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悪女の婚約者様は、私を捨てた。それなのに、世界を道連れにしてでも、私を手放さない。  作者: ましろゆきな


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第一話:断罪の舞踏会

 色とりどりの光を放つ豪奢なシャンデリアが煌めく舞踏会。


 その会場の中央、集った貴族たちのざわめきが静まり返る。


 美しい白銀のドレスに身を包んだエリザベスは涙をこらえながら、一人立ち尽くしていた。


 その前に立つクロード・ヴォルケン・ドラグーン王太子は、冷ややかな黄金色の眼を向け、右手を高く掲げる。


「エリザベス・ローゼンシュタイン公爵令嬢、貴女の数々の悪行について、すでに証拠はそろっている。聖女イリア・グレースの名に懸けて、ここに断罪する!」


 聖女イリアは白と金の聖装に身を包み、王太子の隣で静かにうなずいた。


 神聖な光が彼女の周囲に広がる。


 その光はまるで真実を照らし出すように、エリザベスの影を長く引き伸ばしていた。


 悪役令嬢の唇は色を失い、震える。


「……そんな、私は……何も……」


(さあ、計画通りに進めましょう。これが終われば、退屈な地位と、王族の軛から解放されるのよ)


「私は何も後ろめたいことなどしておりませんわ! そちらの聖女様が一方的に仰ってるだけです!」


「……先ほども申した通り、証拠がこちらにある。今更、どんな言い訳をしても無駄だ」


「私はただ……クロード様をお慕い申しているだけですのに……」


(ああ、我ながら、砂を吐きたくなる台詞だわ。心にもないことを口にするのも嫌なものね)


 エリザベスはその場に膝をつき、両手で顔を覆う。


(本当に、退屈! こんな茶番劇、一秒でも早く終わらせないと、私の気が振れそうよ。ねえ、クロード様、早く『狂った追跡者』の姿を見せてくれないかしら。……私の『自由』に最高の『命がけの刺激エッセンス』を与えて欲しいわ)


 泣き崩れるエリザベスにその場の誰一人として手を差し伸べる者はいなかった。


 音楽も止まり、舞踏会は沈黙の劇場と化し、すすり泣く声だけが静寂に吸い込まれていった。


(愚かだ、兄上は! この女の断罪で王位が弱まる? そんな単純な話ではないだろうに。しかし、兄上と王位の間に亀裂が入るのは確かだ。私はこの機を利用してみせる……)


 クロードの後ろに隠れて立つアダルベール第二王子は、これで兄王太子の継承権が弱まると確信し、内心でほくそ笑む。


 凍り付いた空気の中、不意にクロード王太子の金眼が一瞬、不思議な色を浮かべる。


 聖女イリアではなく、悪役令嬢エリザベスに向けた目が鋭く光った。


 彼の金眼は、一瞬、深く不吉な 『漆黒』 の炎を宿した。それは王族の持つ竜の魔力が、彼女への飽くなき執着に反応した証だった。


「……よく、こんな舞台を準備してくれたな、我が婚約者よ。ここからが、我々だけの 『本番』 だ」


 隣に立つ聖女の耳にさえ届かぬ「愉悦」と「独占欲」が含まれた言葉は甘い愛のささやきのようだった。


 そして、運命の幕が静かに上がる――。

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