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与えられた、チャンス?

評価いただけると嬉しいです。



優音は犬恐怖症になった。


【奇跡の始まり】



それから、俺は家の外に追い出されてしまった。冬は寒いし、夏は熱い。でも、優音の側にいれないことが一番苦しかった。

あんなに遊んでくれたのに。あんなに好きだって言ってくれたのに。どうしてこんなことに………。


優音は、それこそ俺を見てパニックになることはなくなったが、近寄ろうとすると脅え、逃げた。


離れたところから、


「スー、ごめんね。」

なんて目に涙を溜めながら言うもんだから俺まで泣きそうになった。

それをごまかそうと、俺は

「くぅーん…」


と小さな声で鳴いた。


それから一年が経ち、今に至る。


優音は相変わらず犬を怖がった。


でも全く状況が変わらなかったわけではなかった。

犬は犬でも俺には近付けるようになったのだ。まださすがに触ってはくれないが、優音にしたら大進歩だった。やはり以前までの俺らの関係があってこそだと思う。

お互い小さい頃から一緒で、時には一緒の布団で寝たりもした。 本当に仲良しだった。きっとそのおかげだったのだろう。


しばらくはその大進歩に喜び、浮かれていた俺だったが、それから一週間。一ヶ月、二ヶ月と経っても、それ以上俺らの距離は縮まることはなく、結局また落ち込んでしまうのだった。



そんな中、あの日はやってきた。


いつものように外の犬小屋で、俺は眠りに就こうとしていたのだが、なかなか寝つけなくて考え事をすることにした。

でも考えることと言ったら優音のことばかり。


(でも俺が焦っても仕方ない。いいじゃないか。まだ時間はある。ゆっくり触ってもらえるようになればいい、、、)


そんなことを考えているうちに、俺は眠りに落ちた。



俺は夢を見た。


「スーよ、スー。スー。」

誰かが呼んでる??


「スー。」




(……………………………………誰このおっさん。)



俺が目を開くとそこには知らないおっさんがいた。


(まさか泥棒!?)



「わう!わうわう!」



俺はおっさんに向かって吠えた。

するとおっさんは、

「泥棒ではない。周りを見てみろ。

と言った。


(周り?)

言われた通りに周りを見回すと、見たこともない、というか、よく分からない空間に来ていた。真っ暗で、何も見えない。


「わふ…(ここ……、どこ?)」

「ここの説明は置いとけ。わしは私はお前に伝えることがあって来た。」


なぜかこのおっさんには俺の言葉が通じているらしい。

俺は吠えるのをやめた。


「わうー?(伝えたいこと?)」


「そうだ。」



(はて?なんのことだ?)

怪訝な顔でおっさんを見つめていると、


「単刀直入に言う。スー。お前は死ぬ。」



(………………。はい?)


「物分かりの悪いやつだな。お前は死ぬ。一週間後にな。」

おっさんの頭を疑いつつ、俺は聞く。


「うう〜(俺が死ぬって?何を根拠にそんな。)」


「まぁ信じるか信じないかはお前の自由だ。そんでな、もう一つ言わなきゃいかん話があるんだ。こっちはいい話だぞ。」

優音には触ってもらえないままで、しかも一週間後に死ぬなんて言われて…


(この状態でいい話なんて言われてもな…。)


「わん(何?)」


「わしらはな、死を一週間後に控えた者たちの前に現れて…、と言っても、当選者だけだがな。」


「くぅ〜?(当選者?)」


「そうだ。当選者だ。一ヶ月に一人、いや、お前の場合は一匹だが、選ばれる。その者の元へ行き、一つだけ願いを聞いてやるのだ。」

「わんわん!?(願い!?)」

「そうだ。今月はお前だ。スー。」


願い。そんなもの、俺には一つしかない。


「わん。わんわんわう〜。(優音を、優音を元通りにして、また触って、抱き締めてほしい…)」


もちろん、これに決まっている。

だがおっさんは困った顔でこう言った。

「いや、それは無理だ。人の気持ちを帰るのはわしらには簡単なことだが契約に違反することになる。」


「きゅぅ〜ん。(そんなぁ…。)」


「そんな顔で見るでない。だがどうしたものか…他に何かないのか?餌いっぱい食べた〜いとか、、、」


「わん!!(ない!!)」


「そうか…。ではお前に力を授けよう。それを使い、自分でどうにかするがよい。」


「(わふ?)力?」


「そうじゃ。ま、諦めず、頑張れよ。そして、忘れるな。タイムリミットは一週間。一週間経てばお前は死ぬ。あ、このことは誰にも言っちゃ駄目だからな。言ったら一週間と言わず、その場で死ぬ。じゃぁな。」







眩しい太陽の光で俺は起きた。

(なんだったんだ?夢???)

辺りを見れば、見慣れた自分の家。

(やっぱ…夢??)


(そうだよな。にして変な夢だったなぁ。疲れてんのかな?俺。犬なのに。)



「スー。」

(あ、優音の声。)


「おはよう。スー。」


少し離れたところでにこりと微笑む優音。

(夢と思おう。これから長い時間をかけて、優音に触ってもらえるようにしていけばいい。)

とはいえ、この距離感がつらかった。

「おはよう、優音。」

俺はいつものように鳴いた。


優音の動きが止まった。


「どうした?優音?」



目を真ん丸くさせる優音。

「今の、、スーが言ったの?」



(…………え?)


「おはよう、って、スーが言ったの?」


(ま…さか。まさかまさかまさかまさか。)


「俺の言葉が通じるの?優音。」



俺の問いに、ぎこちなく頷く優音を見て、俺の予想は確信に変わった。



(ああ、あれ夢じゃなかったのか…………って)


「ええええええええ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!??」










(突然与えられた最後の、最期のチャンス。

で、でもどう使えって言うのさおっさん!!!!!!!)



読んでくださってありがとうございました。

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