夢を掴む少年
「ねえ こんなところで 何してるの」
ここは 大きな街から 少し離れた道の端
普段は この辺りで 田畑を耕している人か
旅人が 街から街への移動をするときに 人が通りかかるくらい
そんな場所で 身なりの良い幼い少年が 一人で立っているなんて
あまりにも不自然だった
それに 彼は剣を握っていて その手はとてもボロボロで
この辺りに そこまで強い魔物は 出ないはずだけれど
それでも 少年が 一人でいるなんて
不思議に思っていると 少年が口を開く
「別に あんたに 関係ないだろ」
それだけ言って 少年は去ろうとしていたので 私は引き留めようとする
「その ペンダント 首から下げているやつ」
少年が 一瞬 動揺したのが分かる
「何処かの貴族か 騎士の息子なんじゃないの
わざわざ こんなところで 稽古をしているのか知らないけれど
街で 家族か他の騎士団の人たちが いくらでも練習相手になってくれるんじゃないの」
少年は 険しい表情を浮かべた
「だけど それじゃダメなんだよ だって…」
彼が言い終わるよりも先に 魔物が出てきて 私たちに襲い掛かろうとしてきた
「あんた 魔法使いだったんだな」
あっけにとられてしまった
大した魔物でもないのに 彼は大げさに悲鳴を上げて
かと思えば その場にしゃがみこんでしまうとは
魔物を倒したついでに 少年の手の傷も癒してやった
「俺さ」
少年が ぽつり ぽつりと 呟くように話し始めた
「見ての通り ものすごく臆病なんだ
街では あんたの言った通り 練習相手ならいくらでもいる
でも それじゃダメなんだ
いくら人間相手に 強くなったって
魔物を退治できないと 話にならない
俺は 跡取りなのに」
「跡取りってだけなら 別に 強いとか弱いとか 関係ないんじゃないの
あんたがするのは せいぜいリーダーとして 部下に指示を出したり
たまには 軍を率いたりすることはあるかもだけど
それでも 周りの人たちが 基本的には戦ってくれるでしょ」
彼は 確かにそうなんだけど と 戸惑った様子を見せながら言った
「俺は 自分の手で 自分の街を守れる人間になりたいんだ」
彼の手をよく見ると マメがたくさんできていて いくつかは既に潰れていた
そして そんな彼の 真っすぐな瞳を見て
私は一言 彼に伝えなければいけないと思った
「あんたなら きっと 誰よりも強くなれるよ」 と




