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遊人倶楽部  作者: ヨコワケデュガリー
活動記録02 遊び人たち
5/28

漫画家

貞治の遊人倶楽部入部から三日が経った。

入部を決めたあの日以来貞治は

部室に顔を出していなかった。


授業が終わり、家に帰ろうとしていた貞治に

新二郎が近づいてきた。

「お前、最近倶楽部に顔出してないな」

いつものYシャツにネクタイ姿で

新二郎は貞治に絡んできた。

「何か嫌なことがあるのか?」

「そんなんじゃないよ」

「じゃあ顔出せよ」

新二郎が貞治に詰め寄る。

どう考えてもノーとは言わせないつもりだった。


遊人倶楽部の部室のドアが開き、

貞治と新二郎が入ってきた。

「あっ、久しぶりだねぇ貞治君」

応接間で壮吉と神経衰弱をしていた千恵子が

貞治に手を振った。

「今日は来てくれたのか、貞治」

壮吉が笑顔を見せる。

「お前らがいじめるせいで

なかなか来れなかったらしいぞ」

新二郎が笑う。

「そんなんじゃねぇ」

貞治が少し照れる。


「そういえば貞治君ってうちのクラブの

他の部員って知らなかったよね?」

「そうだな」

「ちなみに私、調理部に通っているんだ」

千恵子が笑顔で語った。


「噂をすればあいつがやってきたぜ」

壮吉が応接間から二人に話しかける。

部室のドアが開き、大量の画材を抱えた

男が入ってきた。

「健二君、こんにちは」

千恵子が手を振ると、男はそれを無視した。

「おい健二、今のは失礼だろ」

壮吉が注意したのを無視するかのように

男は勉強机に向かって座った。

「まったく、あいつは通常運転だな」

新二郎が呆れた口調で言う。


「紹介するね、彼は加藤健二君

美術部の二年生で20歳だよ」

千恵子が貞治に説明する。

それを聞くと貞治は、ソファから立ち上がり

健二に向かって歩き出した。

いったいどんな奴なのか、という

好奇心が彼を行動させた。


勉強机の横に立って貞治は

健二の作業の様子を覗いてみた。

すると、彼は漫画を描いていたのだが

それは少女漫画だった。

「やぁ、上手に描けているな」

貞治が話しかけると健二は

「うるせぇ」とだけ返した。

「少女漫画が好きなのか?

オレは江夏貞治、よろしくな」

貞治は笑顔で話しかけていたのだが、

健二は不機嫌そうな顔でこちらをにらんできた。

「人様の迷惑になるようなことはするなって

母ちゃんから言われなかったか?」

健二がそう吐き捨てる。

「言われたけど……」

「じゃあオレに話しかけるのをやめろ、

お前迷惑なんだよ」

「挨拶したかっただけなんだよ……」

「こんにちは、ホラ、満足したろ?」

健二があっち行けのジェスチャーをする。


「何だよあいつ、変わった奴だな」

ソファに戻った貞治が健二を不思議そうに見つめる。

「ごめんね、健二君って

作業中はいつもあんな感じなの」

千恵子がフォローする。

「いつもあんな感じじゃないか?

今に始まったことじゃないし、気にするな」

新二郎がカップ酒を飲みながら言う。

「あいつは今、夢に向かって必死なんだ」

壮吉が少し哀れむように言った。

「少女漫画家になって女の子のイラストに

囲まれながら過ごしたいんだって」

「何だその夢? 変なの」

貞治が呆れていた。


この会話は健二の耳にもしっかり入っていた。

ペンを持つ手は少し震えていた。

そしてこう呟いた。

「見てろよザコども、

いつか二次元とオレが認められるときが来るはずなんだから」

静かな怒りが沸いていた。

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