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第27話 術

「行くぞ」


「うわっ!」


 ふわっと、浮遊感を感じたかと思うと、いつの間にか外に出ていた。

 いや、外と言うか、空!!


「お、落ちる落ちる!!!」


 目をつぶって衝撃に備えていたけど、意味がなかった。

 羅刹様がどこか、柔らかい所に着地したのがなんとなくわかる。


 ゆっくり目を開けると――……


「あっ、一反木綿さんだ!!」


「水喜さまぁ~、ここからは安全運転で行きますよ~」


 一反木綿さんが私と羅刹様を乗せて空を飛ぶ。


 日はもう落ちる。

 赤い世界が終わりを告げる。


「一反木綿、高浜家まで」


「わかりました~」


 えっ、高浜家?


「あの、羅刹様、なぜ高浜家に?」


「状況把握と、お主が一番気にしている妹の様子を見に行くのだ」


 あっ、気にしてくれていたんだ。

 嬉しいけど、申し訳ない。


「ありがとうございます」


「お礼を言われることではない。それに、夜の内しか我は大きく動けんから、今のうちにな」


 なるほど。

 あやかしの力が強くなっているのと、夜はさすがに二人は眠りの準備をする時間。


 街中だと賑わっている場所もあるけど、あの両親は……出かけていてもおかしくはないか。


 それに、血筋について話を聞いてからというものの、母と父をより一層信じられなくなった。

 もしかしたら、夜に外出してそれぞれがそれぞれの欲を満たしているかもしれない。


 そう思うと、嫌悪感しか感じない。


「今はあまり考え込むなよ。無駄な思考は動きを鈍らせる」


「す、すいません」


 そ、そうだ。

 余計なことを考えてはいけない。


 今は、水奈の安全を第一に考えよう。



 一反木綿さんの移動は、車と同じくらいの速さだ。

 でも、風圧で体が吹っ飛ばされるようなことはないし、痛くもない。

 多分、羅刹様が守ってくれているのだろう。


 景色を見回していると、徐々に見覚えのある屋敷が見えてきた。

 闇に溶け込むように佇む屋敷は、私が元居た高浜家だ。


 もう、本当に古い。建て替えとかは考えていないのだろうか。

 羅刹様の屋敷はすごく綺麗なのに。


「着いたぞ」


「は、はい」


 上から屋敷を見た事がないけど、本当に大きいなぁ。

 掃除が大変だったのも頷ける。


 私は、掃除が好きだったから苦ではなかったけど。


「当然だが、まだ動き回っている人間がいるな」


「え? そうなんですか?」


「あぁ」


 見下ろしてみるけど、人が歩きまわっている様子は見えない。

 人の気配も感じないし、夜の羅刹様の感覚は鋭いらしい。


「まず、裏に降りるぞ。そこからは、我の術で我らの姿を認識できないようにする」


「そんなことも出来るのですか?」


「これは昼夜問わず出来るぞ。だが、昼の我は怯えすぎてすぐに解除されてしまうのだ」


「可愛い」


「阿保なだけだ」


 いや、可愛いですよ。

 多分、見つかってしまうかもしれないという不安で怯えているのでしょう

 可愛い、安心してと私は言いたい。


 一反木綿さんが羅刹様の言う通りに、人の気配を感じない裏庭へと降りた。

 足音にも気を付けて、羅刹様の手を借りながら足を地面に付ける。


 一反木綿さんは一度、この場から離れてくれと指示を受けていた。

 すぐさま物音もなく、上空へと姿を消す。


「では、行くぞ。姿は見えなくなるが我らの話し声は聞こえてしまうし、ぶつかってしまうと術が解けてしまう。油断せず、周りに気を付けるのだぞ」


「わかりました」


 そっか、認識されないだけで、そこには私達は存在する。

 だから、ぶつかってしまえば存在がばれてしまうのか。


 高浜家には、そこまで多くの女中は雇っていないから見つかる確率は低いと思う。

 私がいたから家事とかはそこまで困っていなかっただろうしね。


 金の節約で雇っていなかったのがここで裏目に出ていて、少し笑えるわ。


「では、目を合わせろ」


「え?」


 わっ、顔が近い。

 黒と赤の瞳が私を見つめる。


 やばい、心臓がうるさい。

 心拍数が上がる。な、なに?


「――――――――よし、術はかけたぞ。って、どうした?」

「なんでもありましぇん」


 じ、術をかけていただけか。


 羅刹様が離れたのと同時にその場に蹲ってしまった。

 だって、胸が痛いんだもん。心臓が飛び跳ねて、頭もボォ〜としてしまった。


 な、何だったんだろう。


「よくわからんが、行くぞ。我から絶対に離れるな」


「は、はい」


 羅刹様が先導して、裏口から屋敷の中に入る。

 私も後れを取らないように、足音も気を付けて歩く。


 屋敷を歩いていると、女中とどうしてもすれ違う。

 けど、誰も私達を見ようともしない。


 いや、気づいていない。

 すごい、ここまで人に気づかれないで歩いたことはなかった。


 いつも、視線は感じていた。

 もちろん、蔑むような視線を。


 ――――――――トントン


 ? 肩を叩かれた。

 前を歩いていた羅刹様がいつの間にか隣まで下がっていて、足を止めた。


 どうしたんだろう。

 私を見て何も言わない羅刹様を見ていると、急に手を伸ばしてきた。


 額にトンと指を添えると、頭の中に羅刹様の声が聞こえて来た。


『妹の部屋に案内しろ』


 あぁ、そうか。

 声を出せないから、頭に直接教えてくれたんだ。


 小さく頷き、今度は私が前を歩く。

 けど、曲がり角に差し掛かると、羅刹様が私の着物の裾を引っ張る。


 引っ張られた時は大抵、女中が曲がり角から現れる。

 私も気を張っているけど、気配を感じない。


 術をかけられているからなのかな。

 感知能力が鈍っている。


 周りに気を付けながら歩いていると、水奈の部屋の前にたどり着いた。

 でも、襖を開けることは出来ない、よね?


 だって、気配を感じられてしまえば周りに気づかれてしまう。

 どうするんだろうと羅刹様を見ると、周りを見回していた。


 今は、運良く女中が周りにいない。

 それがわかった羅刹様は、指を鳴らした。


 瞬間、体が軽くなる感覚になった。

 もしかして、術を解いた?


「入るぞ」


「え?」


 ――――――――バンッ!!


「ひっ!?」


 ら、羅刹様!?

 襖を開けると時はせめて一声かけてあげてください!!


ここまで読んで下さりありがとうございます!

出来れば次回も読んでいただけると嬉しいです!


出来れば☆やブクマなどを頂けるとモチベにつながります。もし、少しでも面白いと思ってくださったらぜひ、御気軽にポチッとして頂けると嬉しいです!


よろしくお願いします(*・ω・)*_ _)ペコリ

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