04 家族~幸せから
そのうち転生前の事も書かなきゃなー
「切り込みが浅い!」
「つっ?!」
右手用の木刀で母さんに向かって斬撃を放つが、逆に跳ね返されてしまい斬撃を避けた直後、距離を縮められ首元に木刀が突き付けられる。
「技に過信してるとこうなるって分かった?」
「……はい」
母さんに敬語なのは、稽古の最中は自分の身内であろうが敬いなさいと言われたため。
「よしよし!それが分かったのなら今日はもう大丈夫そうね」
母さんは嬉しそうな顔をしわたしの頭をわしゃわしゃと撫でてくる。
稽古はまだ一時間程度しか行っていないが、内容がハードなため母さんは早めに切り上げるようにしている。 流石にわたしからしても母さんの状態が大丈夫か気になるため、それにこの体ではあまり負担が掛けられないので不満は無い。
「じゃあヴィンはまだ帰って来ないしお昼にしましょうか」
「え、待とうよそこは」
母さんは冗談よとクスクス笑いながら言っているのでつられてわたしも笑う
父さんは今森へと魔物の狩りに行っているので、今日は母さんに稽古を付けてもらっている。 母さんの時は右手で木刀を持ち稽古をし、父さんの時は左手で木刀を持ち稽古をする。 わたしの転生前の記憶は四歳の頃に少しずつ思い出すことになったので、幸い右利きだった間隔は無かったので、今や両利きになったため、最近では両手に木刀を持って稽古をさせられるので少しはやりやすい。
ちなみに一人称が自分からわたしになったのは母さんと父さんの二人がわたしと言うので、それにつられて行っている。 今となってはわたしと言う方が言いやすい。
「ただいまー、今日の稽古は終ったか?」
「お帰りなさい、今終わった所よ。 あなたも帰ってきたしお昼にしましょうか、リィンもそろそろ起きる頃でしょうし」
「じゃあわたしも手伝うー」
「あらあら、今日も手の込んだ料理かしら?」
「エンの作る料理も中々の物だから楽しみに待ってるよ」
「待っていないで川で水を汲んで来て下さいな」
「りょーかい」
「じゃあエン、今日の主食は任せるわ」
「分かったー」
取りあえず家の中に入り調理場に立つ。そのまま何を作ろうかと考え、冷蔵庫のような冷えた箱に入った材料を見てイタリア風にリゾットを作ってみようかと考えるが止めて、魔物の肉が多く入っているので肉料理にしようと考える。
豚肉に似た食感を持つ魔物の肉を取り出し、長方形に薄く広げて直径一㎝程の丸い棒にくるくると巻き棒を抜く。
名前は違うが材料を用意し、小麦粉を肉に付けてパン粉は無いのでそのまま油で揚げることにする。
表面に薄くと焼き色がつけたので、菜箸でとり、肉の中に母さんが炊いておいてくれた米を肉の中に詰めてもう一度揚げる。
ついでなので昨日作っておいた食パンを小さめの正方形に刻み少しだけ揚げる。
偽クルトンは出来たのでサラダを作っている母さんにトッピングにと渡しておく。
電子レンジが欲しいなーと思いながら、出来た肉巻き飯三本を四等分にして皿に置く。
「母さん出来たよー」
「じゃあ出来たの運んでおくから、ヴィンが汲んできてくれた魔水(汚れを一切無くす。洗剤が溶けた水のような物、飲めません)があるから洗いものしておいてくれる?」
「はーい」
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この世界に転生して既に六年がたった。 記憶を思い出した四歳の頃の始めは、灯りや調理場でコンロが使えたので文化レベルが高く日本かなーとおもったけれど、実際にはそれらは魔法、魔術によるもので電気等を使っている訳ではなかった。
わたしが現在住んでいるところは森林の中で、ひっそりと家がたっている。 そのためここにいて父さんと母さん、それに妹しか人の姿は見た事が無い。
妹はわたしが二歳の時に生まれた今は四歳となり母さんと父さんにわたしと同じように稽古を付けてもらっている。 妹は四歳になるまであまり癇癪など起こしたりせず落ち着いた子だったが、四歳になった数日後、急に当たり散らすなどしだし、母さん達にはわたしのお母さん何かじゃないなどもヒステリックに叫んだりしていたのが今でも鮮明に思い出せる。 その時の母さんと父さんはわたしに大丈夫よなどと言って妹に優しく接していた。 暫く経った後妹は落ち着きを取り戻し、わたしと同じように稽古を付けてもらう用になった。 結局言葉の意味が何だったのか分からなかったけど、取りあえず良かったと安堵している。
母さんと父さんについては謎が多いが、分かったのは母さんが元最高ギルドランカーで父さんは母さんのいたギルドのマスターと言う事だった。
その際聞いた話ではギルドの種類や内容について、ギルドと言うのは組織化している物を大まかに纏めて呼んでいるらしく、冒険者、騎士団、商業、開拓、神聖、などがあり、ギルドマスターはその全てのギルドマスターとの会合が年に一度あるので大変だと言う事らしい。
ちなみに元冒険者ギルドマスターの父さんは母さんと結婚するためギルドマスターの座を仲間に押し付けて来たらしい。 今住んでいる場所が何故人目の付きにくい森林の中と言うと、母さんと父さんは恨みを買う立場だったため、いちいち対処するのが面倒になりここに移り住んだということだ。
もう一つ父さんから聞いたのだけど、母さんは本当は子供が産めない体で、わたし達が産まれた事は奇跡だと言われ、生まれて来てくれてありがとうとも言われた。 今更ながら子供に話す内容で無いと思いながら、こちらこそ産んでくれてありがとうと言っておいた。
父さんは子供のように嗚咽を漏らしながら泣いてしまったので、何となく父さんを抱きしめた。
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