第23話 秘密の力
すべての洗濯を干し終わり、籠を脱衣所に戻す。
今はもうお昼、あやかし達は休憩がてらご飯を食べている時間だ。
私も、部屋に戻ってご飯を食べよっと。
今日は何だろう、和食かな?
時々洋食であるオムライスが出てくるのには本当に驚いたなぁ。
あやかしの世界で洋食って、違和感しかなかったけどすごくおいしかった。
今日のご飯を妄想しながら廊下を歩いていると、なんとなく知っている気配を感じた。
後ろを振り向くが、誰もいない。
「気のせい?」
でも、まだ気配は感じる。
風が、不思議な気配を運んでいる感じ。
「一体、なにっ――――!!」
後ろから抱き着かれた。
やばい、やばい!!
――――ドカン
・
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・
「何があった!!」
足音と共に、羅刹様が焦ったように来てくれた。
「――――イダダダダダダダダダダダダダダダダダダ!!!!」
絶対に、逃がさない。
この変態を羅刹様に渡さないと!!
「羅刹様!! 侵入者です!! 早く捕まえて牢屋に入れましょう!!」
地下に、侵入者を閉じ込めておくための牢屋があるのは最初に雪女さんから教えてもらった。
あの時、私が変なことしたら閉じ込めてやるからなと言う視線を感じたから、覚えている。
私が鼻息荒く伝えていると、羅刹様が呆れたように頭を抱えてしまった。
あ、頭を抱えていないでこの人を早く捕らえてください!!
「…………落ち着け」
「でも!!!」
「よく見てやれ。今お主が技を仕掛けている奴、見覚えないか?」
「え? あっ」
後ろから抱き着かれた私は、咄嗟にまず、相手の脛をかかとで蹴った。
痛みで力が抜けたところを抜け出し、相手の左手を掴み、捻りあげる。
そうすることで、相手は耐えられない程の痛みに見舞われる。
そのように相手を逃がさないように拘束していたら、羅刹様が来てくれたのだ。
羅刹様に言われて、拘束していた人をよく見ると、確かに見たことがあるイケメンだった。
「えぇっと、すいませんでした」
「いや、私の方こそ、いきなり抱き着いてすいません。やはり、綺麗な女性は一度だきつき――……」
「何か言ったか?」
「ナンデモアリマセン」
羅刹様の鋭い視線が、以前ショッピングモールで出会ったあやかし、大蛇さんを突き刺した。
あぁ、顔が青くなってしまった。
手首も痛そうにしているし、流石に申し訳ない……。
立つのを手伝おうと手を差し出したけど、横から大きな手が伸び優しく包まれた。
「こいつなら一人で立てる、問題ない」
「は、はい」
「いや、借りようと手を伸ばしたのですか?」
羅刹様が私の手を下ろすのと同時に、大蛇さんが手を出していたらしい。
なにこれ、コント?
「お前は一人で立て」
「はいはい」
へぇ、普通に立つ。今はもう、痛くないのかな。
さっきまで痛そうに摩っていたのって、もしかして手を貸してもらおうと思っていたからとか?
いやいや、仮にそうだとしても、こんなすぐに痛みが引くものなのかな。
骨が曲がるほどに強く捻りあげたのに。
そこが、あやかしと人間との違いなのかな。
「ん? どうしたんですか?」
「いえ。もう左手首、痛くないんですか?」
「今はもう大丈夫ですよ。もしかして、心配してくださいましたか?」
っ、美形の顔が近づいて来る。
やばい、性格がどんなでも、イケメンはイケメン。眼福だ。
――――ぐいっ
「わっ!」
「おや?」
後ろへと引き寄せられたかと思ったら、羅刹様のご立派な胸筋に支えられた。
「これ以上近づくのは許さないぞ?」
「…………へぇ」
なんか、二人が睨み合っている。
「え、えぇっと。あの、大蛇さんはなぜこんな所に?」
怖い空気だ。
いや、イケメンが睨み合っているのを見るのは好きだけど、それは小説の中だけでいいんだよ。
実際は、空気が怖いから早く切り替えたい。
「そうそう。君の家族について調べていると、気になる情報を手に入れたのですよ。なので、確認しに来ました」
「気になることですか?」
なんだろう、胸騒ぎがする。
聞いてはいけない、そんな気がする。
けど、聞かなければならない。
そんな気も、する。
「お時間、ありますか?」
大蛇さんが問いかけて来る。
聞かないと、でも、怖い。
「…………その話はもちろん、我も聞いていいんだよな?」
「当たり前です。貴方にも関わりますので」
え、羅刹様も関わる、こと?
「それって、私の家族が羅刹様に迷惑をかけようとしてるという、こと?」
「その可能性があるかもしれない」
「聞きます、今すぐ聞きます!! 教えてください!!」
羅刹様に迷惑が掛かっている、そんなの駄目だ。
私の家族については、私が解決しないといけない。
羅刹様は関係ない!
「わかりました。なら、一つ部屋を借りてよろしいですか?」
大蛇さんが羅刹様を見ると、コクンと頷いた。
「では、我の部屋に行こう。誰も入らないようにろくろ首と狗神に伝えておく」
言った瞬間、黒い霧が羅刹様の後ろに現れた。
中から現れたのは、ちょうど名前を言ったろくろ首さんと狗神さん。
「「お任せください」」
「任せた」
羅刹様の声って、あやかしの耳にいつでも届いているのかな。
なんか、すごい、あやかしって。
「では、行こう」
羅刹様の案内の元、すぐに目的地である羅刹様の部屋にたどり着いた。
中に入り、丸テーブルを中心に、座布団の上に座る。
「では、さっそく本題に入らせてもらう」
「よろしくお願いします」
一息つき、大蛇さんが話し出した。
「水喜さんの持っている力について調べていると、高浜家の家系にたどり着きました」
「まぁ、私は高浜家ですので……」
「そこで、面白いものを発見したのですよ」
面白いもの?
大蛇さんが笑っている、イケメンが笑っているのは目の保養になるけど、今は普通に怖い。
「高浜家は、実は祓い屋ではないようですよ」
「――――え!? は、祓い屋、じゃない!?」
でも、両親は、高浜家は代々受け継がれてきた祓い屋で、高浜家の人間は何かしらの力を必ず宿すと聞いて……。
「高浜家は祓い屋ではなく、ただの占い師だったみたいです」
「う、占い、師?」
「はい」
占い師って、星座占いとか?
「元は、陰陽師として活躍していた先祖がいたらしいのですが、血が徐々に薄れてしまったらしいのです」
「陰陽師か。力が弱まっているから占いしか出来なくなったということか?」
「そんな感じだと思いますよ。代々血が薄れ、力が弱まり、もう陰陽師として活動が出来なくなってしまったと考えています」
そ、そんな話一切聞いたことがないんだけど。
「だから、少し不思議に思ったんですよ。だって、力が弱まった陰陽師の血で、祓い屋として活躍が出来る訳がない。だって、受け継ぐ力など、ないのだから」
っ、それって、まさか。
「水奈は、両親と血が繋がって、ない?」
「そう。まぁ、両親と言うより、母と血が繋がっていないらしいですよ」
「えっ…………」
それって、父が浮気をしていたって、こと?
「水喜はどうなんだ?」
「しっかり、あの両親の子供ですよ。だから、祓い屋としての力がないのは当然です」
大蛇さんに鋭い視線を向けられる。
もう、知っているんだ。
私がずっと隠していた秘密を。
「…………大蛇さん。私に祓い屋としての力がないことはもう知っているんですよね」
「はい。調べていくことで知りましたよ」
それじゃ、誤魔化しても意味は無いか。
「どうした?」
首を傾げている羅刹様が可愛い。
「えっと。私は以前からお伝えしている通り、祓い屋としての力はないのです。ですが、全く力がないわけではないのですよ」
これは、親に利用されないために、妹にしか伝えていない秘密。
妹に「絶対に誰にも言わないで」と言われ続けてきた秘密。
「私、未来予知が出来るんです」
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