第七話:処刑台への招待状
闇オークション会場を後にし、アリオスと合流したエリザベスは、潜伏先の廃屋で、ろうそくの灯りを頼りに「落札した資料」を広げていた。
「……やはりね。見て、アリオス様」
エリザベスは、古びた羊皮紙の一節を指差した。
そこには、王家の暗号で記された、おぞましい儀式の手順が記されていた。
『ホワイトドラゴンの心臓は、穢れなき聖女の祈りによって縛られ、浄化されねばならない』
『その儀式を行う場所はただ一つ――聖イグナチオ大聖堂、最奥の「祈りの間」』
アリオスが息を呑む。
聖イグナチオ大聖堂。それは、聖女イリアが住まう、国で最も神聖とされる場所だ。
だが、その実態は、聖女の祈りを「拘束具」として利用し、生贄を処理するための屠殺場だったのだ。
「聖女様も哀れなものね。ご自身の祈りが、誰かの命を縛り付ける鎖だとも知らずに……」
エリザベスは冷笑し、パタリと資料を閉じた。
「行き先は決まったわ。王都へ戻りましょう」
「な……ッ!?」
アリオスが愕然として声を上げた。
「正気ですか!? その教会は、言わば敵の本拠地……処刑台そのものじゃないですか! わざわざ死にに行くようなものです!」
「ええ、そうよ。だからこそ行くの」
エリザベスは立ち上がり、窓の外の王都の方角を見据えた。
「コソコソ逃げ回るのはもう飽きたわ。どうせ追っ手が来るなら、最高の舞台で迎えてあげましょう」
彼女の瞳には、狂気的なまでの自信と、昏い愉悦が宿っていた。
「私が自ら『まな板』の上に乗って待っていてあげる。……そこで、クロード様がどう動くか見ものじゃない?」
「試す、おつもりですか。あの方を」
「ええ。もし彼が、私をそのまな板に縛り付けようとするなら、その時は私の負け。潔く死んであげるわ」
エリザベスは、アリオスの胸に手を当て、悪魔のように微笑んだ。
「でも、もし彼が……私を乗せた『まな板』ごと、教会を吹き飛ばすようなら? その時こそ、彼はこの腐った国を敵に回す『本物の怪物』になれる」
アリオスは戦慄した。
彼女は自分の命をチップにして、クロードが「国の王」でい続けるか、「愛に狂った怪物」になるか、賭けようとしているのだ。
「……貴女は、本当に恐ろしい方だ」
「褒め言葉として受け取っておくわ。さあ、行きましょうアリオス様。聖女様が、私たちの到着をお待ちよ」
ここまでお読みいただきありがとうございます!
【2/10朝7時から新作スタートしました!】
昨日の朝7時より、新作『「君を愛してる」と脅されても、もうすぐエンディングなので全力で応援します! ~悪役令嬢ですが、ヒロインと婚約者様が結ばれるのを待ってるんですが?~』の連載を開始しました。
【URLはこちら】
https://syosetu.com/usernovelmanage/top/ncode/3014516/
本作でも「逃がさない、手放さない」重厚な愛をたっぷり詰め込みました。
毎朝、皆様と新しい物語でお会いできるのを楽しみにしています!




