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転生したらサイボーグになってた俺がゾンビだらけの世界で無双する  作者: ティ・ンポッポ
第一章 転生した世界はゾンビだらけ
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5話 夜襲されたので蹴散らした

「ユイたちはここに隠れているんだ!」


「で、でも……」


「心配ない、ここで待っていて!」


 扉を開けて、すぐに閉める。


「ひ、ひいいいいぃぃ!」


 鉄柵の入口を抜けると、太った巨漢が腰を抜かしている。

 視界を埋めるのは、大量のバイター。不安定な足取りで歩きながら、不気味な声を漏らしている。


「一体なにがあった!?」


「だれだおまえ?」


 キレやすそうなロンゲのチャラい男が尋ねる。


「後回しだ。

 戦えるなら手伝え。そのナイフで」


 ロンゲの手にはナイフが握られている。


「くっ、やるしかねえ!l


 ロンゲはバイターの群れに突っ込んでいく。


「お、おれがしくじったばっかりに……」


 痩せているメガネ男がしょげている。


「てめえら、援護しろ!」


 リーダーだろうか。サングラスの刈り上げがバイターの頭にナイフを抜き差ししながら吠えている。

 戦いに慣れているようだ。


 弱気だった太った男とメガネ、ロンゲが加勢し、バイターに立ち向かっていく。

 だがうまくいかないらしい。太った男が押し倒されている。

 助けねば。

 こいつらがユイを見捨てたやつらだというのは明らかだが、命は守る。


「覇ァ!」

 

 今にも食らいつきそうなバイターの首を蹴り飛ばす。


「あ、ありが……」


「礼は結構だ、それより、少しでも倒してくれ!」



 一体、また一体と倒していくが、なかなか数が減らない。


 とそのとき、すぐそばにいたバイターの肩が爆発した。


 かのように見えた。だがバイターは無傷。まるで効いていない。


「ポッターてめぇ! ナイフはあるだろ、ナイフで戦えやァ!」


 サングラスの刈り上げが、メガネを呼ぶ。


 メガネが指を鳴らすポーズをとっている。あれが発動のきっかけらしい。


 どうやら先ほどの爆発はメガネ、ポッターのせいらしい。


「こ、今度こそあいつらにおれの魔法が効くことを証明したいんだ。

 だ、だけどダメだった」


「魔法効かねえっつってんだろ!?」


 言いながらバイターの頭蓋をナイフで突き刺すグラサン。

 

 ポッターというメガネは、依然として魔法を使っている。

 だがまともにダメージがあるとは思えなかった。ポッターに迫るゾンビ。


「で、でも、諦めない。きっとおれの力が足りないから……。

 こ、こんどこそ効くはず!」


「お、おい待て。ムダだっていうのがわからないのか!

 武器で戦うしかないんだよ!」


 急いで近くのバイターを倒さねば。あのポッターという男は、死ぬ!

 

「うあああああああああああああ!!」


 連続で爆発が起こる。だが、無駄。

 やがて魔力切れを起こしたのか、ポッターが指を鳴らしても爆発は起こらなくなった。


「アア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛」

「ひぃぃぃぃいいいいいっ!!!!!!」


「ちくしょうバカが!」グラサンが吠える。

 太った男に残りを任せ、グラサンは彼の元まで駆け寄っていく。

 悪い集団のようだが、情はあるようだ。

 

「うわああぁっっ!」

 声がする。太った男が、足元を掴まれて転ばされている。

 助けねば。メガネはグラサンに任せよう。

 太った男の脚を掴んでいるバイターの頭を踏み潰し、背後に殺気を感じて回し蹴りを決める。バイターの首がちぎれ、飛んでいく。


 太った男は目の前で起こったことに、理解が追いつかないようだ。

 

 俺のことを見上げている彼は、化物でも見るかのようだった。

 ムリもない。この戦闘力は、自分でも恐ろしいと思う。もしも人間に向けられたら、どうなることか。

 あ、なんか怖くなってきた。これ、やばい力なんじゃ……。

 そう思っている時だった。

 

「あばよ! このクソメガネ!」


 グラサンが苛立ちながら、しかし愉快そうに言う。

、ポッターの死体にナイフを執拗に刺している。


「噛まれやがって! 感染っちまったら、こうするしかねえじゃねえか! なあ!?!」


 感染。やはり、噛まれるとアウトか。

 メガネの男、ポッターの助けは間に合わなかったらしい。

 刺し殺すのを楽しんでいる様子を見るに、”意図的”かもしれないが……。

 瞬間。命を奪おうとする冷たい気配を、背後から感じた。

 回避に移ると同時、

「あぶない!」


 というキャロットの声がした。


「!?」

 

 半身を横にして、回避する。

 ロンゲが、後ろからバールのようなもので襲ってきたのだ。


「くそっ!」


 バランスを失ったロンゲはふらついている。

 その隙に、殺さない程度に力をセーブして腹部に膝を蹴り入れた。


「ぐがはっ!?」


 骨の折れる音がした。加減を間違えたようだ。

 彼が吹き飛んだあたりに、バイターの頭蓋に刺さったナイフがあった。あれが刺さって抜けなかったからナイフで仕掛けなかったのか。


「あー、すまねえなこいつが失礼なことしてよ」


 グラサンが歓迎するように手のひらを広げ、歩いてくる。


「悪ィな。警戒してんだよ」


「それはわかる。こちらもだ」


「ハハッ。だよな」


 グラサンは俺の横を通りすぎ、ロンゲの足元までやってきた。 


「で、だ。兄ちゃんつええからよ、仲間になる気はねえか」


 気さくに、今日の昼を相談するような軽さで聞いてくる。

 手に持ったナイフでロンゲの頸動脈を切りつけながら。

 ロンゲは血しぶきを吹きながら、言い表せない悲鳴を上げて死んだ。


「……断る」


「ハハッ。だよな。…………あ?」


「俺はユイたちの味方だ。そして、味方を不必要に傷めつけて殺すようなやつの敵でもある」


「あー……。そうなん」


 つまらなそうにしているグラサン。

 雰囲気がチャラついたものから、とたんに殺気を纏ったものになる。


「なら、死ぬか? あのクソメガネみたいに」


「やれるならやれ。だがその前に一つ聞かせろ」


 言うより先に、グラサンが背後にまわる。

 首元にナイフをかけられた。常人であればもうこれで言うことに従うはずだ。

 正直いって俺も怖かった。だが、もはやこの身体は人間のものではない。

 ”サイボーグ”なのだ。だから……。

 脅しには屈しない、鋼の心を持たなければならない!

 勇気を振りしぼり、いかにも平然としているように装う。


「てめぇ、本当は小便ちびりそうなくらいびびってんだろ? 今ならまだ許してやる。仲間に――」


「一つ聞かせろ、と言っている」


「……んだよ」


 流れはこちらにある。そう、そのはずだ。

 うろたえない。俺はユイたちを守れるような強い男になる。

 外に出てきているユイとキャロットに目をやる。

 両手を口にあてているユイ。すぐにでも飛び出してきそうなキャロット。

 彼女たちは、俺を見ている。いざというときも、俺に任せろと伝えてある。目を見て、それを改めて訴える。

 守ると決めた。約束は果たす。

 決めたから。


 瞬時にナイフを掴む。裏拳を腹へ叩きこむ。


「お゛ぅッ!?」


 肋骨の折れる音。胃液を吐き出すグラサン。加減を間違えたようだ。


「教えろ。ユイを、なぜ見捨てた」


「へ、はっ……んなもん決まってんだろ。あいつ見捨てりゃ食料が浮く。

 テキトーに助けらんねえっていえばバカ正直に信じるやつだ。

 あっさり始末できそうだったのによ」


「待て。じゃあわざとだったってことか?」


「おい、おぃ兄ちゃんょ……気づいてなかったなら、クソバカだぜ」


 もうひとりのほうは、ナマいってるしよ……戻ったらどうにかして始末しようって考えてたとこだ」


 なんてやつらだ。


「ったくついてねぇ。今日着いてすぐこれだ。こんなことならあのメスども大人にして泣かせちまえば良かっ――」


 怒りを通り越して呆れるを通り越して拳が動いていた。


「がバァァァァあああっっっ!」


 全身を複雑骨折するレベルに殴りつけ、蹴り倒した。加減を間違えたようだ。


「これに懲りたらもう二度と――」


「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛゛」


「!?」


 太った男が肩めがけてかぶりついてきた。

「こいつ、感染っていたのか!」

 かわし、反撃をしようとして――

 

「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛」


「ぎぃやああぁぁぁああああぁあぁぁああ!!!!!!!」


 太った男がグラサンの首に歯を立てていた。


 こうなっては、もうおしまいだ。


「悪い」


 二人の、いや、二匹を潰さねば。


「脳味噌一つ残らず潰す」


 



 避難所へ戻ってからわかったことだが、食料は残っていた。

 それも四五人で当分生活するのに困らないくらいには。

 倉庫を丹念に探したところ、思わぬ死角に隠し部屋があったのだ。

 どうもグラサンたちはそれを発見していたらしい。

 自分たちのものであると示すために、サインのようなものが書かれているものがあった。

 ユイとキャロットを始末してから、ここでのんびりと過ごすつもりだったのだろう。


「何はともあれ、一件落着か」


「さすがはユート様ですっ! 尊敬いたしますっ!」


 喜びを全身で表現するみたいにぴょんぴょんはねるユイ。かわゆい。

 しっぽもふりふり上機嫌だ。


「……まぁ、何かあるんじゃないかとはおもってたけど」


 意地を張るなあ。不満そうにしっぽをふるキャロット。


「なにか食べてから、また今後について話しあおう」


「はいっ!」「……そうね(ぐー」


 静かに夜は更けていく。

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