表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
男女比1:129の世界だけど、普通に暮らせてます。  作者: 銀河猿


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
2/2

プロローグ後編

「――ひ、ふぅ、ひ、ふぅ……ッ!!」

私立純蓮高校、西校舎の女子トイレ。

個室に飛び込み、鍵をかけた途端、結城菫ゆうきすみれ)は胸を押さえて激しく過呼吸を繰り返した。

その顔は熟しきったトマトどころか、今にも沸騰して頭頂部から蒸気が出そうなほどに紅潮している。

「雄介様が……男が、私に微笑みかけてくださった……! 『雲一つない青空だよね』って……! ああ、あれは実質『僕の心には君しか映っていない』というプロポーズでは!? いや、私の髪型を褒めてくださったのかしら!? 婚姻届、婚姻届はどこ!?」

個室の中、菫は猛獣さながらに身悶えながらも、その手だけは精密機械のように動かしていた。「雄介様の御言葉」と表紙に引かれたメモ帳へ、今日の会話ログを狂ったように書き殴っていく。

だが、その時。

コンコン、と冷徹に個室のドアが叩かれた。

「――そこまでになさい、結城さん。声が外まで漏れていますよ」

冷たい声の主は、今月の月末試験暫定1位、つまり所雄介の『正妻席』に最も近い位置にいる胡蝶佳澄(こちょうかすみ)だった。

ドアの向こうから、冷酷な宣告が響く。

「純蓮高校の校則第4条。男子生徒の前、および敷地内において、淫らな妄想を口に出し、または淑女として不適切な挙動を見せた者は、生活態度点は大体マイナス50点と言うところかしら。…… 今の声を私が風紀委員会に通報すれば、あなたの来月の1組(雄介のクラス)残留は危ういわね?」

「っ……!!」

菫はガタガタと震え、慌てて口を両手で塞いだ。

来月の1組枠は、わずか29席。

成績が優秀なだけではダメだ。日常の全行動を「淑女」として完璧に律し、ポイントを稼いだ者だけが、所雄介のクラスに入る権利(合法的に同じ空気を吸い、視界に入る権利)を得られる。

もし、ここでハメを外して減点され、2組以下に落とされれば――来月の1ヶ月間、雄介の顔を見る資格すら失う。それは彼女たちにとって、死に等しい。

「……し、失礼いたしました。取り乱しましたわ。私はただ、雄介様の健やかなる体調を心配していただけでしてよ」

「よろしい。お互い、月末試験までは【淑女】でいましょうね。……まぁ、今月も1位は私ですけれど」

ドアの向こうで、ヒロイン候補の少女はフッと妖艶に微笑む。

その脳内では、結城を遥かに凌駕する『雄介との新婚生活(子供は3人、一戸建て)』の妄想が、凄まじい処理速度で演算されていた。

彼女たちが淑女でいられるのは、理性が高いからではない。

欲望が深すぎるがゆえに、完璧に自制しているだけなのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ