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ただ、みればⅰ

作者: 都築
掲載日:2026/08/09

Tinderで知り合った年下の売れていないインディーズバンド(オルタナティブ系)のメンバーと会った時の出来事。

私は人よりも音楽が好きで、音楽に救われていて、音楽に縋って生きていた。

だから恩返しがしたくて、音楽に関わる仕事を始めた。

音楽といっても幅広くあるけど、私は音楽が大好きで所謂インディーズバンドと関わる機会が多くあった。

バンドマンといえば昔の「付き合ってはいけない3B」に含まれていて、実際にその世界に入ると実感することが多くあった。

ただ、私は本当に音楽が大好きで、音楽を広める手伝いをしたくて始めた仕事だから、バンドマンと遊びたい、そういう関係になりたいとは一切なかった。だから遊んでいるバンドマンが不思議だった。音楽を真剣にやりたかったわけじゃないのか。女にモテたくて、女と遊びたくてやってるんだなと思った。だとしたら、どうしてフリーターのままバンドしているのかは分からなかった。

バンドマンに抱かれて嬉しがっている人たちもよく分からなかったし、それでファンの間でマウントを取り合っている女の子を見て馬鹿馬鹿しいとすら思っていた。どうせ売れないのに、どうせすぐ辞めちゃうのに、どうしてこんな人にそんなに自分をすり減ることを捧げられるんだろうと思った。

そのうち、遊んでいるバンドマンを特定したいと思うようになった。そうだ!マッチングアプリをすれば、知っているバンドマンも出るかもしれない!と思った。

そういうきっかけからTinderを初めてみた。噂には聞いていたけど、本当に無法地帯で、マッチした瞬間から「ホテル行きません?」と言われることが9割くらいだった。

そんな中、知り合った自称社会人バンドマンの話。


私は音楽が好きだからバンドをしているという言葉だけで興味を抱いてしまい、しばらくメッセージで会話をしていた。

それから直接会わないか?という提案をされてから仕事終わりに下北沢で会うことなった。

相手がやっているバンドが所謂オルタナティブ、シューゲイザー系統らしかった。

私はその界隈の知り合いや友人が多く、勝手なイメージで色白細身、黒髪マッシュの人が占めていた。

だからきっとそういうジャンルの人が来るだろうと楽しみにしていた。


当日夜19時新しくなった下北沢の駅まで待ち合わせ。

「到着した」とメッセージが届くも、色白細身、黒髪マッシュの人を探していたが見つからず。

面倒になったから電話をかけていいか聞き、許可を得たから架電して場所・容姿を聞き出し視線でその姿を探す。

目星しい場所にいた人は昔の秋葉原にいそうなパッとしない黒髪、黒縁、陰気な雰囲気が漂うスーツ姿の男。

いや、流石にアレじゃないよね・・・と思いながら、他を探すも見つからず。

電話で「スーツ着てますか?」と聞くと、「はい。」と答えられた。

できれば会いたくないし、あぁ帰りたいなってすごく思った。

でも、見た目で人を判断してはいけないなと思ったから、話かけた。本人だった。


どのお店に行くか決めていなかったため、とりあえず安定の鳥貴族へ。

店内は混み合っていてカウンター席しか空いてないと店員さんから告げられる。

お店を探すのも面倒だし、相手もカウンターで問題ないとのことだったため、席へ。

相手はビール、私はレモンサワー、その他テキトーに頼んだ。

飲み物が届いてから乾杯をして雑談を開始。

最初は仕事を何しているか〜という他愛もない話だったけど、酔いが回ってきて仕事、上司の愚痴が止まらない。面白い愚痴なら私も笑って聞いていられるのに、本当にただただつまらなくて、長いだけの話を聞かされる。話を止めることもできず、愛想笑いで聞いているような聞いていないような表情をしていた。それでも相手は気持ちのいいように話す。もはやこれはオナニー?会話で勝手に気持ちよくなっているオナニーじゃんって思った。

その間に相手はビールを何杯も何杯も飲んでいた。途中トイレで離席することがあり、戻ってくるたびに私との距離を詰めてくる。私は壁に寄る。でも壁しかないから逃げ場がない。みたいなことを4回くらい繰り返した。

22時くらいになり、相手も遠くから来ているし、明日も仕事と事前に聞いていたから「帰らなくていいんですか?」と問う。

「まだ大丈夫」と答えられる。いや、私が大丈夫じゃねえんだよ!!!!!!!!と心の中で思っていた。

仕方なくまた仕事の愚痴を聞く。23時頃にまた帰らなくていいのか問う。

「うーん、いや、まぁ。まだ大丈夫・・・?かなぁ?」と言われる。

そこで私は勘づいた。こいつ帰る気がないんだ。ヤリモクだ!!!!!今日で童貞捨てようとしてきたんだ!!!!めんどくさい!!!!むり!!!!顔もタイプじゃないし、話は自分のオナニーのためにしか使えないし、相手の気持ちも考えてない性格の人とそんなことするなんて絶対無理!!!!と思った。

私は早々に帰宅したくなり、相手の言葉も聞かず会計用の伝票をレジに持っていった。勝手にお会計を済ませた。

階段を駆け下りるようにして下り、私は徒歩圏内の自宅、相手は駅へ向かうはずだった。

だったのに、「ありがとうございました〜、気をつけて!」と告げた後、後に何かしらの気配がした。

人の嫌な予感って当たると聞いたことがあったが、振り返ると先ほど別れたはずの相手が私の後をつけて歩いている。怖すぎる。どういう意味なんだ。

「駅、こっちじゃないですよ?分からないなら案内しましょうか?(歩いて5分の道のり、しかも何度も来ている土地なら分からないはずがないのに)」と聞いた。

「あ、いや、酔っちゃったんで、酔いさましで歩こうと思って。」と見え透いた嘘をついていた。

道中、左右に分かれる道があった。左に行けばUターンして駅へ向かう。右は住宅街へ入る道。

私は右に行かなければならなくて、その分かれ道で相手がどちらに進むか判断しようと思った。

振り返らず歩き続けて、いざ分かれ道へ到達し右へ入った瞬間、相手も右へついてきた。これはもう確定だと思った。本当にヤリモクだった。キツすぎると思った。

「今日彼氏が家に来るってさっき連絡来たんですけど、どうします?鉢合わせることになると思いますけど?」とスラスラと口から出た嘘。

それを聞いた瞬間青ざめて駅の方に走っていく相手。


売れていなくて、見た目も童貞みたいで、話もつまんない人に割く時間なんてないんだよ。

あれから相手のバンド名は一度も目にしてない。多分解散したんだろうな。だと思った。

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