09 睡眠~旅支度前に
「いっつう……?」
痛む頭を抑えながら起き上がると、そこには何故か二人の姿が。 ベットを挟むようにして二人は寝ており、先ほど戦っていたのが嘘の様だ。
フィーンの頭に手をかざし、表示しろと呟く。 ステータス画面は本来相手には見せられない物だが、レベル五百越えともなれば、そんな物は強引に無くす事が出来る。
フィーンのステータス画面には、《弱・操り状態》という文字が状態異常の欄にあり、気になったため服暦を見ると、そこには《狂乱》《強・操り状態》など精神に異常をきたす物が、多大に発動されており頬が引き攣る。 上の欄へと進むと操り状態以外が一斉に解除されており、現在はその反動で寝ていると言った所のようだ。
「しゃーなしってね」
面倒に思いながらもフィーンのステータス画面をさらに無理やりこじ開ける。フィーンに害のあるスキルを全て、フィーンに負担が掛からないように破壊するため意識を集中する。
そして一斉にパキンッと言う音が何度も反響する。確認すると全てのスキルが消え去っていた。
……まぁ気にしないでおこう。
「次にリィンっと」
リィンの方もおかしいと思いステータス画面をこじ開けると、《弱・操り状態》の文字が。
大方フィーンにでもやられたんだろうなーと思いながら、それだけを消去させる。
それと同時にフィーンとリィンの記憶を少々改竄させる。少しばかり泣きそうになるが自分を叱咤し落ち着かせる。
「どうしてこうも面倒な事になったのかやら……」
そんな私の言葉はどこ吹く風、リィンとフィーンは仲よさそうに手を繋ぎながら寝ていた。
別に私はフィーンを許すつもりはない。どこに親を殺されて恨まない人間がいるのか聞きたい所だ。
だけどフィーンの方も私たちの所為で大切な人を失っている。ならお相子という子供のような感覚で優しさとして、許す許さないではなく、普通にしていれば良い。
「相変わらず面倒な性格だねぇー私、は」
本音として、ただ面倒ごとが嫌いだから、この恨みは私の中でとっておけば良い。この三人で今日旅に出てしまおう、そうすればフィーンを狂わせるようにした奴にもいつか会えるだろう。 リィンの隠している事もいつか私に喋ってくれて、それで、それで――いつか、逃げたくなったら死んでしまえば良い。この世界での出会いなんて幻想にも等しいのだから。
既に私の心は壊れてしまっているなんて、知る由も無かった。