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土豪 27

前回の終わりを少し削って此方の冒頭に改訂して持ってきました 

よい文章を書きたいとは常々思ってますが、

改訂する前と後のどちらの文章がいいか、

困ったことに自分ではよく分からんです

身を引き裂かれんばかりの怒りに支配された洞窟オークの子供たちが三人、甲高い叫びを上げながら坂道を転がるように駆け降りてくるのがリヴィエラには見えた。

洞窟オークの娘の躰から刃を引き抜いたリヴィエラは、外套の端で血糊を拭いながら空を仰いで小さく嘆息し、それから口元に指を運んで甲高い口笛を吹いた。

鳥の鳴き声に似た音が草原に響き渡る、同時にリヴィエラが拳を握ってぐるぐると頭上で振った。

と、後方の丘陵から十名ほどの人族と亜人が混じった兵士の一団が姿を現した。

横合いの稜線からも同じく十名ほどの武装した男女が駆け下りてくる。


戸惑い、足を止めた子供たちは、素早く動いた兵士の一団に不意を突かれ、あっという間に囲まれ、退路を断たれた子供たちは茫然と立ち尽くした。

槍や小剣、棍棒などを構え、皮鎧や厚手の布服を着込んだ一団が何を目的としてやってきたのか。

さすがに彼らにも理解できた。

包囲の輪を縮めてくる恐ろしげな兵士たちを凝視しながら、洞窟オークの子供たちは背中合わせに蒼白な顔色で立ち尽くす。


「な、なんだよ……こいつら。何なんだよ!」

恐慌を起こしている痩せた洞窟オークの子供ウィ・ジャに、上背のある(といっても洞窟オークの子供にしてはだが)ジグ・ルが背中合わせに囁いた。

「……落ち着け」

「落ち着けだって!」

叫んでいる痩せた子供に肯きかけながら、勝気なジグ・ルは歯を食い縛りながら、鋭い視線で周囲を睨みつけた。

「爺さんたちが近くにいる。騒ぎに気づいてくれる筈だ」


「鮮やかなもんだぜ」

「さすがにお嬢だ」

郎党たちの賞賛の声に、だが何故か煩わしげに眉を顰めるとリヴィエラは地面に落ちた陶器の笛を拾い上げた。

「……スー・ス!」

洞窟オークの少年グ・スウはただ一人、兵士の包囲の輪を素早く駆け抜けて少女の元へと駆け寄っていた。

地面に倒れたスー・スを少年が抱きかかえてみれば、苦しげに表情を歪めている。

震えながら少年を見上げると少女は何かを伝えようとして口を開き、しかし、咳き込んだ口から大量の真っ赤な鮮血を吐いた。

零れ落ちた涙が頬を伝って地面へぽろぽろと落ちていく。


やがて、洞窟オークの少女の目から生気の光が消えた。

「ああああああ!」

喉も張り裂けんばかりに絶叫した小僧が小刀を手に踊りかかってくるのを、半ば予期していたのだろう。

手練の戦士であるリヴィエラはあっさりと躱すと、二本の力強い腕が信じられないほどに素早く動いて少年の腕を外側から掴んだ。

ただ掴まれた。それだけなのに、鉄のやっとこに強い力で締め上げるように小僧の腕の骨はぎしぎしと軋んだ音を立てる。

苦痛の叫びを上げる洞窟オークの小僧を片手で掴み上げると、リヴィエラは低く囁いた。

「子供は殺したくない……大人しくしていろ」

「スー・スを殺しておいて!」

「村に知らされる訳には、いかなかったからね」

無表情に独りごちてから、リヴィエラの右足が跳ね上がった。

女とは思えない力に腹部を蹴り飛ばされた少年は、宙を浮いた。

小さな身体は二間も吹っ飛されてから地面へ叩きつけられ、そのまま地面をごろごろと転がった。

それまで血の気の引いた強張った表情で兵士たちを睨みつけていた背の高い子供ジグ・ルが叫び声を上げて駆け寄ろうとし、しかし、武装した人族に素早く行く手を阻まれた。

リヴィエラの郎党の髭の大男が、後ろからジグ・ルを抱きしめる。

「おお?こいつ、娘っ子だぜ!」

-------------------


削除


ーーーーーーーーーーーー


「へっへ、こっちは命を賭けてるんですぜ。若旦那」

「ちょいとしたお楽しみがなければ、やっていけないですぜ」

古参兵たちは、若僧の制止など歯牙にも-----



リヴィエラは同調する様子もなければ、部下を庇いもしない。

ただ淡々とした無表情のままじっとパリスを眺めていた。

ベーリオウル家の郎党には、荒んだ雰囲気を纏っている荒くれ者たちが少なからずいる。

何れも性悪の猟犬のように獰猛で、獲物を捕らえたら最後、ズタズタに八つ裂きにするような気性の激しい荒くれ者たちだ。

幾人かは手練の戦士もいるようであるが、彼らは『強者』カディウスとその娘リヴィエラ以外には、従う様子を見せなかった。

郎党たちは、一応、パリスに対しては尊重する姿勢を見せていたが、それも主人の同盟者だからに過ぎない。

今いるリヴィエラの手勢は、四人。

人数は少ないが、いずれも猛々しい雰囲気を纏った精悍な男たちであり、パリスとその部下が掣肘しようとすれば、事態がどう転ぶかは分からなかった。


緊張しているのはパリス一人だけに見えた。

クーディウス家の郎党たちは突然の内輪揉めに戸惑いを隠せずざわついており、ベーリオウルの手勢は薄ら笑いを浮かべてパリスを眺めていた。

「止めろといっている」

「嫌だねぇ」

凄みのある若者の制止に、しかし、郎党は馬鹿にしたように鼻を鳴らして応えた。

緊張感が取り返しがつかないほど高まる直前に、リヴィエラがさっと両者の間に割って入った。

洞窟オークにしては、見目のいい娘だ。

水浴びもしているのか。異臭もせず、肌も綺麗だ。

オークの少女を一瞥してから、パリスへと向き直ると、嫌われても構わない心算で忠告してみる。

「パリス……彼らは味方だ。

そして、部下たちにちょっとしたご褒美と気晴らしを与えるのも、また指揮官の務めではないかな」

だが、結局のところ、パリスからすれば、リヴィエラの忠告も勝手な理屈に過ぎなかった。パリス・オルディナスは沈黙を保ったまま、リヴィエラ・ベーリオウルをじっと見つめた。厳粛な目の色を向けられて、リヴィエラは内心、怯みを覚えた。

パリスは鼻の付け根に皺を寄せると、まるで、目の前にいるのが本当に彼の知っている幼馴染本人なのだろうかとでも言いたそうに、疑わしそうな眼差しで郷士の娘を貫いてから

「……何時からそんな人間になった?リヴィエラ・ベーリオウル」

「……ッ」

まるで見えない一撃を受けたかのように、郷士の娘リヴィエラが表情を歪めた。

此れはこたえた。単に嫌われるよりも失望される方が何倍も効いた。

不覚にも泣きそうになった。

自分でも自覚する急所を突かれたからか。

苦痛でも感じたかのように呼吸を乱しながら、リヴィエラは友人を悲しげな瞳で見た。

その傷ついた表情は、リヴィエラが自分より年下のまだ若い娘だという事をパリスに思い出させた。

ハッと小さく息を呑み込んだのは、豪族の息子も後悔を覚えたからだろうか。

だが、リヴィエラの傷ついた表情を見た瞬間、今までは我関せずの態度で傍観に廻っていた残り二人のベーリオウルの郎党が猛烈な怒気を発した。

一瞬にして凶暴な顔つきに変貌すると、パリスを睨みながら武器に手を掛けようとしたのを、横目で捉えたリヴィエラが先んじて鋭い叫びを発した。

「放してやれ!モラ!」

髭面の郎党は、不満げな顔を郷士の娘リヴィエラに向けた。

「ですが、お嬢」

「すまんな。残念だけど、どうやらパリス殿は曠野風のやり方はお気に召さないらしい」

リヴィエラの口調は強いものが込められていて、しかし、その頬が悔しさか、悲しさかに痙攣しているのを見、それで郎党も、渋々とだが命令を聞き入れた。

パリスを睨みながら、未練たらたらに小娘から手を放して、腕を掴むだけに留める。

肯いたパリスが踵を返し、部下たちに号令するのを見ながら、だが結局は同じことだと、リヴィエラは幼馴染の背中を睨みながら強く唇を噛んだ。

捕虜にした娘は、どの道、後で戦利品として分配される。

リヴィエラ自身は、部下たちに其の小娘を与える心算だった。

餓えた狼のように獰猛な部下たちだ。力量を示し、飴と鞭を与える事でようやく統御しているが、彼らが内心どれだけ服従しているかは、リヴィエラにも分からない。

郎党たちを完全に従えることが出来るのは、父のカディウスだけだろう。

そうなることを恐れてはいないし、けして恐れを表に出しはしないが、或いは、リヴィエラ自身が彼らの欲望の対象にならないとも限らない。

「……甘いよ、パリス」

部下たちを宥めつつ、リヴィエラは苦い表情で深く息をついた。

子供の頃には、あれほど好意を抱いていたパリス・オルディナスを、今、リヴィエラ・ベーリオウルは憎み始めていた。

軋轢以上に、時折、パリスが露わにするリヴィエラの考え方への嫌悪の眼差しが彼女の心に苦いものを味あわせるのだ。

考え方が固まり、互いに譲れないものが出来てきた。此れが大人になるということかな。

一瞬だけ、憎悪に身を任せそうになったものの、リヴィエラは頭を振って考え直した。

いや。白か、黒かだけで考える方こそ、子供というものだな。

本当の大人なら、好きな部分もあれば、憎い部分もあって当然だろう。

己の気持ちを整理したリヴィエラだが、パリスの背中を見てやや危惧を覚えた。

危険な戦になればなるほど、兵士たちは代償を求めるものだ。

それは敵の血であったり、戦利品や奴隷であったり、敵の女の嘆きや悲鳴であったり様々だが、戦った兵士たちの神聖な権利でもある。

リヴィエラ自身でさえ、戦って殺した戦士からその武具を奪うのは、えもいわれぬ快感だったことを覚えている。

よほどに強力な司令官でない限り、兵士たちに略奪を禁ずることはできない。

まして、見目も、奉ずる神々も、文化も異なる異種族相手の戦なんだ。

それで命がけの戦利品を取り上げられれば、兵卒は不満を抱く。

他の郷士豪族の手勢や、特に傭兵たちは、略奪を禁じれば、きっと君を憎む。

この先、きっと大きな戦になる。背中に気をつけることだね、パリス。

君を好いている人も多いけれども、何時も周囲に味方がいるとは限らない。



道案内に同行してきた老行商に兵士の一人が声を掛けた。

「下がっていろ、爺さん、下がっていろ。これから戦が始まるからな」


豪族の息子パリスは、部下を二人引き連れて、トリス村を一望できる高い場所へと勾配を昇っていく。

憂鬱な表情をした豪族の息子が、時折、洩らす嘆息に苛立つ気持ちを隠しきれないのは明白で、結局の所、けして幼馴染のリヴィエラを嫌っている訳ではないのだろう。

パリスの後ろを歩きながら、栗色の髪をした女兵士のケスはそう推測してほろ苦い笑顔を浮かべた。


高台に立つと地平線の彼方、南東の方角にはパリトーを抱く鬱蒼としたフィアドの森が見え、北方には丘陵地帯の波打つ稜線が広がっているのが見えた。

夕刻も近く、太陽が橙色の光を大地に投げかけている。

窪地にある眼下のトリス村では、小さな人影が盛んに動き回っていた。

後方にいる子供たちにリヴィエラが話しかけているのを見ながら、女兵士のケスが訊ねかけた。

「で、子供たちはどうしますか?」

「……そうだな」

心ここにあらずといった様子で物思いに耽っていたパリスが、問われると首を傾げた。

「逃がす訳にもいかない。誰か見張りをつけて、後ろの方に置いておこう」

「よければ、わしが見てますよ」

後をついてきた老行商が言い出した。

「一人でも戦える兵士は必要でしょう」

ケスの目には、老人の目のうちにきらりと怪しげな光が走ったような気がした。

パリスは如何でも良さそうに肯きかけたがケスが遮った。

「私が見てます。縛っておけば、一人でも大丈夫でしょう」

信用しない訳ではなかったが、老人の欲深そうな顔に捕虜を任せるには不安を覚えた。

案の定、面食らった様子の老人は、一瞬だけ険悪そうな悪相をケスに見せた。

奴隷として連れ去る心算だったのか。

或いは、知り合いの村人の復讐に痛い目に合わせる心算だったのかも知れない。

「では、任せよう。頼むぞ、ケス」

敬愛する主筋の青年の言葉に女兵士が深々と頷いた時、老人はかすれた声で呟いた。

「しかし、運のよい小僧共だ」


「やれやれ。一時は、どうなるかと思ったよ。

なにしろ、お前さまの家の部下はおっかないのが多いからね」

クーディウスの郎党で、やはり子供の時代からリヴィエラの顔を知っている中年男がぼやいた。

「戦では頼りになる連中だよ」

剣を吊るした革帯の位置を直しながら、リヴィエラは苦々しく呟いた。

「ああ、分かってる。わしら、農兵とは、なんか根本的に違う感じがするからなぁ」

とぼけた調子で一通りボヤいてから、中年の郎党は離れていった。

大きな声で喋っていた為か、周囲の者たちも聞き耳を立てていたし、ぼやきに先刻のいやな緊張感も薄れたのだろう。

ぎこちなさは残るものの、再び一体感を取り戻した一行の、各々が動き始めた。


「……さて」

昔馴染みの郎党の背中を見送ってから、リヴィエラは改めて虜にしたオークの子供たちに向き直った。

その頃には、郷士の娘に蹴り飛ばされたオークのグ・スウ少年も、苦痛と衝撃から立ち直っていた。

ベーリオウルの郎党に腕を掴まれ、強引に立たされて苦痛に悶えながらも、なお怒りを湛えて熾き火の如く燃える瞳でリヴィエラを鋭く睨みつける。

「よくもスー・スを!殺してやる!」

勝気そうな顔のオークの少女も一緒になって叫んでいる。

「畜生!このオークでなし!猿!勝負しろ!てめえェ!聞いてんのか!」

暴れる娘を抑えながら、ベーリオウルの兵士が呆れたようなうんざりしたような声を洩らした。

「やれやれ、口の悪い小娘だなぁ」

「猿轡をかましとけ」

「穴オークにしちゃ、いい顔立ちしてるぜ。勿体無えや」

涎を垂らしながら、髭面の兵士が未練たらしく娘の身体を抱きしめて首筋の匂いを嗅いでいた。

鼻が低いのを我慢すれば、オークにしては確かに顔立ちは整っていた。

「村に、見目のいい洞窟オークの雌もいればいいな」

リヴィエラは最後に臆病そうな少年を一瞥する。

彼だけは一言も喋らずに、血の気の引いた強張った顔で震え続けている。

三人を観察し終わると、剥き出しの敵意を浴びながらも、リヴィエラはどこか面白がるような表情を浮かべた。

郷士の娘は若さに似合わぬ歴戦の勇で、洞窟オークの子供たちは憎しみを知ったばかりの雛鳥に過ぎない。

オークの少年らがどれほどの敵意を漲らせようが、両者には、闘争の技量に置いて隔絶の差があった。

彼女を害するのには、何もかもが足りなかった。

逆に云えば、だから態々、殺す必要もない子供たちだった。

或いは、遠い未来。歳月に鍛え上げられた彼らがリヴィエラの目の前に立つ日が訪れるかも知れない。だが、その時はその時だ。

「押さえろ。縛り上げておけ」

少年たち一人一人の顔を見比べながら部下たちに命じると、こう独りごちた。

「それにしても……運のいい子供たちだな」

何気なく呟いた言葉に激昂したのは、やはりグ・スウ少年だった。

「運だと!運がいいだと!……よくもッ……よくもぉッ!」

雛鳥の鳴き声など、若き狼にとっては恐ろしくもなんともない。

少年の血を吐くような叫び声に、いっそ朗らかとでも云うべきふてぶてしい笑顔を郷士の娘は向ける。

「村のオークの子供だろう?」

いいや、君らは運がいい。何故か、分かるか?

頬を撫でながら、目を細めて優しげな笑みを形作った。

だが、目はまるで笑っていない。


「村に逃げ帰っていたら、他の者と命運を共にしただろう」

外套の女の言葉は、痩せた少年の耳には特に酷く不吉に響いた。

「命運って……なんだ。何のことを云ってる?」

顔を覗き込んだリヴィエラは、鼻腔を蠢かせて呟いている少年から覚えのある匂いを嗅ぎ取った。

曠野の戦で、度々、馴染んでいた懐かしい匂い。恐怖の匂い。

「ど、どういうことだよ。お前ら、なんなんだ!」

呆然と立ち尽くし、或いは激昂して叫んでいる洞窟オークの子供たちを、嘲弄と憐憫の入り混じった眼差しで見ながら、この時、リヴィエラは、尋問相手にも分かり易いようにオーク語で喋っている。

辺りのオークの話し言葉は、北方のオーク語の単語が幾らか入り混じっているだけで、基本的には辺境の人族と文法も単語もほぼ共通である。

故に分かり易い。逆もまた真で、オーク達もまた人語を解した。

「……分からないか?」

リヴィエラの囁きと兵士たちがせせら笑う声に、三人の子供たちが息を呑んだ。

少年の恐怖と絶望に竦んだ表情に、リヴィエラはヘイゼルの瞳を楽しげに細めた。

他人から見れば捕虜の恐怖を楽しんでいるように見えただろう。

父のカディウスは、敵に酷く恐れられた。そして、常に敵の恐怖を楽しんでいた。

冷たい嘲笑を向けられて、魂が潰れそうなほどの苦悶が痩せた少年を苛んでいるのが分かった。

恐怖と絶望がその全身から濃密に香り立つようだった。

父がよく同じ微笑を浮かべて蛮族を尋問していた。

上手く、恐ろしげな人間を装えているだろうか。

「そ……そんなことをしてみろ。グ・ルムさまがお前をただじゃおかないぞ」

切羽詰った叫びに勇気付けられたのか、子供たちの顔が明るくなった。

「そうだ!大人たちが帰ってくれば、お前らなんか……」

「気の毒だけど、お前たちの軍勢は敗れ去った」

「嘘つけ!糞野郎!」

渡し場で洞窟オークの死体の山を調べた際、リヴィエラは価値のない血塗れの装飾品を幾つか回収しておいた。

血に塗れた鉛の指輪や木製の耳飾が地面に落され、それを見て三人のオークの少年は一斉に息を呑んだ。

「見覚えあるかな?」

嬉しそうに囁いてから、絶望の昏い表情を浮かべた顔をじっと覗き込む。

はしばみ(ヘイゼル)色の瞳に残酷な光が揺れて踊っていた。

「これから村を焼く。女も、子供も、生きてる者は皆殺しにしてやる」

無表情のまま、オークの子供の尖った耳元で淡々とリヴィエラは宣告した。

「一人も残さない。皆殺しだ」

「……嘘、止めて、かあさんが」

痩せた少年が俯いたまま、ぼそぼそと呟いた。

「……止めろよ。止めて、御免なさい。お願いだから、止めて、お願い……そんなことしないで」

オークの少年ウィ・ジャは、涙目で慈悲を乞い始めた。

「か……母ちゃんがいるんです。病気なんだ。お願いだから」

必死に続ける彼の懇願は、しかし、リヴィエラをこれっぽっちも動かす事は出来なかった。

「そうか……それは気の毒に」

ベーリオウルの郎党たちは哄笑を上げ、一人が唾を地面に吐きながら言い捨てた。

「坊主、母親の運がいい事を祈っておくんだな」




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