#17 宝物の正体
チヒロたちは再び、洞窟の先へと俺たちは進む。すると歩き始めてから5分、先を見てみると……
「出口だ!」とナオが指を差す。
「やっとか……」
もう少しで出口に着くとわかり、チヒロは少しホッとする。
「ねぇ、宝物あるかなー?」
ケンイチがチヒロに聞く。ちなみにこれで3回目。それに対し「どうだろうなー」とチヒロ。これも3回目。その後も宝物があった場合に持ち帰れるのか、山分けはどうするかといった話をしていると……ついにチヒロたちは出口へと着いたのだった。
「「「「……」」」」
目の前にあったのは……草木が生い茂っていている以外、特にこれといった特徴がない場所だった。チヒロたちはとりあえず辺りを見渡したが先へ続く道は一本しかなく、それ以外は何もなかった。
「あれー?」
「宝物もなさそうだけど……」
ケンジとナオは困ったように言う。
「そうだなぁ、その先に道はあるが……宝はやっぱりないと思うけどな……」
「いや、あるぞ」
突然の声に4人は驚く。辺りを見渡すと端の方の木からのようだ。そして、その人物が木のうしろから出てくる。
「「「村長!?」」」
その人物の正体は村長だった。なぜ村長がここにいるのか……ケンイチたちは分かっていないようだ。しかし、チヒロだけは納得したような表情だった。
「なんで村長がここに!?」とケンイチはまだ驚いている。
「聞かれてたんだよ……俺たちの会話は」とチヒロは説明をする。
「「えーっ!!!」」
ケンイチとケンジはさらに驚く。
「はっはっはっ……ワシは地獄耳だからな」
「すっかり忘れてた……」
「ところで村長、宝物はあるって……?」
ナオは村長に質問する。
「さっき言った通りあるぞ、それじゃあ宝物の正体をお前たちに見せてやろう……ついてこい!」
そう言うと村長が先頭になって、一本しかない道を歩き出す。チヒロたちもその後をついて行く。
「そろそろ着くが……ちょっとお前ら、目をつぶっていろ」
一本道を歩き始めてから村長がそう言ったので、4人はそれに従う。4人は並列になり、村長は後ろに回って再び歩き始める。
「はい、止まれ!」
「着いたの?」とチヒロが確認する。
「あぁ、それじゃあ……見ていいぞ!これが宝物だ!」
村長が言ったのと同時に、4人はつぶっていた目を開けた。
そこには……辺り一面に黄色い花……『菜の花』が咲いていた。ここは菜の花畑のようだった。
「わぁ……」
「すげぇ……」
ケンイチとケンジは辺り一面に咲く菜の花を見て、驚いている様子だ。
「これはな、ワシの母さんが植えたのだ」
「お母さんが……?」
「あぁ、母さんは花が好きでな。特にこの菜の花が……」
村長は当時のことを話し始めた。4人はその話を静かに聞く……。
村長のお母さんは当時、何もなかったこの場所に菜の花を植えようと、先代の村長に提案したとのこと。先代の村長は快く承諾してくれたようだ。そこから村長のお母さんだけでなく、村長のお父さんと友達も協力して、こうして菜の花畑が完成したようだ。
「ワシも初めて見たときは驚いた、そして、母さんはこう言っていた……」
「(今日からこの菜の花がこのツキカゲ村の宝物になれば、母さんはとても嬉しいわ)」
「……とな」
そう言って村長はチヒロたちを見て、笑った。
「でもさ、わかりづらくない?」
ナオの疑問は、チヒロも思っていた。
「看板とか作れば?」
「そういえば、壊れた時に作り直すのを忘れてた……」と、村長は苦笑した。
ちなみに洞窟に書いてあった『花がいっぱい』、『花はたから』という文字は、村長とその友達が遊んでいるときに書いたものだった。
「さてお前ら、腹減っただろ? 団子屋へ行くか?」
「マジで!?」
「やったー!」
「早速行こう!」とナオたちが嬉しそうに走り出す。
「ワシたちも行くか」
「うん」
2人も菜の花畑を後にして、団子屋へと向かう。その後、看板を立てたところ、この菜の花畑に訪れる人が増えたという……。