03 転生~最悪だけど最高
最悪=不幸=▼
最高=幸せ=▲
今更ながら書くよりも読む方が楽しかったという落とし穴。
「あなた……この子は――」
「大丈夫だよ」
妻は不服なようだが、わたしだってこの事実から目を背けてしまいたい。 だがようやく、いや――奇跡のように妻が産んでくれた子供を手放すなんて絶対にしたくは無い。 暫く黙っていると妻は観念したのか、違うな、妻もわたしと同じ気持ちなのだろう。 自身に抱かれた小さな弱々しい赤子を愛しいように見つめている。 別に難産だったわけではない、生まれてすぐ赤子が喘息の発作を起こし、息をしてないと気づいた時には、魔力を十分の九をも使う癒しの魔術を使わなければならない位危なかった程だ。
「そうだ、この子の神授(スキルや称号などステータスやどんな職業に適正があるのかなどが分かる)を見てみようか」
話を逸らすように言ったが、わたし達の子供だからこそ嬉嬉として見ようとしたが、妻の顔が一変して暗くなってしまった。
「どうかしたのか?」
「もう……見たわ」
なら何故そんな暗い表情になるのだろうか、妻の方が神授をより性格に存在させる事ができるがこの様子では無理だと思い、わたしが妻が抱えている子供の頭に手をかざす。 改めて赤子はとても小さいと思う。 わたしの手のひらで頭がすっぽり収まってしまうほどだ。
そんな事を感慨なく思っていると、リーンと鈴の音色がなり、神授の結果が出たことを知らせる。
さっそく見てみるとそれには――
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ここはどこだろう、目は開けられず光も入ってこない暗さだ。 だけど不思議と恐怖など感じなかった、寧ろここにいることが心地良いと感じられた。 時々聞こえてくる安心感を与えてくれる声はなんだろう。 声の主のもっと近くへ行きたくて、闇から抜け出すようにひたすら小さな光る場所へと進んでいった。
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リーン――そんな鈴の音に気がつき、ゆっくりと目を開けるとそこには二人の若い夫婦のような姿が見えた。 その二人の表情はわたしに向かって微笑んではいたが、どこか今にも泣いてしまいそうな……哀愁の漂う表情を向けていた。
わたしはこの向けられた表情を見たことがある……ああ、どうしてだろう、思い出さなきゃいけない筈なのに、思い出すことができない。 そのことに不思議と哀しくなり涙がでてきてしまう。
二人はわたしを痛いくらいに強く抱きしめ、唯々大丈夫だよ、大丈夫だからと自分自身にも言い聞かせるように言ってくれた。
わたしは安心した所為か、まどろみの中へと引き込まれる。 その直前二人は――「必ず、この命に代えても守り抜いてあげるから」と、決意をするように呟いた。
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神授の鈴の音色が聞こえたのか、子供は目を覚まし今だ眠たそうな目でわたし達を見てくる。だが子供とは敏感な物で、わたし達の顔をじっと見ていると声を上げずに涙を流し始め、それはどのような意味をもっていたのかはわからない。 だがその涙はわたし達を決意させるには十分すぎる物だった。 妻も同じ気持ちな様で、「あなた、この子だけは命に代えてもわたしが守り抜くわ」そう言って来た。
妻は元最高ギルドランカーでたった一人で迷宮の最下層、最上階直前まで行ってしまう位の実力を持っている。 だがこの子を狙ってくる者はその程度の強さではないだろう、だからこそ。
「わたしだってこの子を守り抜いて見せるさ」
これには妻は驚かなかったようで、クスクスとわたしに笑いかける。
「ええ、必ず二人で……でもこの子にも頑張って貰わなくちゃね」
「ああ、親馬鹿なんてギルドメンバーに言われたくはないからな」
「頑張りましょうマスター」
「ああ!」
そんな会話に二人で笑いながら寝てしまったこどもに微笑む。
決意をして。
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編集三月九日
編集もうしたくないなぁーなんて