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襲撃 06

 世の中は何が起こるか分からないとエルフの娘は思っている。大きな町や村が数十人、数百人という大規模な山賊団や海賊団に襲撃されて根こそぎ略奪された。時に灰燼と化すほどの被害を受けたなどという話も、辺境を旅していれば年に一度は耳に挟んだりする。

だから、滞在している村がオークや盗賊に襲われることもけして有り得ない話ではないだろう。


 暇を持て余していたここ数日、エルフの娘は散歩ついでに村の地形や建物の位置などを大まかに把握しておいた。念の為、逃走路になりそうな路などを決めておけば、いざという時も迷わずに済むし、

多少なりとも有事の際の生存率を上げてくれる筈であった。或いは、無駄なことをしているのかも知れないと思いながらも、半ば惰性で行っていた日頃の習慣が、今、確かにエルフ娘の身を救ってくれていた。


 村内には、手の入っていない生のままの自然が豊富に残っていたので、身を隠す場所には不自由しない。

凸凹した道も、俊敏な身のこなしのエルフ娘が鈍重な洞窟オークから逃げ回るには都合がよかった。

時に木立や岩陰、盛り上がった土手などに身を潜めて賊共をやり過ごし、時にはでこぼこした道を大胆に小走りしながら、エルフ娘はあっさりと村外れまで辿り着いていた。

一度だけ遠目に見つかってしまったのか。後を追いかけられたが、幸いに洞窟オークはそれほど足は早くない。持ち前の素早い身のこなしで、エルフ娘はあっさりと追跡者を振り切る事が出来た。


 先ほどから、村の中心部の方よりひっきりなしに干戈を交える音と喚声が響いてきている。

エリスは、巻き上がっている激しい砂煙に蒼い瞳を向けて憂鬱そうにつぶやいた。

「激しくやりあってるみたいだな」

村人と洞窟オークのどちらが勝つにしろ、巻き込まれないようにさっさと距離を取って正解だった。

人の背丈ほどの高い繁みに身を潜めながらエルフ娘は慎重に辺りの田舎道を窺っていたが、やがて不審そうに首を傾げて考え込んだ。

村内を駆け回っている洞窟オークたちが、此処に来て随分と数を減らしたように思えてならない。

相変わらず多いといえば多いが、盛んに駆け回っていた小集団がふと姿を消しているのだ。

半エルフが村外れにまで辿り着いたからだろうか。数瞬考えるが、違う気もする。

村内を行き交っている洞窟オークが目に見えて減らなければ、これほど容易には村外れまでやってこれなかっただろう。先ほども血相を変えて喚きながら道を逃げていく一匹を見かけたから、戦は村人たちが優勢なのだろうか。

案外、アリアが奮戦して片端から洞窟オークを倒しているのかもしれない。

ふと思い浮かんでから、さすがに都合よすぎる考えに思えて、エリスは苦笑して首を振るった。


 如何にアリアが腕が立つと言っても、並み外れた膂力や屈強の肉体に恵まれている訳でもない。

こんな状況では、よっぽどの豪傑でもない限り、単騎の剣士に出来ることなど限られている。

今はただ、無事で居てくれればそれでよい。

友人の無事を祈りながら、エリスは先に村を脱出しようと注意深く進み始めた。



 村内のやや狭い田舎道で数十人の村人と洞窟オーク達が固まってぶつかり合っていた。

一匹の洞窟オークが喚声を上げて棍棒を振り下ろした。

激しい一撃を六尺棒で受け止めた農夫が、跳び退さるや今度は歯を食い縛って己が武器を洞窟オークへと叩きつける。

村人たちと洞窟オークの集団戦は拮抗していた。

入れ代わり立ち代わり、数人が前列でひしめき合い、押し合っている。

乱戦は別にしても、こうした集団同士のぶつかり合い。

特に装備や人数の拮抗する争いでは、序盤は殆ど死人や深手は出ないものだ。

戦死者が出始めるのは、片一方の体力が底を尽き、士気が挫けて、敗走を始めてからが多い。


 洞窟オークの酋長であるグ・ルムは苛立たしげに歯噛みしていた。

野山を彷徨う野良の洞窟オークたちや、部族に属さない家族単位の小さな群れにも声を掛けて人数を集めたものの、所詮は烏合の衆。人数ほどの力は発揮できずにいた。

それに思ったよりも、村人たちが粘り強い。

二方向から攻めたてた当初は洞窟オークが優勢に押していたものの、

時間が経つと共に、村人たちも半包囲された衝撃から立ち直ってきたのか。

指揮官らしい年増女や中年男の張り上げる声に鼓舞されて、明らかに持ち直して来ていた。

こうなると武具や体躯に劣る分、徐々に洞窟オークの方が不利になる。


 洞窟オークの一人がグ・ルムの目前で目前で横転した。

洞窟オークの酋長は前に進み出ると、味方を庇うように小剣を振り回して村人を牽制する。

その隙に横転した洞窟オークが立ち上がったのを見届けてから、グ・ルムは、再び後ろに下がって声を張り上げる。

だが、味方の洞窟オークたちはいずれも相当に疲れてきている様子なのが見て取れた。

数では優っているが、今一つ村人を押し切れないでいる。

殻竿や棍棒が叩きつけられる度に洞窟オークたちは怯みを覚え、呻きをあげて後退ってしまう。

そろそろ、南に廻した兵が姿を見せてもおかしくない筈だが……

酋長のグ・ルムは南へ続く田舎道に視線を走らせたが、一向に味方の現れる気配が無い。

所詮は、烏合の衆。略奪に夢中になっているのだろうか。それにしても遅すぎる。

纏って来る事も期待していないが、殆ど姿を見せていないのはどう云う事か。

その為に、今彼の大切な子飼いの兵が危地に陥っている。


馬鹿共!大きなものの見えん愚か者共め!

僅かな家具や農具、食べ物に執着して、村一つを得るか否かの戦いを危うくするとは。

なんと言う愚か者たちだろうか。

猛り狂う気持ちを抑えた洞窟オークの長は、小剣を振るって味方を鼓舞する。

命令に従わない愚か者共を、なぶり殺しにすらしてやりたい。

連中を当てにしすぎたか、洞窟オークの酋長の胸中を暗い予感が過ぎっていた。


此の時点で洞窟オークの長であるグ・ルムには、幾つかの誤算があった。


 一つ目の誤算は、思っていたよりも川辺の村の人々がずっと早く反攻に転じて来たこと。

予期していなかった早朝の奇襲を受けたトリス村と違って、川辺の渡し場の村人は直ぐに武器を取って向かってきた。

主だった村人たちはトリス村が襲われた事を耳にして警戒してもいたし、街道筋ゆえに普段からオークの跳梁を耳にして、或いはこの事あるを予期して備えてもいたのだろう。

トリス村とは、抗う力が段違いであった。

村には武具の蓄えも幾つか在ったし、艀の不通によって足止めを受けていた旅人たちも少なからず滞在していた。

旅人の多くは武装しており、村人たちと一緒になって激しく洞窟オークに抵抗してきている。


 二つ目の誤解は、味方の士気の低下だった。

グ・ルムの手勢は八十を上回る。だが、その半数近くが放浪の洞窟オークや家族単位の小部族。云わば他所者たちであった。

 彼らは所詮、略奪と奴隷を目当てに軍勢に加わってきた者たちであり、トリス村での勝利でとりあえずの欲望を満たした後、随分と士気が下がっている。

先ほどからいくら叱り付けても、一向に戦列に戻ろうとせず後方をうろついており、こんな生き死にの戦いでは当てになりそうな連中では無かった。

彼らが逃げないのは、ただ単に勝った時にいち早く略奪に加わる為に過ぎないのだろう。

酋長が鞭で叩き、怒鳴り声で戦列に戻るよう指示すると、渋々、前へ進んでいくが、直ぐに後ろに戻ってくるのだ。

 腹立たしいが、しかし、切り捨ててしまえば、野良の洞窟オークたちは逃げ散って二度と彼らの協力は当てにできなくなるだろう。

よそ者の兵は、逃げないだけ上等というべきか。

 だが、グ・ルムには解せなかったものの、子飼いの兵も落としたトリス村で鱈腹飲み食いした為に動きは鈍っていたし、朝の勝利と略奪でかなり気も緩んでいた。

連戦で疲れてもいる為に、切羽詰ってトリス村を攻め落とした時に比べて明らかに弱くなっていたのだ。


 三つ目の誤算は、三方向から攻めて村人を河へと追い詰める筈だった包囲網が、最初から成立しなかったこと。

まさか、現時点で南に廻した兵の殆どが、女剣士とドウォーフ。手練とは言え、たった二人の戦士を相手に討ち死にしているなど予想外もいい所だった。

「南に廻った連中は何をしているんだ……まだ、来ないのか」

兵力の三分の一が失われ、包囲網が食い破られている事に気づかないで、グ・ルムは苛立たしげに愚痴を洩らしていた。


 四つ目の誤算、これは人里離れた渓谷に棲まうグ・ルムの視野の外にあることだったが、

川辺の渡し場は、別にトリスのような孤立した農村ではない。

街道筋にあって周辺には農園や民家も散らばっている。

洞窟オークが攻め寄せた際、助けを求めに逃げ散った村人も幾人かいた。

時間が経てば、近隣の郷士や武装農民が援軍としてやって来るだろうことも、村人たちの士気を支える一因となっていた。


 もう既に一番近くの農家からやってきた農夫たちが、殻竿や棍棒を手に村の近くをうろついていた。

今はまだ踏み込んでくる決断は付いていないものの、後からやってきた者たちと合流して纏まった人数となったら、いずれは村に踏み込んでくるだろう。


 グ・ルムの目の前でまた一人洞窟オークが打ち倒された。

今度は助ける隙もなく、村人に突き出された槍を受けた洞窟オークが断末魔の悲鳴を上げる。

或いは、当初の思惑通り、トリス村を手に入れた時点で満足していれば良かったのか。

弟の仇を取ることに執着し過ぎたとでもいうのか。

 徐々に洞窟オーク達の旗色が悪くなっていく中、それでもグ・ルムは咆哮して味方を鼓舞し続けている。まるでそうすることが、傾きかけた自らの部族の運命を切り開く為の唯一の手段だとでも信じているかのように、洞窟オークの首長は勇を振るって奮戦し続けていた。




 女剣士の鋼の長剣が閃き、ドウォーフの鉄製の槌が唸りを上げるたびに、洞窟オーク達は血飛沫を上げて倒れていく。

「……どれくらい倒したかの」

息を乱しながら白髭のドウォーフが訊ねると、肩で息をしながら女剣士が応えた。

「さあ、二十はとうに越えている筈だが……」

旅人や村人たちを助けながら、女剣士とドウォーフは進んでいた。

遭遇した洞窟オークは悉く絶命しているが、代償として女剣士と白髭のドウォーフも少なくない気力と体力を消耗していた。

「余力のあるうちに一度、退かぬか?」

洞窟オークの総数も分からず、何時、何処に出没して襲ってくるか、気も抜けない。

白髭のドウォーフが離脱を提案するが、女剣士は首を横に振った。

倒れ伏した洞窟オークたちの亡骸を一瞥してから、女剣士は三叉路で困ったように首を振った。

どっちに行こうか、女剣士は迷いながら北側へ向かう道へと足を踏み出した。

「貴殿だけで逃げてくれ。グルンソム。私はもう少し友人を探してみる」

「……それほどに大切な友人なのか?」

白髭のドウォーフが乱れた革の帽子を被り直しながら訊ねてくる。

「うむ。己の命を危険を晒す程度にはな。だが、他人を付き合わせるわけにもいかぬ」

言い切った女剣士の横顔をじっと見つめてから、老ドウォーフは再び訊ねかけた。

「恋人か?」

整った美貌を朱に染めて女剣士が言い澱んだのを目にし、愉快そうに髭を揺らしてドウォーフが笑った。

「ほっ、構わん。付き合おう」

黒髪の女剣士は黄玉の瞳をドウォーフに向けて、

「だが……いいのか?」

老ドウォーフは、口をへの字に結んで深々と頷いた。

「感謝する」

云って歩き出した女剣士に物陰や木陰に視線を走らせながら、ドウォーフは軽口を叩いた。

「にしても、御主のような女に其処まで愛されてあの坊主も男冥利に尽きるの」

友人の性別を間違えられた黒髪の娘は微妙な顔をする。

「……エリスは女だよ」

白髭のドウォーフが怪訝そうな表情で首を捻った。

「むぉ?……しかし」

ドウォーフ族には樽のような体型の女性が多く、其処までいかなくても一般にやや豊満な女性が美しいとされている。

決まり悪そうに口ごもった白髭のドウォーフに、女剣士は真面目くさった顔で念を押した。

「エリスは、確かに胸が控えめかも知れぬ。だが、本人には言わないでやってくれよ」




 田舎道を進んでいたエルフ娘の尖った耳に、子供の泣き叫ぶような甲高い悲鳴が届いた。

半エルフは素早く手近な岩陰に身を潜めると、はて何ごとだろうかと、顔だけ覗かせて辺りの様子を窺ってみる。

「……どうしたものかな」

軽く目を見開いて息を呑むと、エルフ娘は参ったように呟いた。

村からの脱出を目前として目と鼻の先にある田舎道で、今朝助けた農婦が再び洞窟オークに追い詰められつつあった。

どうやら河原まで逃げる途中に、洞窟オークの雑兵と遭遇してしまったらしい。

問題は、農婦の背中に脅えて泣き叫ぶ数人の子供が匿われていることだ。

何故か、鼻水を垂らした村長の娘までいる。

戦利品を求めて村を彷徨う二匹の洞窟オークにとって、通り掛かった農婦と子供たちは手頃な獲物に見えたのだろう。

性悪な森ゴブリンなどに召使として売り飛ばして小遣いにするのもよし。或いは、奴隷にするのもよし。

洞窟オークたちにとっては、手頃な憂さ晴らしであると同時に一稼ぎする好機であった。

 小さな石斧と短槍を振りかざした二匹の洞窟オークに追いかけられた農婦は、子供と共に田舎道を必死に逃げ回っていたが、やがて土手に挟まれた窪みへと追い詰められてしまった。

「そこは駄目だ」

繁みに隠れながら、手に汗握って一部始終を見ていたエルフが思わず小声を洩らした。

正面のエルフからは見通せても、恐らく農婦の位置からは逃げ道に見えたのだろう。

農婦の入り込んだ狭い窪みは、道でも何でもなくただの行き止まりである。

若干の薪が詰まれている以外には何も置いていない。

自分から死地へと飛び込んでしまった農婦は、さっと顔を青ざめさせた。

愕然とした表情で辺りを見廻してから後戻りしようとしたが、その目の前に厭らしい笑みを浮かべた洞窟オークたちが立ちはだかった。



 その頃、老ドウォーフと女剣士は、村の中央近くにある空き地に差し掛かっていた。

「六……七……十近い。ちょっと厄介だな」

数人の村人と旅人たちが、洞窟オークたちに囲まれて追い詰められている。

互いを背にして防いでいるものの防戦一方な様相で、致命傷は負ってないがやられるのも時間の問題だろう。

荒い息で必死に抗っているのを見て、助けるべきか、迂回するべきか。

相手がオーク小人とは言え、十という人数は歴戦の彼らにしても少し手に余るかも知れない。

白髭のドウォーフは数瞬、迷ってから女剣士に告げた。

「行こう、見殺しには出来ぬ」

前に進み出た白髭のドウォーフを女剣士が押し止めて、耳元にそっと囁いた。

「待て、私にちょっとした策略がある。そのまま行くよりかは幾分、マシだと思うが……聞くか?」



 村人たちと切り結んでいる洞窟オーク達の背後から、女剣士が飛び掛ってきたのは突然であった。

猛然と切りかかってきた女剣士は、後ろから次々と洞窟オークを切り崩していく。

一撃で頚椎を切り裂き、背中に叩き付け、ついで横っ飛びしてから跳ね上げた剣先が、腹部を薙いだ。

ぞぶりという音と共に叫び声を上げて三匹目の洞窟オークが倒れるよりも早く、女剣士は四匹目を思い切り突き倒した。

心臓まで達した致死の一撃に、四匹目のオークは即死する。

洞窟オークの胸を蹴り倒して剣を引き抜くと、女剣士は五匹目に切りかかろうとして、しかし、突然に動きを止めて舌打ちした。

まだ生きていた洞窟オークが、必死の形相で右足に抱きついていた。

横合いから槍を構えて洞窟オークが突っ込んでくるのを、女剣士は冷静に剣を振り上げると、投げつけた。

宙を飛んだ長剣は閃光のように槍の洞窟オークの腹に突き刺さり、横転させた。

 掴んでいるオークの首に短剣を突き刺し、残った洞窟オークが女剣士に向き直って周囲を囲もうとした時に、横合いから更にドウォーフが雄叫びを上げて吶喊してきた。

女剣士に注意を払っていたオーク達だが、さらに新手の出現に集中力を乱される。

洞窟オークの一匹が忽ちドウォーフに打ち倒され、さらに一匹が押され始めると、村人たちも此処を先途と猛烈に戦い始めた。

足を振りほどいた女剣士は、槍を拾い上げて洞窟オークの一匹に投げつけた。

見事に胸を貫いて横転すると、洞窟オーク達ももう駄目だった。

士気も崩壊して逃げ始めるのを、たちまち打ち崩されて逃げ散っていく。

女剣士は愛剣を回収すると、村人たちへと向き直った。

「……獲物を投げるかね」

呆れたようなドウォーフに笑って応えると、

「どの道、乾坤一擲であったか」

なにやら己の脇腹にある古傷を撫でた後、感慨深げに呟いていた。


 生き残っていた村人たちに歩み寄って、黒髪の娘が話しかける。

「生きてるか?」

「ああ……凄いな、あんたたち。助かったよ」

村人たちが畏怖の目を向けつつ述べた謝意に頷いてから、女剣士が問いかける。

「ところでエルフの娘を見なかったか?新緑のような翠色の髪を……」

「あいつじゃ!アリア殿!やつが頭目に違いないぞ!」

興奮した白髭のドウォーフに女剣士の言葉は遮られた。


 ドウォーフの指差した先、村人たちと洞窟オークたちが纏ってぶつかっている場所からやや離れたあばら屋の前。数人の護衛に守られて、大柄な洞窟オークが声を張り上げている。

確かに指揮官のようだ。思わず女剣士の口元から笑みがこぼれた。

「ふふ……がら空きだな。絶好の好機だな」

「連中には、士気の低い兵も相当数が混ざっているようだ。首魁を倒せば、村を救えるかも知れぬ」

ドウォーフの提案に頷いて、黒髪の娘は村人たちを見廻し、力強い口調で説得した。

「諸君!もう一戦できるか!

オークの首魁が目と鼻の先にいる。洞窟オーク共を追い返す好機だぞ!」

どうやら目の前の村人は、戦う意志と力をまだ持っているらしい。

顔を合わせて頷き合い、武器を振りかざして、合意の証に頷いてくる。

やる気になった村人を見廻してまず満足げに頷くと、女剣士は同様に武者震いして鉄製の槌を構えている白髭のドウォーフに歩み寄った。

「グルンソム。敵の首魁は生かして捕らえたい」

訝しげな視線を返してくるドウォーフに、女剣士は鋭い視線を敵の首魁に向けつつ

「幾つか、気になる事があるのだ。出来るか?無理にとは云わぬが……」

ドウォーフは少し考えてから、頼もしげににやっと笑い頷いた。

「貴殿よりは、わしの方がその任に向いてるじゃろうな。引き受けよう」

「頼む。では、わたしが周辺の雑魚を引き受けよう……行くぞ!」

鋭く敵の首魁を睨みつけると、自然と指揮を取る立場を引き受けた女剣士は愛剣を振り上げて味方に号令を下すと、鮮血に濡れた長剣は陽光を受けて眩しく煌めいた。



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