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第37話 九尾の狐

「羅刹様、よかった。本当に、よかった」


「そのセリフは、我のだと思うがなぁ」


 呆れながらも、羅刹様は私の背中に手を回してくれた。

 温かくて、大きな手。自然と、体の力が抜ける。


 未来予知、久しぶりに使ったけど、失敗しなくてよかった。


 私と羅刹様が抱きしめ合っていると、目元を拭いている水奈の後ろに雪女さんがあっているのが見えた。


「あ、雪女さん」


 雪女さんに気づき、羅刹様から少し離れて名前を呼ぶ。

 すると、氷のように冷たい視線が刺さった。


 う、うわぁ。

 まぁ、そうなるよねぇ。


 好きな人が自分以外の人と抱きしめ合っているのだから、そりゃ嫌だよねぇ。

 私も、たぶん嫌だと思う。


 羅刹様が私以外の女性と仲良くしているのは、見たくない。


 ――――あっ。

 今、自然とそんなことが浮かんだ。


 …………そうか、そっか。

 やっぱり私、羅刹様が好きなんだ。


 こんな私なんてって、思いたくない。

 思ってしまうけど、思わないようにしたい。


 羅刹様を見上げると、目を丸くしつつもニコッと笑みを向けてくれた。

 はい、死にました、鼻血が……。


「あ、あの?」


 私が羅刹様の神々しい笑みに鼻血を出していると、水奈がおずおずと手を上げた。


 あっ、雪女さんの視線が水奈に映る。

 だ、大丈夫かなぁ。雪女さん、凄く綺麗な分、怒った時の顔って怖いんだよ。


 そんなことを思っていたのに、雪女さんの表情が急に柔らかくなった??

 え? 微笑んだ? 優しい柔和な笑み? え?


「貴女が、水喜様の妹様ですね」


「は、はい。あの、貴女は?」


「私は、羅刹様の側近である、雪女です。以後、お見知りおきよ」


「こ、こちらこそです」


 声色も、優しい。

 私には、あんなに優しい笑みを向けてくれたことも、声をかけてくれたこともなかったのに。


 あっ、私を見っ――視線が冷たいよぉぉぉぉおおおお。


 悲しいけど、水奈と仲良くしてくれるのは嬉しい。

 でも、悲しいよぉぉぉぉおおおお。


 私が悲しんでいると、羅刹様が頭を撫でてくれた。

 うれしいけど、たぶんそれ、逆効果です。


 喜びながら悲しんでいると、狗神さんが雪女さんの影から現れた。


「では、羅刹様、雪女には妹様と水喜様を一度お屋敷にお届けするのをお願いする形でよろしいでしょうか」


 え、わ、私も??

 私もなの!?


「そうだな。さすがにここに残るのは危険だ。一反木綿に乗せて――……」


 ――――ギュッ!!


「っ、水喜?? どうした?」


 このままだと、私は水奈と帰らされてしまう。そんなの嫌だ。

 私は、帰りたくない。


「羅刹様、私は、帰りたくないです。羅刹様と、離れたくないです」


「だが、ここにいると危険だ。命にかかわるぞ」


「それでも、嫌です。私は、絶対に迷惑かけないので、絶対に役に立ちますので。どうか、ここに置いてください!!」


 絶対に、帰りたくない。

 私は、帰りたくないの。


「それに、私には未来予知があります!! 役に立ちますので、絶対に迷惑はかけませんので!!」


「お願いします」と、頭を下げる。

 羅刹様は困ったように唸ってしまった。


 困らせている自覚はある。でも、役に立ちたい。

 少しでも、羅刹様の役に……。


「――――だが」


「なぁにを話しておるのじゃ? 妾も混ぜておくれよ~」


 羅刹様が何かを言いかけた時、上から女性の声が聞こえた。


 みんな、一斉に外へと目を向ける。

 そこには、月光を背中に受け浮かんでいる、九尾の狐がいた。


「九尾、貴様……」


「まったく、まさか洗脳した男が女一人にやられるとは思っていなかったのぉ〜。さすがに驚いた」


 九尾の狐は、「ふむ」と周りを見て眉を顰めた。


「まぁ、最終的には鬼がやったみたいじゃが、まぁよい」


 手には、扇子が握られていた。

 その扇子をパタンと閉じ、赤い唇を横へと引き延ばした。


「では、ここからは妾が相手してやろう。なぁに、安心せい。殺しはせぬ。ここで、洗脳してやるだけだ」


 九尾の目が、私と水奈に注がれる。

 それだけでわかる。狙いは、私達だ。


 でも、なんで、私達?

 人間が好きなの?


 というか、この男達、気配が変だと思ったら、洗脳されていたのか。

 だから、人間じゃないと錯覚してしまったのか。


「妾から目を離すなど、余裕じゃのぉ、小娘よ」


「っ!!」


 目の前に、九尾の顔!!


 ――――ヒュン!!


「おっと、いかんいかん。つい、隙だらけだと思って、近づいてしまったのぉ~」


 あっ、羅刹様が九尾を追っ払ってくれた。

 今、脳が何が起きたのかを理解していない。


 早すぎて、わからなかった。


「さすが、九尾様だ。動き出すまでまったく空気が揺るがなかったな」


「そうかのぉ? 妾はなにも意識しておらんのじゃがなぁ」


 クスクスと優雅に笑う。

 なんか、体が竦む、動けない。


「これをお持ちください」


「っ、これって、クナイ?」


 影から狗神さんが私にクナイを渡してきた。


ここまで読んで下さりありがとうございます!

出来れば次回も読んでいただけると嬉しいです!


出来れば☆やブクマなどを頂けるとモチベにつながります。もし、少しでも面白いと思ってくださったらぜひ、御気軽にポチッとして頂けると嬉しいです!


よろしくお願いします(*・ω・)*_ _)ペコリ

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