表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/43

追放の朝⑥

 王妃の座を追われたエミリアは、王家から忘れられた〝呪われた王子〟のもとへ嫁ぐため、霧と雪に閉ざされた北の果て、ミカエル領へ旅立つことになった。

 実家であるトレンテス家には、急ぎの文を出すだけで精いっぱい。


(お父様、お母様、親不孝な娘でごめんなさい)


 娘が離縁されたうえ遠い地の果てに追放された知ったときの、父と母の嘆き悲しむ姿を想像するだけで胸が痛かった。

 羽織った白い外套の裾が揺れるたびに、かすかな香草の香りが漂う。王宮の庭で大事に育ててきた花々の香りだ。

 窓の外を風が冷たく吹き抜けていく。春は遠い。それでも、どこかで季節は変わろうとしている。


(王都を出たら、私は何者になるのかしら)


 遠く、馬車の音が聞こえる。王宮の正門に迎えが着いたのだろう。

 王命には逆らえない。エミリアが向かうのは、〝封印の谷〟と呼ばれる辺境の地。かつて勇敢な王子だった男が、呪われし存在として人々に恐れられているとされる地である。

 リリィがすすり泣く声を背に、エミリアは静かに振り返った。


「ありがとう、リリィ。あなたのおかげで、私はここまで来られた」

「……どうか、ご無事で」

「ありがとう」


 そう言って、エミリアは真っすぐに足を進めた。

 馬車の扉がゆっくりと閉まる。王妃ではない、ひとりの女としての人生が今、はじまろうとしていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ