1日目-2-
2015年2月20日:文章手直し
2022年5月29日:推敲
===>>>燈SIDE===>>>
『ガタンガタンガタン』
電車の通過する音。
朧げになっていた私の意識が否応なしに呼び起される。
覚醒。
なんで電車の音がするの?
背中も痛い。
そういえば……。
私、泣きつかれてこの場所でそのまま眠ったんだ。
私。
私の名前。
私は会川 燈。
覚えている。私は私を知っている。
中学1年生の12歳。
ちょっと身長が低いけど、親友と一緒に陸上部に所属していて、昨日も朝練に……。
そこまで脳裏に思い浮かべたところで昨日の出来事が鮮明に脳裏に浮かび上がった。
同時に私の心をキュッと何かに鷲掴みにされたように痛んだ。
服装は昨日の朝からずっとセーラー制のままだ。
お気に入りの紺色のセーラー服を身にまとい、首元に赤いリボンをつけて家を出た。
そのまま家に帰ることもできず、今は駅のホームで野宿だなんて。
生まれて初めての経験は、とても寂しいものとなった。
体をベンチに預けたまま、私はこの先どうしたらいいんだろうと虚ろな瞳で世界を眺めた。
すると、いつからホームに居たのかわからないけど、向かい側のホームからジッと「私」をみつめる視線を感じた。
『視られて、る?』
私は体をババッと起こすと、ジィィと視線を送り返してみる。
『ジー』(私の熱い熱い視線を送ってみる)
視線を送り続けること数秒。
『……ぷい』
『!?』
明らかな反応。私が昨日から求め続けたリアクション!
『間違いない! あの人は!?』
私は確信した、この『何もない場所を凝視して』、そしてこのタイミングで目線を反らしたのだ、間違いなくあの人は私を認識している。
確信したと同時に私は跳ね起きると、足元に置いていた部活バックを手に駆け出す。
『ガタンガタンガタン』
再び電車が通過するとほぼ同時に階段を駆け上り、そしてあの人の元へと。
『私を視て……ッッ』
そう、切なる想いを抱き駆け続けた。