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第5話 雪女

 月明りに照らされており、それはそれは、おとぎ話のような美しい世界が広がっていた。


 思わず目を見張り、その場から動けなくなる。


 そんな幻想的な光景に羅刹さんが入り、手を伸ばしてきた。

 月明りを背中に受け止める羅刹さんの髪がキラキラと輝き、目を奪われる。


「どうした」


「い、いえ」


 あぁぁぁああ!! やっぱりかっこいい!! 本当にかっこいい!!

 というか、手を差し出してきた!? これは、握ってもいいということだろうか。


 え、いいの? 私が? 神の手を掴んでも?

 手汗、大丈夫だろうか。一応、服で拭っておこう。


 緊張しながら羅刹さんの大きな手に、自分の小さな手を重ねると優しく握られた。

 そのまま、手を引かれ石畳を歩く。


 カツ、カツと二人の足音が響く、静かな空間。

 風が吹くと夜桜が揺れ、自然の音を奏でる。


 薄紅色の花びらが、暗い夜空を着飾っていた。


「――――人間の娘よ」


「は、はい」


「なぜ、一人で森の外にいた? まさか、我の屋敷に忍び込もうとしたとかではないだろうな?」


 あ、疑っているような視線を感じる。

 肩越しから、赤い瞳を覗かせ私を見る。


 どうしよう、素直に伝えても信じてもらえないだろうなぁ。


 だって、祓い屋の娘、しかも長女が屋敷から追い出されたなんて。

 それに加え、森の前に捨てられ、あやかしに襲われていたなんて。


 …………改めて言葉にすると、本当に現実味がない。


「答えられんのか?」


「い、いえ。お話しすることは可能なのですが、信じていただけるかどうか……」


 今、思っていることをそのまま伝えていると、屋敷の中から一人の女性が姿を現した。


「羅刹様」


「雪女か。どうした?」


「いえ。森の外にあやかしの気配を感じると言って飛び出してからお戻りが遅かったため、お出迎えに」


「そうか」


 奥にいる綺麗な声の持ち主は、雪女と言うあやかしらしい。

 羅刹さんの影から覗いてみると本当に美しくて、一瞬にして目が離せなくなった。


 水色の艶のある髪。藍色の、瞳。

 白い着物に、水色の帯。雪の結晶が辺りに漂っていた。


 口元を抑えている手を下ろすと、藤色の唇が覗く。

 私が目を離せずにいると、雪女さんと目が合った。


「そちらの方は、たしか羅刹様の婚約相手の人の子だったでしょうか」 


「そうらしい。森の前であやかしに襲われていた」


「あら」


 驚き、雪女さんが私へと近寄ってくる。

 顔を近づけられ、思わずドキドキと胸が波打ってしまう。


 わ、私は、イケメンももちろん大好きなんですが、美しい女性も好物なのですよ!!


 顔が整っていらっしゃれば、私は誰でもいけますよ!!


 鼻息荒くなるのを何とか抑え、見つめられ続ける。

 あ、穴が開きそう。というか、私の目のやり場が……。


 挙動不審に視線をさまよわせていると、雪女さんは何かわかったのか鼻を鳴らし、顔を離した。


 な、何だったのだろうか。


「どうした」


「いえ。本当に、人の子なんだなと、少々不思議に思っただけです」


 本当に人かどうかを確認しただけらしい。

 擬態しているあやかしだとでも思われたのかな。


 何も言えずにいると、二人だけで話が進む。

 なんだか、この人間をどうするのか。本当に、嫁として受け入れるのか。それを話し合っているみたい。


 私は、正直どっちでもいい。

 嫁に迎え入れられたのなら、衣食住が困らなくなるだっ――


 ――――いや、待てよ。

 よくよく考えてみたら、嫁と言う立ち位置を手に入れると、羅刹様のような美しい方の隣にいても怪しまれない。


 つまり、毎日イケメンを摂取できるということか?

 いや、そんなお下品なことを考えては駄目よ、私。


 いや、何がお下品なの? イケメンを見続けたいと願うのは女性なら誰でもあり得るのではないかしら。


 でも、仮にここで追い出されたとしても、野宿する術は頭に叩き込んできた。

 これでも、一人で生きていけるくらいの知識はある。

 体力も、毎日筋トレをしていたから普通の人よりは自信ある。


 最悪、食い殺すという選択をなされたとしても、ただでは殺されない。

 殺されたいけど、殺されませんよ。妹のために。


 私は、妹の為ならなんにでもなれます。

 悪魔にでも、なんでも。


 さぁ、来い。

 私は、どのような選択でも受け入れるぞ!!


「ぬしについては、明日の朝に考える。今は、雪女に任せたぞ」


「わかりました」


 ――――え?

 それだけを残して、羅刹さんが一足先に屋敷の中に入ってしまった。


 唖然としていると、雪女さんが私を見た。


「あ、あの…………え?」


 な、なんか、雪女さんから冷たい空気が流れて来ている気がする。

 しかも、顔が、ちょっと、怖い。


 凄い、睨まれている。

 雪女さんの方が身長が大きい――――訳ではないのか。

 足が地面から浮いている。身長は同じくらいかな。


 って、そんなことを考えている場合ではない。

 なんで私は睨まれているのだろう。まさか、思考がだだ漏れていた!?


 も、ものすごく冷たいし、寒い。

 私、逃げた方がいいかな?


「なぜ、貴方のような祓い屋を私達が受け入れなければならないのかしら。やっぱり、羅刹様の考えることはわからないわね」


 え、な、なに? 受け入れる? どういうこと?


「人の子」


「は、はい」


「ここは、あやかしの住むこの場所は、貴方みたいな人の子は一人もいないの。それに、力のないあやかしもいるのよ。万が一でも、間違えてでも。一人でもあやかしを祓えば、私は貴方を凍らせて山に捨てるわ」


 あ、なるほど。

 私が祓い屋の人間だから、あやかしを祓う為にここに侵入したと思われているんだ。


 そんなことと心配しなくてもいいのに。

 私、祓う力はまったくない。少し体力に自信がある、ただの人の子ですよ。


 今そんなことを言っても、火に油を注ぐようなことになりかねないから言わないけれど。


 それにしても、怒っていても、怪しんでいても美しい人は本当に目を奪われる。


「行くわよ、人の子」


「はい」


 とりあえず、屋敷の中には入れてくれるらしい。

 よかった、今日は野宿をしなくてもいいみたい。


 でも、この後、何が待っているんだろう。

 いつでも逃げられるようにはしておこう。


ここまで読んで下さりありがとうございます!

出来れば次回も読んでいただけると嬉しいです!


出来れば☆やブクマなどを頂けるとモチベにつながります。もし、少しでも面白いと思ってくださったらぜひ、御気軽にポチッとして頂けると嬉しいです!


よろしくお願いします(*・ω・)*_ _)ペコリ

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