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『神として降臨したら、生贄少女にドラゴンと勘違いされた件』

作者: 紗月
掲載日:2026/05/10

気軽に読んでもらえるとうれしいです。

三十五歳、独身。男。名前は朝倉 悠真。

某ゲームメーカーで働いていた。

業績が悪化する度に、ホラーゲーム、狩りゲームがヒットするなど、

神風が吹くと揶揄された、あの会社だ。

そこで俺は企画マンとして、世界を構築するというゲームの企画を何度も提出していたが、

会社の偉い人達は、その都度、俺の企画書を投げ捨てた。

それでも諦めることなく、俺は残業して企画書を修正し続けた。


そんなある日…。


気づけば俺は、真っ白な空間に立っていた。

自分の肉体を感じることもできない。

ただの精神的な、概念的な存在なのだと自覚した。


「……え、死んだ?」


そう思った瞬間、俺は全てを理解したような気がした。

死んだのではなく、神になったのだ。

この何もない無の空間に俺は世界を創造することができる。


まず海を作り、6つの大陸を作った。

そこに自分と似た種族の人間を作り、そして、エルフ、ドワーフなど、

どこかで読んだ小説に出てくる種族も作った。

もちろん、魔獣なども作成する。


大地の神、戦の神など、それぞれを管轄する神をも作った。

俺が望むように世界を構築していく。

楽しい…ストラテジーゲームのようだ。

魔法や精霊の概念も入れる。

ファンタジー風の世界になれば、そう思っていたが、

予期せぬ出来事も起こった。

世界に作った記憶のない魔王が現れ、人類を滅ぼしてしまったのだ。


魔獣が強すぎたのか?

何が悪かったのかわからないが、一旦リセットすることにした。

世界を滅ぼし、また作り直す。


だが、何度やってもうまくいかない。

魔力が暴走し、凄まじい天変地異を起こす。

エルフとドワーフの戦争は当たり前のように毎回起こる。

人族は弱すぎて、すぐに滅んでしまう。


異世界から勇者を召喚してみるも、すぐに殺されてしまった。

過去に英雄と呼ばれた英霊を召喚しても結果は変わらない。


何度やっても世界は安定しない。

勇者は死に、国は滅び、文明は崩壊する。


これは無理ゲーじゃないのか?

いや、神である俺に不可能など存在しないはずだ。

どうすればよいかとしばらく試案する。



俺が世界に降臨し、直接影響与え、望むように流れを導いていくのはどうだろうか。

それには当然、メリットだけではなく、デメリットもあった。

受肉するということになれば、消滅してしまうリスクも発生する。

すなわち死だ。

能力もかなり制限されてしまうだろう。

しかし、それなりの能力は残るはずだ。

各管轄神の協力も得ることができる。


世界を安定させるには、この方法しかない。

そう結論づけて、俺はその世界に降り立ったのだった。



最初に降り立ったのは、薄暗い森の中だった。

鳥の声、風の匂い、土の感触。

すべてが新鮮で、すべてが懐かしい。


「…これが、俺の世界か」


まずは世界の状況を確認する。


ステータス画面を開く。

世界地図とそれぞれの地域の情報が網羅されている。

今、確認したいのは画面上部にある左端から右端まで細長く伸びているゲージだ。

ゲージの下には△のマークがついており、かなり左端によっている。

この△が右に行くほど世界が安定しているということであり、

左端にあるということは、かなり混沌側に近づいているということだ。


道は険しいがやるしかない。

とりあえず、この森から出ようと俺は川沿いに下流へと進んだ。

途中、人と出会っても怪しまれないよう俺はよくある旅人のような恰好をしている。



2日ほど進んだところで、魔獣が現れた。

巨大な猪型の魔獣で体長は4メートルほど。

口からちらちらと炎が漏れている。


ん?ボア系の魔獣など作成した覚えがないのだが…。

と少し悩んでいるとフォレストバーン・ボア(今、名付けた)が口から炎を吐き出した。

特に問題なくかわすことはできたが、

後ろに立ち並んでいる木々にぶつかり一瞬にして炎に包まれ次々と周りの

草木に燃え広がっていく。


「これは、この場所に生息するにはそぐわない魔獣だな…」


一刻もはやくこの魔獣をなんとかしないと大変なことになる。

森林火災は簡単には鎮火できない。


「削除」

俺はコマンドを入力するが、この魔獣には何も効果を示さない。

やはり、俺が作成したわけではないようだ。

自然発生的に現れたのか?


「仕方ない…」


俺はアイテムボックスからオリハルコンの大剣を取り出すと、

魔獣から放たれる炎の弾をかろやかに回避しつつ魔獣の首の下に入り込んだ。

そのまま、背負った大剣を振り上げ魔獣の首を切断する。

炎をまき散らしながら、その首はまるでねずみ花火のように宙を舞った。


結果、辺りは炎の海と化してしまった…。


「雨…雨がほしいな…。すごい豪雨の…。

誰の管轄になるんだっけな…」


悩んでいると昼だというのに、あたりが暗くなりはじめ、

ぽつりぽつりと雨が降り出したかと思えば、あっという間に雷をともなう大雨となった。


これは…グッジョブだが、雷はやりすぎ…。

炎は瞬く間に鎮火していくが、すごいどしゃぶりだ。

駆け足で雨宿りできそうなところを探す。

森の中で地面が露出して道のようになっている場所にでくわした。

右手の方から何やら複数の人の話し声がしたため、

後ろめたいことがあるわけではないが、近くの木の後ろに身を隠した。


「くそ、雨が降ってきやがった」

「これは、はやく持ってこいってことなんだろうな…。

急がないと村がどうなるかわからないぞ!」


二人の粗末な衣服を着た男が前後で駕籠のようなものを担いでいる。

縦長になっているので、日本でいう駕籠とは少し違うようだ。

中の人は椅子にでも座る形になっているのかもしれない。


どこに行くのか気になったので、気づかれないように後をつけた。


そこは森の開けた場所で切り立った崖に囲まれ袋小路のようになっていた。

正面には崖から突き出すように神殿のような建物が建っていた。

誰が立てたのかはわからないが、かなり古いもののようだ。


建物の手前、広場の中央に駕籠を置くと男たちは足早に立ち去ってしまった。

誰もいなくなったので、ゆっくりと置かれた駕籠に近づいていく。

窓があり、中を覗いていると小さな少女が俯き祈りを捧げいているようだ。

白いシルクの装飾の少ない簡素なドレスを着ている。

金色の髪は胸元まで流れていて顔はあまり見えない。


「何をしている?」


俺の声に驚いて、少女はこちらを見た。

青く、どこか緑が混じって見えるような、その瞳が驚愕している。

今にも殺される…そんな、何とも言えないひきつった表情をしていたが、

やがて覚悟を決めたかのように目を閉じた。


「この身を捧げます…」


少女はつぶやいた。


なんのことかと思っていると、雨は止み、辺りは一層暗くなった。

そして雷鳴が響き渡る。


何度か閃光が走ったかと思えば、いつの間にか、そこに青白いドラゴンが姿を現していた。


「生贄を持ってきたのであれば、お前はすぐに立ち去るがよい。命が惜しければな」

ドラゴンは言った。


なるほど、と俺はすぐに状況を理解した。

そのような儀式的な設定はしていないが、いつも自然発生的にいろんなところで起きる事象だ。

弱者の生き残り戦術なのかもしれない。


手のひらをドラゴンに向けて突き出し、息を少し吸い込んだあとに…言った。


「削除」


俺がコマンドを入力すると、ドラゴンの目は生気を失い、

地響きを立てながら崩れ落ちた。

そして、死体はそのまま消滅した。


「もう生贄になる必要はなくなったぞ。安心して村に帰るといい」


駕籠に向かって話す。

しばらくして、少女が駕籠から顔を出し、キョロキョロとあたりを見渡す。

そして、恐る恐る駕籠から出てきた。

鍵などをかけられて閉じ込められていたわけではないようだ。


「え?どういうことですか?

私を食べないんですか?

もう村を襲わないってことですか?」


見た目、中学生くらいの少女がずずいと俺に詰め寄る。

先ほどまでの怯えた表情は全くない。


いや、俺が村を襲ってたわけじゃないんだが…。


「どっちなんですか、ドラゴンさん!!」

「俺はドラゴンじゃないし…。ドラゴンはあそこで…」

と指をさしたが、死体は消滅した後だった…。


カッと少女が目を見開く!


「私、騙されません!

もう村を襲わないって約束してくれないと私、ここを一歩も動きません!」


いや、そんなことを言われても…。

ドラゴンは人に擬態したりするみたいだけど、

俺はドラゴンではないんだけどな…。

空を見上げながら、世界に安定をもたらすことができるのかと俺は少し不安になっていた。


そんな俺の不安をよそに空には晴れ間が徐々に広がっていた。


最後まで読んでいただきありがとうございます。


「この続きが見たい」「別の配信企画も読んでみたい」などあれば、ぜひ感想で教えてください。

★やブクマ、コメントなどの反応を、次の企画に活かしたいと思います。


5/11(月)の21時過ぎくらいに次の短編を投稿しようと思いますのでよろしくお願いします。

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