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転生したらサイボーグになってた俺がゾンビだらけの世界で無双する  作者: ティ・ンポッポ
第一章 転生した世界はゾンビだらけ
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6話 空に浮かぶ2つの輝き

 焚き火がパチパチと音を立てる。

 学園の生徒がまずはじめに覚えさせられる指先大の炎を出す魔法。

 それでユイに出してもらった。


 いまは深夜で、ユイたちは眠っている。

 見張りをしているが、眠気が来ない。


 サイボーグだからか? 妙な気分だ。

 食欲も失せている。というか、別段とらなくてもいいが、食べると人間らしさが保たれるから食べる、みたいな……。

 消化も汗をかくこともないし、この体、慣れない。


「……見張りもういい、私が変わる」


「起きてたのか」


 鉄柵の通り口から現れたのはキャロット。


「たまたま、よ」


 車イスの手押しハンドルをこぎながら、やってくる。

 二人分くらい距離をとって止めた。

 たまたま、か。

 ここ一時間くらい、俺の背後に近づこうとするけど近づけないでいる一人の金髪で車イスに乗っている女の子の気配を激しく感じていたのだが。触れないでおく。


「今ここに誰かが逃げてきたら、匿うつもり?」


「そのつもりだ。もちろん、さっきの連中のような奪う連中ならば、話は別になるけど」


「肝が据わってるのね」


「そうでもない。正直戦うたびにハラハラしてる」


「ふーん。……ねえ」

 

 キャロットが車椅子ごとこちらに向きを直す。

 見れば、しおらしい様子である。これまでの彼女からは想像できない。


「私、あんたのこと少し誤解してた。あやまる」


「そうなのか?」


「はじめは、あいつらと同じような連中かと……。

 ユイをたぶらかすような」


「今は、違う……そう思っている?」


「まだ完全に信じたわけじゃない!」

 

 ムキになって否定する。こわい。

 だが、ハッとしてから「コホン」と息をついて。

 とても言いづらそうに、ムスッとした様子で続ける。


「でも、今回のことで少しだけ、わかった。

 私にとってユイが大切なように、あなたにとってもユイが大切なんだって」


「一つ違うぞ」


「へ……?」


「キャロットのことも同じくらい大切だ」


「は、はぁっ!?」


 世迷い言をいう阿呆を見るような目。

 熟したトマトよろしく真っ赤に染まる顔。

 キリキリキリ! と車イスを反対方向へまわし、俺から離れるキャロット。振り返ってもまだ、顔が赤くなっている。


「わ、私は、あんたのこと、死ぬほどどうでもいい!」


「だとしても気にしない。

 それにキミ、ユイのこと見捨てたやつに本気で怒ってたろ?」


「そ、それがなに!」


「友達想いだよな」


「は、はぁっっ!!?」


「いいやつだよ。善人だ。だから、守りたいんだ」


「……あんただってお人好し……」


 もごもご何か言っていたが、耳に入らなかった。


「とにかく、そういうことだから。これからよろしく」


 握手を求める。


 すると、しばらく逡巡してから応えてくれた。


「……努力する。ユイが大切に想うあんただから、いい? 特別、なんだから」


「了解」


 キャロットがハンドルをまわして戻ってくる。


 戻ってくるなり、人差し指を突き出す。 


「いい? ユイは人形みたいに美しくて、清楚な、もうそれは人形みたいな子なの。

 

「もっともだ。守りたくなる」


「わかってるでしょうね。あ、あんなことや、そ、そんな、こと……したら」


 想像してしまったらしい。うつむいてはわわわと口を開けている。

 取り繕うように凛として、顔を上げる。


「ただじゃおかないから。……二度と日の目を歩けない顔にしてやるから」


「……だいじょうぶ、絶対しないから」


 どんなことをされるんだ。


 パチチっ。焚き火が音を立てる。


「休んでて。私が見張るから」


「んー。眠くないんだよなあ」


「見栄?」


「いや、眠気がこないんだよ。この体」


「……」


 ぽかんとするキャロット。やがて、くすっと笑う。


「何それ、わけわかんないっ。ホント変なやつね、あんたって」


「自分でもそう思う」


「じゃ、このままそこにいても構わないけど? 特別に許可してあげる。

 あんたの好きにしなさい」


「……」


「なんとか言いなさいよっ!」


「好きにしろというから、黙っていた」


「……」


 つーんとして無視を決めこむキャロット。

 ツッコミ無用か。


「……あ、流れ星」


「あれか」


 空には輝く星々。三つの流れ星が現れ、消える。


「きれー……」


 惚れぼれ、目を奪われているキャロット。

 

「この世界にもあるんだな」


「あんた、ホントに何なの?」


 訝しげな目を向けてくる。そりゃそうか。


「昨日こっちにやってきた、地球人だよ」


「ちきゅう?」


「こことはたぶん、違う星のことだよ」


 空に浮かび、ひときわ輝く星を見る。


 血のように赤い輝きを放つ三日月と、白く煌々と光っている三日月。

 左右対称の二つの三日月が教えていた。

 ここが異世界であることを。

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