#11 救世主
――ツキカゲ中学校・2年生の教室
「「「…………」」」
ナオ、マモル、レナの3人は顔をうつむいていた。チヒロはどうしたのかと3人に聞いてみることにした。そして、ナオとレナが説明する。
「今週末のテストのことで先生に呼び出されたんだけど……」
「次のテストで、30点以下が1つでもあったら補習だって……」
どうやらその補習の期間は1週間とのこと。それで3人は落ち込んでいたのだ。
「どうしよう……」とナオは頭を抱える。
「どうするも何も……勉強するしかないと思うが……」
チヒロの言うことは正論だ。
「でも勉強ってどうすれば……」とマモルも頭を抱える。
「……あの人に頼めば大丈夫」
突然のトモの言葉に全員が振り返る。
「あの人?」とハルコ。
「来て……」
チヒロたちはトモの後についていく。ついた場所は……図書室だった。
「今日は多分いると思う……」
トモの言葉に全員が首をかしげる。
「……いた」
トモは向こうの方に指を差す。そこには、机の一番端で寝ている「狐族」の若い男がいた。
「……ユウキ」
「……ん?」
トモが寝ている『ユウキ』を起こそうと肩を揺する。ユウキはそれに反応し身体を起こす。
「んーっ……あら?なんかいっぱい人が……」
「ユウキ……」
「おう、トモか」
「えーと……トモ、この人は……?」
ナオはトモに問いかける。
「……ユウキ」
「はーい、俺はユウキです。この図書室で先生をやってます」
目を覚ましたユウキは全員に自己紹介をする。
「へー、俺初めて見たー」とナオが言うと「私も」とハルコもそれに同意する。
「まぁ、いつも図書室にくる生徒はトモくらいだからねー……」
ユウキはそう言って苦笑する。
「えーと、それで用事は?」
「……テスト」
「あー、なるほどな?」
ユウキはそれだけで分かったようだ。
「全員か?」
ユウキの問いかけにトモは頷く。
「えーと、じゃあ受講者はここにいる6人で……それじゃあそれぞれ苦手な科目を言って」
こうして6人はそれぞれの苦手科目をユウキに伝える。
「……なるほど、特にこの3人はひどいな」
『この3人』とは、ナオ、マモル、レナのことだ。
「しっかり勉強はしてんのか?」
「やってるつもりなんだけど……」とナオ。
ユウキは少し考えると、なにやら思いついたようだ。
「よし、早速ここでテスト勉強を行う! 期間は今日から今週末のテスト前日まで!」
「えー今日から?」とマモルがため息まじりに言う。
「ん?じゃあ補習やりたいのか?」
「や、やりたくない……」
「なら、しっかり勉強をしないとな!さあ、用意はいいか?」
こうして、ユウキによるテスト勉強が始まった……。そして、チヒロとハルコは、そういえばいつの間に自分たちも……と思ったのは勉強初日の夜のことである。
……次回に続く