青ざめる男と気まぐれとカタカナ男
「うん。やっぱりコイツ助けよう。」
「心変わりが早いネ」
「だってさー、結局コイツ助けちゃったし、なんか縁が有るんだよ。」
革製のバックパックをゴソゴソとまさぐり、ガラス瓶に入っているショッキングピンクのポーションを取り出す。
キュポンッとコルクの蓋を開けて、ダバダバと男にふりかける。
「そんな適当なやり方でちゃんと効くのかネ」
「効くって、多分。」
ポーションの威力は絶大でみるみる瀕死の重症が回復していく。
「ありがてぇ」
「おうおう、感謝しろよ」
「メチャクチャ上から目線ネ」
流石に全快というわけではなさそうだが、それでもかなり回復した様子の男が言う。
「助けてくれてくれて有り難う。俺の名前はヘルマン・バークラー。弓使いだ。
気軽にヘルマンと呼んでくれ」
そう言いながらよっこらしょ、と立ち上がる。
「却下。てめぇの渾名は《瀕死、ヘルマンルンルン・バークラー》略してヒヘルンに決定したから。
私の名前は柊、一応剣士。名前は普通に呼んで」
「ヒヘルンよろしくネ、ワタシの名前はアリサフォスター・リングスペルネ。魔法使いネ。
いっつも勘違いされるんだけどリングスペルネじゃなくてリングスペル、なんだネ」
「お、おうっ。その渾名は別にいいんだが、
仲間を弔ってもいいか?」
ヘルマンは陽気な笑顔を一瞬で悲しそうに変化させるとそう尋ねた。
「いいんじゃない、別に。
私達はハイエナでも盗賊でもないんだから、死体漁りなんてしない」
ウンウンとアリサフォスターが頷きながら言う。
「仲間を弔うのは当然ネ、ワタシも手伝うネ」
「ちょっアリサ、私達まだ素材の入手できてないんだけど!」
キッとアリサフォスターはヒイラギを睨むと
「最低ネ、弔いくらい手伝うのが普通ネ、期限はまだ三日もあるんだから一日くらい無駄にしても平気ネ、ヒドーもいい加減にするネ」
うんざりした表情でヒイラギが両手を挙げる。
「ヘイヘイ、わーかりましたよーっと。なんでこういう時だけ怒るのかねぇ」
スコップ代わりに、ゴブリンの持っていた錆びた剣で穴を掘る。
ヒイラギはものすごいスピードで一メートル位の穴を掘るとヘルマンに言う。
「ここに全部いれちゃう?」
ボカリッ
「痛ったぁ」
ヒイラギの後ろには木製の杖を構えたアリサフォスターが仁王立ちしている。
「あーもうっ、デリカシー、デリカシーがないネッ
仲間も魔獣も纏めて穴にポイッ?いい加減にするネッ
ゴブリンでも穴に放り込んでるネッ」
ヒイラギはしょんぼりと肩を落とし、
「アーア、カナシーナー?」
棒読みで言った。しかも疑問形。
アリサフォスターは杖を振り上げた状態でフルフルと震えている。
ヘルマンは顔を青くしながら穴を掘っている。
ヒイラギはなに食わぬ顔でゴブリンとウルフザーコを穴に放り込んでいる。
(カオスだ...)
ヘルマンはそう思った。
仲間を失ったのは悲しい。装備だって壊れてしまった。これからどうやって生活していくのか。
アリサフォスター、今は杖を構えた状態でフルフル震えている。揺れる水色の長い髪は涼しげだ。行き着けの料亭の店員がキャアキャア言いそうな美形。男なのに語尾がカタカナ、しかも似合ってる。ヘルマンは何故かその時爆発しろ、と思った。
ヒイラギ、両手を血塗れにしながらゴブリンどもを穴に放り込んでる。黒髪のショートカットの異民族風の少女。可愛らしい顔なのに、なぜか貴族のように偉そうだ。
恐ろしいほど速い剣速は脅威を感じる、
この二人は強そうだ。
ただちょっと性格に難アリだな。
(コイツらについて行こうか、ギルドで仲間を探すか...)
ヘルマンは考察する。
オモローでしょうか?