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第三話 微妙な変化

今日は、何だかいつもの何倍も楽しくないような気がする。

きっと、私は純白に弱いんだなと思う。

堂月さんは、夜に降る雪が一番好きだと、一昨日のクリスマスイブに言っていた。

『天使の羽が一枚一枚舞い下りてきて、幸せを分けてくれているんじゃないかと思うと、言葉では言い表せないような気持ちになるんだ』

(堂月さんは、ロマンチストなんだな・・・)

そんなことを思って、私は、少し心が和んだ。


『後で開けてみます』

そう言ったのに、ついに今日まで開けられなかった堂月さんからのプレゼントが、机の引き出しに収まっている。

今日こそこの包みを開ける・・・。そう、決めていた。

私は、新しいものを新しいものでなくするのは、とても惜しいことと考えている。

何だか、眩い光を放っているとても綺麗なものが、ごろごろと大量にそこら中に散らばってしまうような感じがするのだ。新鮮味が無くなるというのは、ある意味で私をガッカリさせる。

けれど、中身を見たい・・・。

その一心で、私は私の中にある理屈を捨てた。

一気に開け進めた箱の中のものは、光と同じくらいの速さで私の心を攫っていってしまった。

それは、所々に色硝子が散りばめられた、小さな小さな葉っぱを象った銀の曲線が美しいネックレスだった。

この『新しいもの』は、私にガッカリも、惜しいと思う気持ちさえ、微塵も与えなかった。

私は鏡の前に行き、着けてみた。とても軽くて、でも、着けている重みというか、着けていることを実感させてくれる。私を、安心させてくれる。

私がしばらく見ていると、加東さんがノックをして入ってきた。

私は慌てて、着物の内側にネックレスをコソリとしまいこんだ。

「お茶の時間ですよ」

彼女は気が付かなかったようだ。私はほっと安堵の息を吐いた。

しかし部屋を去ろうとしている彼女の背中を見て、ふっと意識が薄れた。

「堂月さんのお部屋って、どこにあるんですか?」

そして、私は彼女を、無意識のうちに呼び止めてしまっていた。

加東さんが静かに止り、こちらにゆっくり振り向いた。

加東さん=少し(又はかなり)怖い

この法則が、頭の中にできた。特に、暗いところでゆっくり振り返られると、顔が無いんじゃないかとか、いろいろと恐ろしいことを考えてしまう。

「西棟の二階、階段を上ったすぐ右横です」

しかし加東さんはいつものように妖しく微笑んだり、意味深に囁いたりすることはなかった。

私は少し驚いたが、お礼を言った。彼女は、何も言わなかった。


「はい、どうぞ」

当然のことなのに、ドアの向こうから彼の声が聞こえてくると、ドキッとした。

ときめきでないことは、無論。確かに緊張のせいだ。私はドアノブ手をかけた。

「あれ?どうしたの?」

彼の部屋にお邪魔して最初に目に入ったのは、机に向かっている彼の後ろ姿だった。頭だけを動かして私を見た堂月さんは、目を丸くしていた。

彼の眼と自分の目が重なって、緊張で死んでしまうのではないかと思った。

「あの・・・これ・・・」

私は、さっきしまったあのネックレスを慎重に取り出した。

堂月さんはそれを見て、「あっ」と目を輝かせた。

「着けてくれたんだ。良かった」

彼は本当に嬉しそうに微笑んだ。

私は着物の上から腕を擦った。緊張するとついしてしまう、小さな頃からのクセだ。

「あ、あの、ありがとうございます。こんなに素敵なものをくださって」

身体後とこちらを向いた彼に、私はここに来る間中ずっと練習した言葉を言った。

その時、ふっと彼の表情が翳った気がした。私はそれを見逃さなかった。

「どういたしまして」

しかし、彼はすぐにいつもの優しい顔に戻った。私は不安な気持ちに、心を支配された。

(どうしてあんな顔をしたんだろう。私の言い方がいけなかったのかな。普通に言ったつもりだったけれど・・・)

私は部屋を後にしようと思ったが、彼に伝えようと思っていたことを思い出した。小さく空気を吸った。

「堂月さん、もう加東さんからお聞きになったと思いますが、お茶の時間です・・・よ」

私が振り返ると、彼は私のすぐ側にいた。私は思わず彼を仰ぎ見た。彼が爽やかに微笑む。

「今初めて聞きました」

彼の大きな手が、私の肩に乗った。私の心臓が、跳ね上がった。

(これも緊・・・張・・・・・なのだろうか?)

「さ、行きますか」

彼に促され、私の体は硬直したまま歩き出した。

しばらくして彼が手を放した後も、肩に彼の温みが残っていた。

私は彼が横を歩いていることに、どうしようもない、緊張とは違う心地を感じた。

彼の存在が、私の中で際立った。

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