1日目-6-
『ツゥルルルル』
「あっ、江藤? 俺、俺だ俺」
電話から小声で返答がかえって来る。
「タイミングの悪い奴め、どうした親友」
江藤は取り込み中らしく、小声で俺の相談にのってくれる。
「あー、そりゃ神隠しの一種だな。残念だが一度被害にあったら人の力ではどうしようも出来ないよ」
「そうなのか……」
「すまん、ちょっと取り込み中なんだ。ごめんな」
忙しいのか、そう言葉を残して通話は途切れた。
「あの……」
不安そうな表情をみせる燈には悪いが、俺は親友の言葉を伝えることにする。
「不思議な事に詳しい奴に確認してみた。どうやらお前は神隠しにあってるみたいだ」
「神隠し……?」
「うん。そしてこうも言ってた。人では解決出来ない問題だと……」
俺が告げると、ギュッと手を握る力が増すのを感じた。
「私どうしたら……」
不安がる燈を横目に、俺はふと考え込む。親友は俺が困っていた時どうしてくれたか? 俺は、この少女に対して少しは力になれるんではないだろうか。
「良ければ来る、か……」
「えっ?」
「俺にはお前を助けてやる力はない、けど一緒にいてやるくらいなら出来るぞ」
俺の言葉を聞いた燈は、うん、うんと涙を流しながら何度も頷くのだった。
「さっ、行くぞ」
俺達はファミレスを後にし、電車へと再び乗る。そして。
「ほら、乗った乗った」
俺達は大きな駅につくと、今度は新幹線のホームへと辿り着く。そのまま新幹線に乗り込む俺に燈も続く。
「あ、あのあの、私初めてで……」
キョロキョロと周りを物珍しそうにする燈を引っ張り、俺は予約していた席へと辿り着く。
「あー……」
二人掛けの席の窓側をとっていたのだが、手前には既に他の客が座っているのである。しかし俺達は二人、座席は一つ。
『立ちっぱなし、という訳にもいかないしさて……』
手を離してみようとそっと力を抜いてみるも、それを察知してかギュッと強く握りしめる燈。そして俺の顔を不安そうにのぞき込む。
「あの、ごめんなさい……」
「いや、いいって」
俺が声を出したのに気が付いた手前に座ってた若い男性は、窓側の席の予約者だと気が付いたのか立ち上がりどうぞ、と道をあけてくれる。
『しょうがない』
「行くぞ」
俺は燈にだけ聞こえるように小声で窓側の席へと連れやる、そして。
「あー、すまんな」
「その、その。私こそごめんなさい」
俺の膝の上にちょこんと座る燈との旅が始まったのであった。