#20 村長の決意
――村長の家
エミリが着替えを終えて、居間へと戻ってくる。現在、居間には3人いる。朝から無表情を貫いて腕を組んでいる村長。寛いでいるエミリ。そして、そんな2人を見てドキドキしているチヒロ……。
「はぁ~疲れた、いつも思うけどバス降りてからここまで20分歩かないといけないから大変だよねー」
「……エミリ」
「ん?」
「えーと……母さんはどうしてる?」
「お母さん? いつも通り元気だよー、病気とかもないし」
「そ、そうか……」
村長はそう言うと再び黙り込む。村長のそんな反応にエミリは首を傾げる。
「あ、そうだ 言っておきたいことがあるんだけど……」
その言葉に村長とチヒロは心臓がドキッとする。
「実は……」
「待て!!!」と村長が手を前に出して声を上げる。その行動に、エミリはきょとんとする。村長は何かを決心したようで、静かに話し始める……。
「言いたいことはわかる……手紙を読んだからな」
「……うん」
「しかしな……ワシはまだ付き合っていたことすらも知らなかったからな……」
「え、何で?」
村長の話を聞いていたエミリが不思議そうな顔をしていた。
「私、ちゃんと報告してたと思うけど……」
「報告?」とチヒロ。
「うん、手紙で 夏休み終わった後から」
村長は頭に『?』マークが浮かんでいる状態だ。チヒロは少し考えた後、あることを思い出してエミリに問いかける。
「エミちゃん……最初に付き合ってる人がいるって手紙を出したのはいつ?」
「えーとね……10月かな」
エミリがそう言うと、村長は「えっ」と声を漏らす。
「そこから……月に1回は手紙出してたんだけど……え?まさか……」
そのまさかです……とチヒロは思った。
チヒロはエミリに昨日からのことを説明した。エミリはチヒロの話を聞き終わった後、深いため息をこぼした。
「何だー、やっぱ読んでなかったんだー……」
「やっぱ?」
「ある程度は予想してたんだよねー。お父さん、手紙読まないままの時が多いから」
チヒロは、別に早く言っても良かったなと思っていた。そして村長は……顔を俯いていた。
「まぁ、お父さん そういうことだから」
「待て!!!」
村長はさっきのように手を前に出し声を上げる。
「認めん! こうなったらワシは認めんぞ!」
「こうなったら?」
村長の宣言にチヒロとエミリはポカーンとした表情をしている。
「母さんは!? 母さんはなんて言ってるんだ!?」
「え?『オッケー』って言ってた」
あっさりと言うエミリに、村長はそれを聞くと手に額を当てる。
「あっ、そうか!」とエミちゃんは手の平を合わせる。
「お父さんも彼に会えばいいのか!」
「……は?」
再びあっさりと言うエミリに、村長は「何を言ってるんだ?」という顔をする。
「よし! じゃあ夏休みに連れてくる!」
「いや、そういうことじゃ……」
「楽しみにしててね……あっ、お母さんにちょっと電話してくるねー」
そう言ってエミリは居間から出る。村長を見ると、何とも言えない顔をしていた。
「……チヒロ」
「……何?」
「ワシ……これからちゃんと手紙を確認しようと思う……」
「……そう」
村長の決意に、チヒロはそう答えた。
……次回へ続く




