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第19話 解散

「答えられんのか? それならもっと痛い目に合うが、いいか?」


「い、言う! 言うからやめてください!!」


 なんか、拷問場面を生で見ているような気分だ。


 実際には、拷問しているわけではない。

 けれど、雰囲気が私にも流れてきて、その場から動けない。


「なら、早く答えよ」


 …………少しの沈黙の後、大蛇さんがやっと、口を開いた。


「…………その娘は、何か強い力を隠しています。それを感じ取ったのですよ、出会った時にね」


 隠された力……筋力かな。

 って、そんなことはないか。


 まさか、()()か?


「それは、どのような力だ?」


「貴女ですら祓われてしまうような、祓い屋の力だ」


 なら、()()ではないなぁ。

 あれは、祓い屋としての力ではない。


 確かに珍しい力かもしれないけど、祓い屋として使えるかどうかは疑問だ。

 いや、疑問すら抱かない。


 あれは、祓い屋に要らない力だ。


「そうか。面白い情報を手に入れた。だから、主はその力を手に入れようとしたのだな」


「だったら悪いですか? 今の段階では、まだ貴方のモノになったわけではないでしょう?」


 え、私はまだ羅刹様のものにはなっていないのですか?

 唖然としながら羅刹様を見るけれど、視線に気づいてくれない。


「まだ、婚約段階。まだ、完全に貴方のものではない。でしたら、今私が奪っても特に問題ありませんよね? だって、貴方のではないのだから」


 冷や汗を流しながらも、強気に言い切った大蛇さんの態度に、羅刹様はなにも言わない。


 もしかして、言い返せないの? 

 待ってくださいよ、私はもう貴方にすべてを捧げるつもりですよ?


 ハラハラしていると、羅刹様がこちらを見た。

 視線がかち合った。な、なに?


「――そうか。お主は昼の我が縁談を出したことで渋々こちらに来た――……」


「渋々ではありません! 私はイケメンである貴方の元に嫁ぎたいと思い、屋敷へと来たのです。決して、渋々ではありません!!」


 羅刹様がとんでもないことを言いそうになっていたから、慌てて切ってしまった。


 まだ婚約者だったとしても、旦那様になる予定の人の言葉に逆らっては、首を斬られかねない。


 けど、言いたかった。

 私は、決して渋々来たわけではないと。


「無理はしていないのか?」


「無理していません。本気です。本気で、私はイケメンである貴方の妻になりたいと思っています。イケメンである貴方の役に立ちます。好みのお姿をしている貴方のために動きたいのだと!! 私は本気で思っています」


 鼻を鳴らして言い切ると、なぜか大蛇さんが噴き出した。

 羅刹様もなぜか眼を丸くしている。


「あの、どうしました?」


「いや、まさかだが、お主は我の顔しか見ていないのか?」


「え? ま、まぁ、顔が決め手で羅刹様の所に出向いたのは否定しませんが……」


 素直に言うと、冷たい空気が流れた気がした。

 あ、足元が冷たい。この悪寒は、やばいかも。


 ら、羅刹様が怒ってる!?


「あ、で、でも、出会ってからは考え方が変わりましたよ!! 最初はやはり写真しか情報がありませんでしたが、今はお話もして一緒にお買い物をして思いました。優しくて、芯のある方だと。ただ、かわいいだけではないと。ただのイケメンではないと!!」


 もう一度鼻を鳴らして言い切ると、今度は複雑そうな顔を浮かべてしまった。

 そして、またしても大蛇さんは噴き出した。


「いででででででで!!!! 私は悪くないでしょう!!」


「うるさい、黙れ」


 あっ、羅刹様が大蛇さんの腕を縛り上げた。

 そういえば、まだ捕まったままだったっけ。


 茫然と二人を見ていると、羅刹様が咳払いをして私の方へと顔を向けた。


「先ほどまでの言葉はさておき、お主は我の元にこれからもいたいと思ってくれておるのか?」


「はい!!!!」


「部屋一帯に声が響くほどか。それなら安心だ」


 あっ、夜の羅刹様が笑った。

 か、かっこいいかわいい綺麗死ぬ。


「だ、大丈夫か?」


「大丈夫です。眩しいだけなので」


「夜だが?」


 いけないいけない。

 意識を失うところだった。


「あのぉ〜。もうそろそろ拘束解除していただけませんか? もう、胃もたれしそうなので帰りたいです。あと、店閉めもしないと」


「駄目だ。もう、水喜に手を出さないという約束をするまでははずさん」


 …………そういえば、この二人の空気感。なんとなくだけれど、初対面ではない気がする。


 昼の羅刹様は初対面な気がするけど、夜の羅刹様は慣れているというか。

 大蛇さんも態度がなんとなく、初対面じゃない。


 お互い、古くからの知り合いのように感じるのは、気のせい?

 目を丸くしていると、羅刹様が私を見た。


「どうした?」


「あの、お二人は本当に初対面ですか? なんとなく、違う気が…………」


 聞くと、大蛇さんが先に口を開いた。


「夜の羅刹とは、昔からの仲ですよ。昼の羅刹とは今回が初めてだけれどね」


「そ、そうなんですか? でも、夜でも朝でも、記憶は共有されているのではなかったでしょうか」


 確か、最初に会った時にそんなことを言っていた気がするのだけれど、どういうこと?


 私の疑問が筒抜けだったのか、今度は羅刹様が教えてくれた。


「以前も話したが、我が昼の我を押さえつけている時は、記憶も感情も共有されん」


「つまり、夜の羅刹様は今、昼の羅刹様を押さえつけているということですか?」


「今はもうしていないけどな。昼に出会ってしまったから、もう押さえつけておく必要はなくなった」


 へぇ、それは納得した。

 けど――……


「なぜ、今まで押さえつけていたんですか?」


「あの馬鹿を昼に近づかせたら関係性がおかしくなるからだ」


 縛られている大蛇さんを見ると、舌を出してテヘッという、なんともむかつく顔を浮かべていた。


「確かに会わせたくはないですね。昼の羅刹様は純粋で可憐な穢れのない方なので」


「だろ」


「どういう意味でしょうか??」


 夜の羅刹様が言いたいことはわかりました。

 それで、今日はもう解放されるのだろうか。


「それで、話を戻すが、もう水喜には手を出さんな?」


「わかりましたよ。仕方がありませんね」


 顔をそらした大蛇さんがぶつぶつと何かをつぶやいている。


「こんなゴリラ女は、私では捕まえられませんしね」


「何か言いましたか?」


「ひっ!!!」


 ゴリラ女と言いましたかあ?

 もしかして、投げ飛ばされたいのかなぁ??

 指を鳴らしながら近づくと怯えてしまった。


 怖がるのなら最初から言わないでよ、まったく。

 ゴリラは、自分で言うのはいいけど、人には言われたくありません!


「では、今度何か変に手を出そうとすれば、今回のようにはすまないぞ。昼の我とも共有されたから、昼も油断はするなよ」


「もう手は出しませんよ。返り討ちにされるのが目に見えていますからね。すべてを力で解決しそうな女性なんて怖くて手すらのばせなっ――……」


 ――――ドゴンッ


「なにか、言いましたかあ?」


「ナンデモアリマセン」


「そうですか、それならよかったです」


 大蛇さんの隣の床に穴をあけてしまった。

 怒りに身を任せるのは良くないですね。


 落ち着かないと、深呼吸、深呼吸。


「では、今回はここで解放してやる」


 そう言うと、羅刹様が腕を下ろした。

 すると、大蛇さんが急に立ち上がり、自由になった腕を交互に見た。


「本当に、夜のあなたは油断できませんね」


「我だからな。それでは、我らは行く」


 背中を大蛇さんに向け、私の手を握り、スタッフルームから外に出た。

 そのまま、今日は疲れたと一反木綿を呼び、そのまま屋敷へと帰った。


ここまで読んで下さりありがとうございます!

出来れば次回も読んでいただけると嬉しいです!


出来れば☆やブクマなどを頂けるとモチベにつながります。もし、少しでも面白いと思ってくださったらぜひ、御気軽にポチッとして頂けると嬉しいです!


よろしくお願いします(*・ω・)*_ _)ペコリ

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