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秒速11メートルの額縁

作者:と゚わん
最新エピソード掲載日:2026/02/10
「この窓枠は、僕を閉じ込める檻だ」

画家を目指す高校生・一ノ瀬湊にとって、故郷の田舎町は退屈で、古臭くて、色彩のない灰色の世界だった。 東京の美大に行くことだけを夢見て、彼は毎日、片道一時間の通学時間を「ノイズキャンセリングイヤホン」で耳を塞ぎ、外界を遮断して過ごしている。

走るのは、古びた気動車「天霧線」。 時速40キロ。秒速にすれば、たったの11メートル。 遅すぎるその速度は、湊にとって焦燥の種でしかなかった。

しかし、ある日の出会いが、その景色を一変させる。 よそ者の写真家が切り取った黄金色の夕暮れ。 お節介な老婆が語る、雪原の一本木の記憶。 そして、頑固な祖父が泥だらけの手で守ってきたもの。

――君の絵には、体温がない。

そう酷評された湊が、イヤホンを外し、窓の外の本当の「色」に気づいた時、止まっていた時間は動き出す。

季節の移ろいと、ローカル線の旅情に乗せて描く、色彩と再生の青春ストーリー。
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