぁ、どうだったかな……」
「俺の23勝27敗だ 一見俺が負けてるように見えるが……こうして数字にしてみると互角だということがわかるだろ? しかし俺はずっと互角のままで満足はしてるわけにはいかないと思うんだ、チヒロ……つまり俺が言いたいのは……」
相変わらず面倒くさいな……とチヒロは思った。チヒロとワタルは決して仲が悪いわけじゃなく、むしろチヒロは初めて会った時から明るく話しかけてくれたワタルのことが友達として好きだった。しかしこのめんどくさい発言に、チヒロはいつも苦笑していた。
その後、トウヤとチヒロは話を聞いてないのが見つかって注意された。何で自分まで……と、チヒロは納得がいかない様子だった。




