08 戦闘開始~偽善
ごめんなさい、本当にごめんなさい。 四千文字楽ーに越えて話が今回で終わらなかったorz ついでに考えていたストーリーが恐ろしく変わりました。
次で絶対に終わらせます。……フィーンをどうしよう。
「くっ、邪魔よ! <風刃>!」
兄さんと迷宮へ向かっている途中で、家のほうに兄さんとすぐに帰ろうとしたのが間違いだった。 兄さんが私がまだ転移魔法を使えないのを考慮して、魔法陣を出した所に何故か狙ったかのように魔物が来たのだ。 しかもその魔物は観察した結果、迷宮にしかいる筈の無い、主というオプションもオマケ付だ。 だからこそこの魔物を転移させたら駄目だと思い、魔方陣から咄嗟にでて攻撃を仕掛け魔物を引きつけたのだが、既に転移した兄さんはここの座標を登録していたので、すぐにわたしを助けにもう一度転移してくるかと思ったが、いつまでも持ちこたえても来なかった。 きっと魔力が足りない所為で転移できないんだ、きっと、きっと――だがどれも自分の考える理由で論破される。 もしかして見捨てられたの? そんな事も思い浮かべるが有り得ない。
そんな事を考えてしまった所為で迷宮の主、淵底の騎士の剣技を耳元をかすめる。 こうなったらと思い、兄さんにこっそりと埋め込んでおいた魔石で兄さんの状態を見ると、恐ろしい事に死に掛けていた。 兄さんの俗に言うステータスは危険信号の真っ赤な状態で点滅しており、わたしがもしもと言う時のために埋め込んだこの世界で最も硬い物とおなじ強度を持つ魔石は傷が付いてしまい、兄さんのステータスにバグが発生している。
この魔石を傷つける事が出来るのは神々でさえ生成するのは不可能、その絶対の情報が余計にわたしを焦らせる。 考えるのはどうやって家まで短時間でたどり着くか。 この森の魔物は恐ろしいほどに強く、S A B C D Eで分けて、Sが武神の生成できる武具を千人が装備して挑み犠牲無しでは敵わないほど強いと言うならば、基本森の入り口から家までがA、そして迷宮の半径百mの範囲内が単体だけでもSと断言してもいいほどだ。 そんな魔物の猛攻を耐えながら自転車で家から迷宮まで坂になっているのを下っても一ヶ月かかる程距離があるのをどうやって移動するかだが――
「兄さんの転移魔法を覚えることの出来るレベルまで上げるのみかな!」
レベル(魂の強度または、個人の能力値の高さを示す)を上げるため淵底の騎士の首を切り落とし、一瞬で再生する直前に炎と土の魔法を併せて爆発魔法を生成して、淵底の騎士の血肉を一切残さないように何度も魔法を使い、跡形も無く消し去る。
レベルが上がる感覚が確認せずとも分かったので、そこら辺にウジャウジャと集まっていた千匹以上の魔物を魔剣を出し、一気に消し去る。 だが、流石は兄さんだと思い知らされる。 まだ兄さんのレベルまで全く届かない、それどころか転移魔法を覚えるレベルまで全然足りない。 これでは拉致が明かないと思い、魔力を全く使わずに済むナイフを億を超えるほど多量に生成し、致死性を高める。 致死性を高めただけなので、絶対に一発で仕留める事の出来ない魔物はいるだろうが、別にこの森の魔物を殲滅する気は無いので、これだけにしておく。 そして一気にこの森の魔物全てを拘束魔法により五秒間動けなくしその間に、魔物のいる座標を徹底的に指定しナイフを全て放つ。
そして恐ろしいほどの吐き気を催す事になり、さらには体中が苦痛。 意識を手放しそうになるが、必死に押さえ歯を食いしばる。 一分だった、その一分が永遠に感じられるほど苦痛で全く息など出来なかった。 だがこれで転移魔法を覚えられたので、倒れそうになる体を剣を杖のようにして持ちこたえすばやく家へと転移した。
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目の前に広がる風景は信じられない物で……いや違う、わたしの周囲全てだった。 木々は燃え盛り、火の手はいっきに森を焼け尽くしていく。 家を境にして木の焼け具合が違うが、今はそれを気にしている場合ではなかった。 お母さんは多量の血を流して倒れており、治癒術をするためサーチを掛けるが、頭に出来ませんの文字とピー!と言う耳障りな警告音が響く。 それの意味は……死だった。
愕然をしたと同時にまた警告音が響く、荒くなる息は恐怖しか意味していなかった。 目の前には緊急時用として表示されるようにしてあるタブが存在し、目の前がぼやけながらもそれを確認すると、下枠には二つ小さく death……そしてもう一つgiveup、と。
お母さん、お父さんと順に転移して二人が持っていた白の刀と黒の刀を手に持ち、お父さんの目の前にいた男の腕を肩の部分から切り落とす。 男は私の存在に気が付いていなかったようで腕を切り落とされた後に戦闘態勢になったが遅い。 構えた水を纏う剣ごと切り、あらゆる部位をスパスパと切り刻んでいく。 その度に多量の血がわたしに被ろうとするが、それを許さず火の魔法により蒸発させる。 兄さんのところへ行かないとまずいと思い、男の体全てを刻み、転移により兄さんの所へと移動した。
行く前に男が最後まで悲鳴の声一つ上げなかった事に驚き、異様に感じた。
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兄さんの所へ転移した途端殺気が感じられたので、咄嗟にそちらへと斬撃を飛ばす。
スパンッと何かが切れる音がする。 一体何度目だろうか、いくらなんでもこの世界の物は脆過ぎるでしょう。 そんな事を考えながら振り向くと、そこには切れたロングソードをニコリとしながら見つめるフィーンがいた。 姿こそ違うが、雰囲気ですぐにフィーンだと理解できた。
やっぱりかぁと思いながらも、白刀をヒュンっとフィーンの方に向ける。
「わたしの兄さんにその穢れた剣を向けないでくれる? フィーン」
「リィン……わたしにどうしてそれを向けるの?」
フィーンは言葉で人を限定的だが惑わす魔法を常に行使している、そのためフィ-ンから意識を常に外していなきゃいけないのだけど、兄さん程のレベルとなると逆にその効果は反射させてしまう。 さらにフィーンは兄さんよりも何倍ものレベルを保持しているので、それは更に反射されその矛先はわたしへと向かった訳だ。 今思えば何故あの程度でフィーンになびいたのかと疑問に思ってしまう。 わたしがフィーンに刀を向けているのに驚いているのはそれが理由。 まぁ驚いてる理由は事実他に在るのだけれど今は割愛しておく。
「リィン……わたしは大丈夫だから逃げて、お願いだから」
兄さんはわたしのことを心配しているのだろうが、それを無視し兄さんの倒れこんでいる場所に魔術を展開し、一歩も出せないようにする。
「さぁ、フィーン?わたしと踊りましょう」
「ええ、紅く染まりましょう!」
先に動いたのはフィーン、喋っている間に精製したであろう剣をわたしに振るってくる。 剣をもう一度切ってしまおうと思い、白刀と黒刀に純度の高い魔力を込め、初めて行う事なので試しに五発程度魔力の付与された斬撃を放つ。 そこで慢心せずに黒刀をフィーンのいる方向へと掲げ、込めた魔力を一気に放出した後、黒刀をおろし白刀を掲げる。 刀の先端に魔力を込めて水属性を付与させ放つ。 水の魔弾は魔力のある所へと分裂して向かうようにしてあり、一斉に分裂してここら辺一体が雨が降っているときのように湿気が生じる。 そこに斬撃を避けたのかフィーンが来たのでまだ魔力の篭っている白刀で迎え撃つため腰を屈む様に少し曲げる。 そして剣と剣が交じり合い、また剣の切れた音がすると思ったが馬鹿正直にフィーンは突っ込んでこず、自分の腕と剣に風魔術を付けて刀の柄を狙って剣を振ってきたので、咄嗟に斬撃を少しの刀の振りで放つ。 轟音がし煙が立ち込める。 斬撃を放った先はよく物を燃やした後の肥料用の灰があり、辺り一面が一気に灰色になりしかも灰が飛び散っているので、目を開けて先を見れない。 腕で目を覆うようにしていると、殺気。 すぐにその方向へと刀を十字のように組み防御する、ガキンッと響く音は金属が交わる時に起こるもの。 目を薄ら開くと、神々しく感じる剣が見え、思わず息を呑む。
「こんな状況から防御を一瞬でするなんて思って無かったわね……」
「わたしとしてはフィーンが神酷死石を素材にした剣を持ってるなんて思って無かったわ」
神酷死石はお母さんが昔お父さんと迷宮の最上階と最下層に行った時手に入れたと言う、真っ二つに分かれていた本を一冊の本にしたことで分かった鉱石で、これを素材にして武具を作ると神さえ殺害できると書いてあった本で、二人曰く存在しない鉱石だったらしい。 だったと言うのは、一人の新人冒険者が銅鉱石を手に入れてくると言う下級採取クエストで、見つけてしまったからだ。 詳細は分からないが、今は最重要中枢都市の王様が許可をしないと預け入れが出来ない保管庫に全て入れられたそうだったが……。
「あははっ、今はそんなに貴重な鉱石じゃないのよ?だって――」
フィーンの言葉の意味が瞬時に理解でき、寒気がし息がし辛い。
「――創造神様が直々に名前まで挙げて言ったのよ?エン・ミナヅキを殺せって、ね。 そしてスズ・アマネと姉のユキ・アマネを保護しろってのもね。
でも手違いがあってユキって子……自殺させちゃったわ」
歯を噛み締め、怒りを露にわたしはし、次には魔法陣を広範囲設定にして展開し、魔法を詠唱無視で発動させる。
「死ね!消えろおおおぉぉぉぉぉ!」
魔法陣を発動させた場所はさっき水の魔力を放射した場所。 そこに刀の残る魔力を全て雷属性とし、魔法陣の中に放つ。 その瞬間バチバチと激しい音。 魔方陣の中は見た目は綺麗に、だけど中に入ったら最後、水の放射した魔力は純度が恐ろしく高く人の体に染み込みやすい。 そして放った雷の魔弾は水属性に恐ろしく引き付けられ易く、つまりこの魔法陣の中に入ったら最期感電死。
だけど使用時間に比例して根こそぎ魔力が取られていくし、削れる所は削らないとどんなに強くレベルが高くても恐ろしいほどに疲れてしまう。 今の憶えたてのわたしでは使用時間にも威力に範囲にも問題がありすぎた、だけど流石に無駄口を叩くフィーンは焼け焦げて死んだだろうと思い荒い息になりながらも、いた場所を見つめると。
「はぁっ……はぁっ……」
「あれぇ?その程度で御終い?わたしの剣の素材が分かったからにはもっと恐いものを仕掛けてくると思ったのになぁ、でもリィンったら魔力の保有量少ないし体が弱いから息も上がりやすいから仕方ないよねっ。 あはは、リィン顔が真っ赤よ?なにか気持ち良いことでもあったの?」
「なん……で、なんで……!」
「全くリィンは、頭に血が上がりすぎよ? そうね、一回戦いなんか止めましょう? ほら武器なんか下ろしてしまいなさい」
フィーンが訳の分からない事を言うものだから余計に頭に血が上り、無鉄砲に刀で魔力を込めた斬撃を滅茶苦茶に放ちながらフィーンに向かっていく。
「だから……言ってるでしょう? 武器を下ろしたほうがいいって」
フィーンは微かに微笑み、次には向かってきていた斬撃を全て消滅させる。 次にはフィーンはわたしの後ろに瞬時に立ち、わたしを地面に倒し、腕と足を拘束する。
「痛っ……!」
刀は腕を伸ばしても手が届かない所に飛び、そもそも腕、体が全く動かせない。
それを良い事にか、フィーンはわたしの首筋を舐めたり胸を片手で掴んで来たりする。
恐怖からか声が出ないわたしにフィーンはクスクスと笑いながら耳元で話しかけてくる。
「保護なんて言ってるけど別に傷を付ければ何しても構わないのよ……意味、分かるかしら?」
「つっーーーー!?」
「ふふっ、そんなに体よじらせて……嫌なら呼んでみたら? ボロボロの愛しのエンを」
呼びたいけど、声が出ない。 それに兄さんを囲う魔術の解除はわたしが兄さんを呼ぶ声、今解除してしまったら確実に兄さんは殺されしまうと思い、出来ない、出切る筈が無かった。
フィーンは魔法の解除条件が分かっているようだから、こんな事を言ってくるんだと分かっているから。
「嫌、よ!」
恐怖を振り払い絞りきるかのように言った言葉の次には、腕に激痛。
首をググッとまげると、そこには離れ離れになった腕が。 急いで治癒魔術を行えば再生は可能だが、魔術、魔法は必ず小さな動作が必要なため、体の動きを封じられているため出来ない。
目の前が霞む中、ボロボロと泣き嗚咽を流しながら言ってしまった。 まだ九歳の少女には、あまりにも背負う物が大きすぎた。
「兄さん……助けてよ……!」
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「わたしの妹に触れんなぁ!」
その声とともに爆音。 わたしの体は思いっきり吹き飛ばされるが、兄さんに抱きとめられ浮遊感が無くなる。 兄さんは所々服が破けていたが、傷は一切無くわたしが気絶する直前ごめんね、よく頑張ったよ、と言ってくれた。
◆ ◆ ◆ ◆
「あーあぁ、エンが来た所でエンを殺した後リィンをボロボロにして泣き叫ぶリィンが見たかったのになぁ」
その発言に若干頬が引き攣るが、終始わたしは笑顔でいることにした。
「まぁそう言わないでさ、ずっと動いてなかったからちょっと体が鈍ってるんだよ。 ちょっと付き合ってくんない?」
「まぁ良いわよ――」
フィーンが乗ってくれたのでベルトに挿していた短刀を抜き、風魔術を靴に付与、炎魔術を短刀に貼り付けてから一気にフィーンとの距離を縮める。 フィーンは焦って大剣を出現させて来たので、ガンッと言う音が響く。 それと同時に剣と剣の間から強烈な発光、わたしは分かっていた事なので目を閉じていたがフィーンは視界を一時的に封じられる。 そしてわたしは設定していた発光時間を心の中で数え終わると、急いで後方へと飛びのく。 次の瞬間近くにいたら鼓膜が破れていただろう爆音。 そして近くにいて尚且つ生身ならば焼け死ぬほどの熱風。
煙が立ち込め居場所が分かり辛いが、人影が見えた瞬間、一気に自分の踏んだ土に設置した風魔術を発動可能状態にさせてから、魔弾を自分の行った道筋へとなるべく威力を小さめに放つ。
魔弾が着地する前に風魔術を発動。 風魔術は竜巻のような動きでその場に留まる、なので魔弾は全て上へと飛ぶ。 そして風魔術により煙は消え去り、フィーンの姿を捕らえる。 その直後フィーンは既にボロボロだと言うのに、大剣……あれはクレイモアだろう、クレイモアを片手で構えて一動作、直後魔法が発動される。 わたしのいる地面が一気に盛り上がり覆いかぶさろうとする、それを短刀で切るが、土の中には氷の魔術があり、なにかの衝撃で発動の仕組みらしく、一気に体が凍らせられるので、短刀の炎の魔術を分解。 そして自分を巻き込んでのプロミネンスのように大火炎を発動させる。 どちらも互角の魔術でトーンと言う音と共に消滅。 その間フィーンは何もしていない訳でなく、魔術が消え去った直後に魔法が発動される。 フィーンの方を向くと、フィーンが全く見えないほどの密度の刃が壁のようにあった。 それは一気に一直線上にわたしに向かって飛んでくる。 リィンが飛ばしてきた魔弾のようにそれは全て属性が違うため打ち消しきるのは不可能と思い、時間軸を出来るだけ小さい範囲で歪め、是分の逃げ切れる範囲で刃を遅らせる。 でもリィンがいるのを思い出し、急いで全属性の壁を用意する。
魔法同士が消える前にリィンのところへと行き、リィンを魔術で包み込む。 これで大丈夫なので短刀を強く握り締め、残り時属性になった所で一気に走り出し、フィーンの所まで時間軸のずれを利用し、瞬間的に行く。
「なっ!?」
驚いたフィーンはクレイモアをすばやく振ってくるが短刀で受け止め、炎の魔術によりクレイモアを熔かす。 フィーンは手が解ける前に離した様で火傷だけで済んだようだ。 そして最後にと言わんばかりに私の真似をして自分を巻き込んでの|光の矢の雨《ライトアロー+◆◆レイン》を放ってきたので、打ち消す魔法が存在しないので、フィーンを突き飛ばす。わたしはギリギリで魔法範囲外に出れなかったので倒れたまま上を向き、短刀でとにかく斬撃を繰り出し致命傷になる所だけを集中して消していくが、激痛により集中力が乱れ、心臓間近に光の矢が刺さるなどしてしまう。
この魔法は自分が殺した生命の数だけ矢が降り注ぐと言う物で、今のわたしには恐ろしい物で、いつまで経っても降り止まない。 いい加減多量出血死するよ、と思いながら脱出を試みようとするが、既に足に何本も刺さって動けず、頭の周りにも多量の矢が隙間無く刺さっており、立って飛ぶなりしなければ逃げ出せない状況だった。
遂には腕に矢が何本も刺さり、矢がどこまで刺さってくるかと運に身を任せることになった。 運がいい事にあまり体には刺さらずに済んだが、最後に一本矢が落ちてきて、それは人ほどの大きさで、交わせるわけが無かった。 それが刺さると思い覚悟して目を瞑っていると、妹が助けに来てくれたときと同じようなスパンッと言う音が響く。
本日二度目~と軽く思いながらも目を開くとそこには、涙をボロボロと零しながらわたしをゆすり何かを叫ぶフィーンの姿があった。
そしてわたしは治癒魔術を必死に唱え、腕からぼたぼたと血が流れるのを気にせず腕を上げることで一動作。 そして泣いているフィーンに治癒を意識失いかける直前で行った。
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