第二話「初めての、人間の街」
第二話をお読みいただき、ありがとうございます。
今回は、ついにミリィが人間界の街へと足を踏み入れます。
精霊界の王女である彼女にとって、すべてが初めての体験。
巨大な城壁。
にぎやかな通り。
そして――甘いケーキ。
好奇心旺盛なミリィが、目を輝かせながら人間の文化に触れていく様子を、ぜひ楽しんでいただければ嬉しいです。
少しでも「かわいい」「続きが気になる」と思っていただけたら、とても励みになります。
人間界。
森を抜けたミリィの目の前に――
巨大な城壁が現れた。
「わぁ……!」
思わず声が漏れる。
石で作られた高い壁は、まるで山のようにそびえていた。
その中央には、大きな門。
多くの人々が行き交い、荷馬車や旅人たちが列を作っている。
「ここが……人間の街……」
ミリィは、目を輝かせた。
精霊界にも城や、集落はある。
だが、これほど大きな都市は見たことがない。
門の上には、旗が掲げられていた。
黄金の太陽と、光の紋章。
ルミナリア王国——
人間界でも、有名な魔法国家である。
「すごい……!」
ミリィは、わくわくしながら門をくぐった。
そして――
「わぁぁぁ……!」
王都の光景に、完全に心を奪われた。
石畳の広い通り。
両側にはずらりと並ぶ店。
パン屋、果物屋、魔道具屋、服屋。
呼び込みの声があちこちから聞こえる。
「焼きたてパンだよー!」
「新鮮なリンゴだ!」
「魔石入荷したぞー!」
活気に満ちた街。
ミリィは、きょろきょろと辺りを見回した。
「すごい……すごい……!」
どこを見ても新しいものばかり。
精霊界では、見ない文化だ。
その時。
ふわっと甘い香りが漂ってきた。
「……!」
ミリィの足が止まる。
香りの元は、小さな店だった。
ショーケースの中には、色とりどりのケーキが並んでいる。
クリーム、果物、チョコレート。
まるで宝石のようだった。
「きれい……」
ミリィはガラス越しに顔を近づけた。
「これ……食べ物?」
精霊界にも、甘いお菓子はある。
だが、こんなに華やかなものは見たことがない。
特に、ミリィの視線を奪ったのは――
ショートケーキ。
ふわふわのスポンジに白いクリーム。
上には真っ赤なイチゴ。
「……おいしそう」
ミリィは思わずつぶやいた。
しかし、次の瞬間。
「……あ」
気づく。
「お金……ない」
精霊界の王女なので、買い物という概念がほとんどなかった。
「うぅ……」
名残惜しそうに、ケーキを見つめる。
その時。
店の奥から店主が顔を出した。
「嬢ちゃん、気になるのかい?」
ミリィは、慌てて顔を上げた。
「え、えっと……! 綺麗だなぁって思って……」
店主はくすっと笑った。
「ショートケーキだよ。うちの人気商品さ」
「しょーと、けーき……」
ミリィは、その言葉を繰り返した。
「今度、お金を持ってきたら、ぜひ食べてみて」
店主は、優しく言う。
ミリィは小さく頷いた。
「はい!」
そして、心の中で決めた。
(いつか絶対食べる……!)
その後も、ミリィは王都を歩き回った。
魔道具屋。
「すごい……魔石!」
武器屋。
「人間の剣だ!」
本屋。
「人間界の本……!」
何もかもが新鮮だった。
やがて――
ミリィの足が止まる。
王都の奥。
遠くに見える、ひときわ大きな建物。
白い塔がいくつも空へ伸びている。
周囲には魔法結界が張られ、淡く光っていた。
ミリィの瞳が、きらきらと、とても嬉しそうに輝く。
「あれって……もしかして!」
すると、通りかかった街の人の会話が、偶然聞こえてきた。
どうやら、魔術学院に関して話しているようだ。
「今年も、ルミナリア王立魔術学院の入学試験だな」
「そうねぇ、今年は優秀な魔術師が集まるって聞いてるわ」
ミリィは思わず声を上げた。
「ルミナリア王立魔術学院!」
ついに、目的の場所を見つけた。
小さく拳を握り、興奮が抑えきれない彼女は、一人でその場で決心する。
「よぉーし! 試験、頑張るぞぉー!!」
そして、宣言したのだった。
第二話「初めての、人間の街」をお読みいただき、本当にありがとうございます。
今回は、ミリィの「人間界デビュー回」となりました。
王女でありながら、お金の概念があまりないところや、ショートケーキに心を奪われるところなど、彼女らしい一面を書いていてとても楽しかったです。
そして物語は、いよいよ――
「ルミナリア王立魔術学院」へと進んでいきます。
ここから、ミリィの新しい出会いと騒動(?)が本格的に始まります。
次回は、入学試験や個性豊かな登場人物たちも登場予定です。
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これからも、ミリィの冒険を温かく見守っていただけたら嬉しいです。




