＃14 似顔絵
――とある家
チヒロは現在……フミヤの部屋にいた。皆さんはフミヤは覚えているだろうか。空手の稽古を一緒にやっているあの『狐族』のフミヤのことを。なぜチヒロはフミヤの家にいるのかというと……。
「すいません、用意ができました」
フミヤがかばんを持って部屋に入ってきた。
「えーと……俺はどうすれば」
「普通でいいですよ」
「ふつう？」
「イスに座って、じっとしてもらえれば」
「はいはい」
そう言ってチヒロは、前にあったイスに座る。
「じゃあ、始めまーす」
「はいよー」
……イスに座ってじっとしてから30分。フミヤは時々チヒロを見ながら鉛筆を動かしている。さて、フミヤは何をやっているのかというと、フミヤは絵を描いていた。そして、描いているのはチヒロの似顔絵だ。ことの成り行きは昨日のこと。空手の稽古が終わった後にフミヤが似顔絵のモデルになってもらえないかと言ってきたのだ。美術の授業で、誰か1人の似顔絵を描いてくるという宿題を出されたらしい。それに対しチヒロは快く承諾した。
「……フミヤー、話してもいい？」
30分ずっと静かにしていたチヒロだが静かすぎるのもどうかと思ったのか、話をしようとチヒロはフミヤにお願いをする。
「いいですよ」とフミヤは承諾する。
「なんで俺をモデルに？」
「かっこいいからです」
「マジで？」
「……」
「……ですよね」
「……すいません」
冗談から始まった会話はその後も続き、さらに30分後。
「……うん、これでいいかな」
フミヤが鉛筆を置いて自分の描いた絵を眺める。どうやらいい作品が出来たようだ。
「見せてちょーだい」
「はいどうぞ」
フミヤが描いた絵をチヒロに渡す。その似顔絵は、髪の毛や顔のパーツも細かく描かれている。
「やっぱ凄いなお前……絵が上手いのは知っていたが……」
そう、フミヤは絵が上手い、どれくらいかというと……去年、学園内で絵のコンクールの代表に選ばれ見事に金賞をとったほどだ。そして本人によると一昨年、その前も金賞をとり、3年連続金賞を継続中とのことだ。
「チヒロさん、今日はありがとうございました」
「あぁ、またモデルやってほしい時は言ってくれよ」と俺は冗談でいったつもりだったんだが……
「はい、チヒロさんカッコいいので、また頼もうと思います」
「マジで？」
「……」
「……ですよね」
「……すいません」
フミヤは意外と意地悪、新たな発見だな……とチヒロは思った。
