第34話 全力肯定
…………油断した。
まさか、私を狙って来るなんて。
「ふふ。ようやくお目覚めかのぉ?」
手は後ろで拘束され、口は布で抑えられている。
足も、縄で拘束されているから、本当に身動きが取れない。
ここまで拘束されるなんて……。
「なぜ、ここまで拘束されておるのか。そんな顔をしておるな」
「っ!」
顔に出過ぎていたのかな。
声は、女性だ。気配は、人間ではない。
羅刹様と似ているから、多分あやかしだ。
「主は正直、あまり油断してはいけないと思っているんじゃよ。人間にしては、良い体つきをしておるからのぉ」
――――ゾクッ
腕、足、腰と触られる。
同じ女性としても、気持ち悪い。
「ふーむ。面白い力も持っているらしいのぉ。じゃが、今までそんなに使ってこなかったらしい。隠しておるのか?」
面白い力? 使ってこなかった?
もしかして、未来視のことか?
確かに、今まで使ってこなかった。
だから、使いこなせていない。
「まぁ、よい。せいぜいここでもがくがいい。妾には、行く所がある」
「むー!! むーむー!!」
ここから出せよー!! せめて口枷を外せ!!
おい、こら!! こんな暗闇に女性一人を置いて行くな、おいー!!!
――――パタン
「むー!!?」
う、嘘でしょ!?
本当に今のあやかし、私を一人置いて行った!!
ど、どうしよう。
腕も足も拘束されているし、抜け出せない。
縄抜きはさすがに習得していないし……。
「むぅ……」
一人でずっと何もせずにいる訳にはいかない。
何のために今まで筋トレをしてきたというの。こんな縄、私が引きちぎってやるわ!!
「むーーーーーーー!!!! むーー!!!!」
ぜぇ、はぁ……。
硬すぎない? この縄。
普通の縄じゃないのかも。
だって、私、普通の縄は簡単に引きちぎれるもん。
どうしよう……。
周りが暗いから、何があるのかもわからないし、使えそうなものを置いておくわけもないよね。
…………それにしても、さっきのあやかしは、一体何が狙いなんだろう。
「…………」
それにしても、女性らしい可愛い声だったなぁ。
あのような声の人って、見た目も可愛いのが定番だよね。
――――って、そんなことを考えている場合じゃない。
早くここから抜け出す方法を考えないと!!
芋虫みたいに動けば前に進めるけど、見つかった時が終わりなのよねぇ。
はぁ、クナイか何か、隠し持っておけばよかった。
というか、襲い掛かってくるのが早すぎるのよ!!
ふざけるな!! 私の筋トレはいつ活かされるのよ!!
「むー…………ん?」
人の気配だ。
あやかし、ではない。羅刹様や百々目鬼さんとはまた違う。
人だけど、誰?
わからない。私の両親?
気配が近づいてくる、誰だ。
警戒しながら気配の感じる場所を見ていると、予想外の人物で思わず固まってしまった。
「むむむー!?」
「しっ!! 静かにして水喜姉さん」
さっきの気配は、わが愛しの妹である水奈だった。
なんで、水奈が? ここって、どこ?
「声を出さないでね。水喜姉さんの声は通るから気づかれるかも」
全力で頷くと、まず口元の布を外してくれた。
次に手と足も自由になる。
「水喜姉さん。あの、お願いしたいことがあるの」
水奈のお願いなのなら私は全力で頷くよ。
「ありがとう。水喜姉さんの未来予知で出入口を見てほしいの。力を使っている間は、私が周りを警戒しているから」
あぁ、なるほど。
たしかに、未来予知をしている時は、周りの情報が一切遮断されるから無防備になるんだよね。
でも、水奈が周りを見てくれるのであれば安心だ。
頷き、すぐに正座になる。
目を閉じ、祈るように胸の前で手を組む。
すると、閉じているはずの瞼の裏が明るくなっていく。
数秒間は、明るくなるだけ。
集中力を切らさずに、明るい景色に集中する。
すると、目の前に広がるのは――え?
「え??」
「え? もう、見たの?」
「あっ、い、いや、ごめん。もう一度集中するね」
「う、うん」
い、いけない、いけない。
早く集中し直さないと。
でも、さすがにびっくりした。
だって、目の前に現れたのは、誰かの大きな背中。
銀髪がゆらゆらと揺れていたから、たぶん、羅刹様。
――――いや、ありえない。
久しぶりに未来予知を使ったから、間違えた未来が見えたんだ。
もう一回、集中、集中。
目を閉じ、さっきと同じように集中する。
また、視界が明るくなる。
今度こそしっかりとした未来を見ないと――……
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