表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
祓い屋としての力がない私は、愛しの妹と旦那様を守るためにゴリラ級の筋力を手に入れることにしました  作者: 桜桃
九尾の狐

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/41

第33話 後悔させてやる

 羅刹様と話をしてから数日間、私はずっと筋トレをしながら考え事をしていた。

 考えるのは——私が羅刹様をどう思っているか、だ。


 私みたいな女っ気のない女が、羅刹様みたいに美しく儚く、かっこよくて、時々可愛い人の隣に立っていいのか。


 ……いや、そう思うなら自分磨きをすればいい。

 でも、なんとなくそれだけじゃ足りない気がする。


 私は、ただの人間だ。

 水奈みたいに強い力があれば気にしなくていいし、雪女さんみたいに種族同士の婚約なら波乱も起きないだろう。


 本当に、私はこのまま婚約を進めていいのだろうか……。


「水喜様、今日も鍛錬ですか?」


「あ、こんにちは、ろくろ首さん! はい! いつでも動けるようにしているのです!」


「ふふっ。勇ましいですね。そんな水喜様に、羅刹様からのお届け物ですよ」


「え?」


 お届け物? しかも、羅刹様から?


 手渡された風呂敷を受け取ると、ろくろ首さんは一礼してスッと姿を消した。


「な、なんだろう……」


 気になって、その場に座り、風呂敷が地面に触れないよう気をつけながら開く。


 中には——服?


「――――わぁ!! すごく綺麗な……着物? いや、違う。スカートだ。しかも結構短い!」


 こ、これは羅刹様の趣味なのだろうか……。

 いや、なんにしろ今すぐ着てみたい!!


 すぐに部屋へ戻り、さっそく着てみた。


「すごい!! ぴったりだ!」


 藍色の布に、これは……ハイソックス?

 和服と洋服をミックスしたようなデザイン。すごく可愛い。しかも動きやすい。


 短いスカートだけど、下にはしっかりスパッツが用意されていて、色々と安心。


「あっ、そうだ!」


 この色合いなら、水奈からもらった兵児帯が合いそう。


 大切に箪笥へしまっていた宝物を取り出し、腰に巻く。

 長い兵児帯を横腹のあたりでリボンにしてみた。


「やっぱり、色合いがぴったりだ」


 動きやすくて体が軽い。

 それに、この布……汗も吸いそう。


「袖になら小さな武器も隠し持てるね」


 クナイくらいなら余裕で隠せる。

 何かあった時のために、羅刹様に相談しよう。


「ふふっ。好きな人の物に囲まれている感じで……本当に素敵。私、生きててよかった……」


 本当に、生きててよかった。

 嬉しい。胸がいっぱいで、涙が出そう。


 今まで虐げられてきた私が、こんな幸せを手に入れるなんて思わなかった。


 今まで、水奈のために気丈に振る舞ってきた。

 でも、辛かったし、苦しかった。

 死にたいと思ったことも何度もある。


 生きがいは水奈だけ。

 水奈がいたから、生きてこられた。


 でも今は、それだけじゃない。

 羅刹様がいる。優しいあやかしの皆もいる。


 私を拾ってくれた人たちがいる。


「…………必ず、羅刹様のお役に立てるようにならなければ」


 もっと強くなる。

 もっと、もっと強くなって、私が羅刹様を守れるようになる。


 女騎士に……なってやる!!


「――――随分と良い物を持っておるのぉ、嬢ちゃんや。少しだけ妾に触らせてもらえんかのぉ」


「――――え?」


 ……なにも、感じなかった。


 気配も、音も、匂いも。

 なにもかも。


 声をかけられた瞬間から存在が「発生」したみたいに、その人の気配は一切なかった。


 ゆっくり後ろを振り向くと——

 真後ろに、一人の女性が笑みを浮かべて立っていた。


「だっ――――」


 叫ぼうとした瞬間、口を手で塞がれた。

 抗おうとしたけれど、すぐに強烈な眠気が襲い——意識は落ちた。


 ※


「ふふっ。面白い術をかけておる服じゃのぉ。……早くこの場から離れんと、めんどくさいもんが来るな」


 水喜を抱えた女は、その場から忽然と消えた。


 直後——

 部屋の中へ、あやかし達が雪崩れ込む。


 その先頭には、焦った表情の羅刹。


「ちっ」


 部屋中に視線を走らせても、水喜の姿はどこにもない。


「まさか……羅刹様に報告するために戻ってきた時、尾行されていた?」


「わからん。だが考えている暇はない。我が服にかけた術も、一瞬で消されたようだ。急ぐぞ」


 報告に戻った百々目鬼と鴉天狗は、自分たちの失態を悔い、顔を青ざめさせている。


 そんな中——

 羅刹は拳を握り、歯を食いしばった。


「…………許せぬな」


「っ、羅刹様……?」


 百々目鬼が振り向いた瞬間、その顔は強張った。


 今まで見たこともないほどの怒気。

 その迫力に、百々目鬼だけでなく鴉天狗も震える。


「我の大事なものに触れ……我の嫁を襲った。許せぬ」


「ら、羅刹様っ、妖力が……!」


 怒りと共に、羅刹の妖力があふれ出した。

 拳を握りしめて抑えてはいるが、それでも漏れ出してしまい、周囲のあやかし達が思わず後ずさる。


「羅刹様、妖力があふれておりますよ。慌てて帰ってよかったです」


 そんな呑気な声をあげるのは、水奈を見張っていた狗神だった。

 狗神がポンッと羅刹の頭を叩くと、あふれ出た妖力は徐々に沈静した。


「狗神か……よかった」


「状況は貴方の様子でだいたい理解しました。加えて、私からの報告です」


「なんだ」


「水奈様が、両親の手によってある屋敷へ連れ去られました。おそらく水喜様も、そこに」


 羅刹は一瞬だけ目を見開いたが、狗神が落ち着いているのを見て、何か手を打っていると理解した。


「何か考えがあるのだな」


「ええ。水奈様には私の匂いをつけてあります。“ある屋敷”も把握済み。あとは動くだけです。……ただ、相手が」


「わかっておる。こんな芸当ができるのは九尾くらいだ。水喜の両親を操り、人間の負の感情を集めているのも同じだろう」


 狗神は頷いた。


 羅刹は細めた目で、夕暮れの空を見上げる。


「今すぐ動くぞ」


「わかりました。行きましょう。()()()()()へ」


 日が落ちる。

 羅刹の銀髪が足元まで伸び、爪が鋭く変わる。


 左右非対称の瞳が吊り上がり、口元から鋭い牙がのぞく——。


「行くぞ。我の嫁は——至急、返してもらおうか」

ここまで読んで下さりありがとうございます!

出来れば次回も読んでいただけると嬉しいです!


出来れば☆やブクマなどを頂けるとモチベにつながります。もし、少しでも面白いと思ってくださったらぜひ、御気軽にポチッとして頂けると嬉しいです!


よろしくお願いします(*・ω・)*_ _)ペコリ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ