第35話 素敵な服
「――――なるほど」
「見えたの?」
見えた。見えたけど……。
これって、本当に大丈夫なのかな。
…………いや、大丈夫。信じていい。
だって、見えたのはあのお方だから。
「水喜姉さん??」
「うん。一番安全な突破口が見えたよ。早く行こう」
「う、うん!」
これは間違いなく“時間勝負”。
少しでもズレたら合流できない。
早くここから抜け出さないと、間に合わなくなってしまう。
「水奈が来た方が、部屋の出入口なの?」
「そう。でも、私もたまたま見つからなかっただけだから、二人で移動するのは難しいと思う」
「そんなに警備いるの?」
「うん。十人以上は確実。私は自分にだけかけられる術で姿を晦ませてたから見つからなかっただけだよ」
やっぱり水奈はすごい。
そんな術まで使えるなんて、本当にすごい!!
でも今は褒めるタイミングじゃない。
ここを抜け出したら全力で褒めよう!!
「……たぶん、二人で潜り抜けるのは無理。無理やり突破した方がいいね」
「む、無理やり?」
「うん。騒ぎを起こした方が、見つけてもらえる確率が上がるし」
私はニコッと笑って立ち上がる。
水奈が「へ?」と可愛い顔をしたから、思わず頭を撫でた。
「だ、大丈夫なの?」
「大丈夫。私だってぬくぬくしてたわけじゃないんだよ。筋トレは欠かさなかったし、今はいいご飯まで出してもらってるんだよ? だから、今まで以上に筋肉付いたの!」
見た目はそんなに変わらないけど、小鬼八人は余裕で持ち上げられる。
弱いあやかしならワンパンよ!!
ドヤ顔してると、水奈は声を殺して笑った。
よかった、水奈が笑った。
さっきまで、私に気づかれないように恐怖を隠して頑張ってくれてたんだよね。
顔が引きつっていたよ。
本当に優しい、頼りになる、頑張り屋の妹。
――――ギュッ
「っ、水喜姉さん?」
こんな小さな体で、あんな両親にこき使われて……。
誰にも助けを求められなくて、ずっと一人で頑張ってきた。
ここまで細くなるまで働かされて……。
視界が歪む。
泣いてる場合じゃないのはわかってるのに。
妹を追い詰めた両親への怒り。
“助ける”と誓ったのに、助けられてばかりの自分への怒り。
情けない。
本当に情けない。
「み、水喜姉さん? どうしたの?」
「――――ううん。大丈夫。何でもないよ」
涙を拭き、立ち上がる。
「行こっか。絶対に、私から離れないでね」
「う、うん!!」
くっ……!!
差し出した手を素直に握ってくれる妹……!!
しかも、この満面の笑み……!!
だめ、この笑みは私と羅刹様専用です。禁止。はい。
「じゃあ、ここからは声出さないようにね。見つかったら私がどうにかする」
「はい」
見つかる前提ではあるけど、なるべく避けたい。
慎重に進もう。
水奈が来た方向へ向かうと、襖が見える。
月明りが漏れている。
ここはどこかの屋敷の内部、縁側に繋がっているのかも。
襖の前で耳を澄ます。
気配はなし。音もなし。
ゆっくり、音を立てないように襖を開け、顔だけ外へ。
――――よし、誰もいない。
水奈に合図し、外へ出た。
「うっ!!」
暗闇から外へ出たから、月明りでも少し眩しい。
でも立ち止まってる暇はない。
手を握って走り出す。
……ここはどこだろう。
森に囲まれた大きな屋敷?
それに、この空気……淀んでいて血の匂いがする。
絶対普通じゃない。
本当にあやかしの屋敷の可能性が高い。
ワンパンとか言ってたけど——はい、忘れよう。油断は禁物。
走っていると、曲がり角から気配がして足を止める。
壁に背中をつけ、人数を探る。
――――二、三人。
気配の質が妙だ。
人間? あやかし? わからない。
でも人数だけなら余裕でいける。
水奈に「静かにね」と伝えると、不安そうな顔をした。
可愛い……!!
その顔、大好き……!!
大丈夫だよって意味で頭を撫で、私は気配の方へ走り出した。
曲がり角には三人の男。
袴を着て刀を持っている。
向こうも私に気づき、慌てて刀を抜く——が、遅い!
一歩踏み込み、先頭の男の鳩尾に拳。
うずくまった瞬間、手刀で気絶させる。
奥の二人には連続の蹴り。
倒れる前に一人へかかと落とし。
着地と同時に横回転してもう一人の首を蹴る。
――――ガタン!!
「やっば。勢いつけすぎた。でも、まあいいか」
「水喜姉さん、すごい……」
それにしても、この服めっちゃ動きやすい。
着物より数倍、いや、洋服より動きやすいかも。
今度からジャージじゃなくて、この服で筋トレしよう。
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