第25話 見えない気配
羅刹様に私の秘密がばれてしまってから数日間。
私は部屋で一人、考えていた。
今回の私事に、羅刹様を本当に巻き込んでしまっていいのか。
でも、何か行動を起こす前には報告してほしいと言っていた。
報告は絶対しなければならない。
でも、羅刹様に迷惑もかけたくない。
それとは別に、あの空気。
羅刹様に私が、私の事なんてなんとも思っていないと言い放った時に流れた空気も気になる。
大蛇さんは大笑いしていたし、あれは何だったのだろうか。
わからない、わからない時は、外の空気を吸って筋トレするに限る!!
と、言う訳で屋敷の裏まで歩きます。
流石に、屋敷の前だと目立つし、他のあやかし達の邪魔にもなってしまうしね。
やっぱり、頭を使うには外の風を浴びながらだよね。
そんなことを思いながら屋敷の周りを歩いていると、狗神さんが歩いている姿を見つけた。
「狗神さん」
声をかけると、ゆっくりと振り向き笑みを浮かべてくれた。
「水喜様ではありませんか。こんにちは、お元気ですか?」
「はい。元気ですよ」
「そうですか。それは良かった。では、私は失礼しますね」
あっ、そのまま立ち去ろうとしてしまった。
待って!!
――――――――ガシッ!!
咄嗟に狗神さんの腕を掴み、歩みを止めてしまった。
「いかがいたしましたか?」
「あの、少し相談に乗っていただけませんか?」
「相談、ですか?」
「はい」
狗神さんは少し考えた後に、なぜか深い皺を眉間に寄せてしまう。
お、怒らせてしまっただろうか。
「……わかりました」
「な、なんか、すいません……」
「謝ると言うことは、悪いと思っているのでしょうか? でしたら、この手を離していただけませんか?」
「話は聞いてください!!」
「わかりました」
あっ、私に見せないように深い溜息を吐いた。
めんどくさい事に巻き込まれたなぁって、思ってそう。
ご、ごめんなさい。
でも、話は聞いてください。
私達はその場に座り、私から相談内容を話した。
「復讐の件を知らされてしまったのですが、いつ、どのタイミングで詳細をお話をした方がいいのでしょうか。すべての復讐内容を考えてからか。いや、その前にもう話した方がいいのか。どう思いますか?」
あまり時間を取らせるわけにはいかないと思って、すぐに本題を端的に聞くと、狗神さんは「やっぱり」と呟いた。
「私も詳しくはわかりませんが、話せる時間があるのなら、内容がまとまっていなくても伝えてみてもいいと思いますよ?」
「ですが、それだと羅刹様のお時間を取らせてしまいます。これは私事なのです、本当ならお話をしないで事を進めたいのです」
「それなら、秘密裏に進めればいいのでは?」
「それは絶対に駄目です」
「なぜ?」
絶対に駄目、駄目ですよ、そんなの。
だって、そんなことしたら――……
「羅刹様に嘘を言うことなんて、私は絶対に出来ません。死にますので、途中で」
「え? いや、殺されるようなことはないと思いますよ? 少しは怒られるかもしれませんが…………」
え、怒られるの?
羅刹様に、怒られるの? 私。
『まったく、なぜ何も言ってくれんのだ水喜よ。めっ、だぞ』
「…………死にますぅぅぅぅううう…………」
「変なことを想像したのだけはわかりました」
『めっ』と言われて頭をポンと叩かれる。
あぁ、それはそれでいいな。今度怒ってくださいとお願いしたら怒ってくださるかしら。
「で? どうするのですか?」
「素直に話して羅刹様に撫でられるか、言わないで羅刹様にめっと怒られるかの選択肢ですか? どうしましょう、どっちも経験したいです」
「正気に戻ってください」
「いてっ」
狗神さんに痛くない程度に頭を叩かれました。
思わず口から出たけど、まったく痛くない。
「私が思うに、話した方が事がスムーズに進むと思いますよ。なにより、今の方が動きにくいでしょう?」
「ま、まぁ……」
「それなら、素直に話してスムーズに事を済ませた方がお互いの為では? 私も、羅刹様から命令されれば貴方に協力しますよ」
「めんどくさいですけど」と、付け加え顔を逸らしてしまった狗神さん。
ツンデレなのかな、言葉は優しいけど行動は少し冷たい。
「ありがとうございます、そうですよね。約束をしましたし、もう少し頭の中で内容がまとまり次第、羅刹様にお伝えしようかなと思います」
「それが一番かと」
「ありがとうございます。あと、もう一ついいですか?」
聞くと、引きつった笑みを浮かべながら「どーぞ」と促してくれた。
あ、ありがとうございます。
「羅刹様は私の事は何とも思っていないと思うのですよ」
「――――ん?」
「なので、その事を勢いのままに言ってしまったら、微妙な空気が流れてしまって……。羅刹様は頭を抱えるし、大蛇さんは大笑いするし。何だったのかなぁって思って」
聞くと、狗神さんも笑いをこらえて顔を逸らし、肩を震わせている。
「あ、あの、なんで笑っているのですか?」
「い、いえ。そうですか、そう思っていらっしゃるのですね」
コホンと咳ばらいをし、狗神さんが優し気な笑みを私に向けてくれた。
「もう少し、羅刹様を見てあげてください。あのお方は、口にするのが苦手ですが、行動には現わしているはずですよ」
それだけを言い残し、狗神さんは立ち上がり、そのままいなくなってしまった。
「ど、どういう、こと?」
んー、駄目だ。まだ、頭がぐちゃぐちゃだ。
筋トレしてすっきりしよう。そして、改めて考えよう。
「…………っ、気配??」
屋敷の裏から、なんか気配を感じた。
でも、一瞬。気のせいだったかな。
「…………そういえば、屋敷の裏って、ヒトナキ山という、不穏な山があるんだったよね」
んー、気になるけど、今はもう何も感じないし、気のせいだったかも。
それより、筋トレしますか~。
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