#19 不安
――村長の家
「……」
村長は、朝からずっと黙り込んでいた……。あの手紙を見てから、何かずっと考え込んでいるようだ。今日からエミリが来るが、ケンカにならないかチヒロは不安になっていた。
「あー……エミちゃんってもうすぐ来るよねー……」
「……」
「楽しみだなー……早く会いたいなー……」
「……」
村長はチヒロの方を見ようともしない……ホントに何を考えてるのか?チヒロにはわからなかった。
その後、村長は昼メシが終わっても朝と同じく黙り込んでいた。この重い空気が耐えられなくなったチヒロは……
「村長。俺、エミちゃん迎えに行くね」
「……」
「行ってきまーす……」
チヒロは早足で広場に向かった。
――ツキカゲ村の広場
チヒロは、エミちゃんが来るのを広場で待っていた。そしてチヒロは目を瞑って考えていた。エミリに村長のことを伝えようかを……。エミリは、村長があの手紙を読んでいるという前提で話をするだろう。どちらにしろ口論になりそうだが、やはり話した方がいいだろうか……
「あれー、もしかしてチヒロ?」
前から声がしたので、チヒロは瞑っていた目を開ける。そこにはスーツ姿の『狐族』の女性がいた。その女性は……エミリだった。
「エミちゃん!」
「久しぶりー! 迎えに来てくれたの?」
「あー、うん……」
チヒロは歯切れの悪い声で答える。
「どうしたの?」
チヒロは話すべきかどうか未だに迷っていた。そんなことをエミリは知らず……
「お父さんは? 家にいる?」
「え? あぁ、いるけど……」
「そっか、じゃあ早く家に行こう!」
「あ、いや エミちゃん、ちょっと……」
「チヒロも早く早く!」
そして、エミリはさっさと村長の家へと歩き出す。村長と同じくマイペースな人だなあの人は……とチヒロは思った。
――村長の家
「ただいまー!」
「ただいま……」
……返事はない。玄関で靴を脱ぎ、2人で居間の方へ行く。そして居間へ着くと……
「あ、お父さん ただいまー!」
「……あぁ」
村長は蚊の鳴くような声でそう言った。その顔はとても無表情だった。
「あ、そういえば私ずっとスーツだった。ちょっと着替えたいんだけど……」
「あぁ、じゃあ客間に案内するよ……」
そう言うとチヒロは客間へと案内する。果たしてこの後どうなるのか……チヒロは、とても不安になっていた……。
……次回へ続く




