第16話 胡散臭い人
バレッタを自分でも見るために、一度トイレに入った。
早く出ないと羅刹様をお待たせしてしまうけれど、いつまでも見てしまう。
羅刹様からの初めての贈り物、にやけが止まらない。
「――――やばい、だらしない顔を浮かべていないで早く戻らないと」
手を洗って、ハンカチで拭きそのまま走って羅刹様の元に戻る。
「えぇっと…………人だかり?」
人だかりと言う程でもないけれど、羅刹様に三人の女性が声をかけている。
「あれって、ナンパ??」
まぁ、イケメンだもんね、普通に逆ナンされるよね、納得!
って、さっきお店の前で待っている時も声をかけられたと言っていた。
高確率で、一人になると逆ナンされてしまうのか!!
もしかしたら、逆ナンで羅刹様が消耗しているのかもしれない!
羅刹様がすごく困っているし、早く助けに行かないと!
でも、困っている羅刹様もものすごく可愛い!!
眉を下げて、なんとか応対しているみたいだけど、焦りが顔に出ていて超かわいい。ずっと見ていられる。
「――――あっ」
羅刹様と目が合った。
『た す け て』
口パクで助けを求められましたぁぁぁぁあ!!
今から行きます!! 涙目を私以外に向けないで下さいぁぁぁああい!!
「すいません、遅くなってしまいました」
ハンカチをポケットに入れて、お姉さん風な声を出すように意識して羅刹様に声をかける。
女性達は私の姿を見て、唖然とする。
ふふん、見た目はまぁまぁ悪くはないからね、私。
食生活とかも整ってきたから、肌のあれとかも治まってきたいし。
堂々とした立ち居振る舞いすれば、相手を引かせることくらいは出来る、はず。
思っていた通り、女性たちは私を見ながらも、道を開けてくれた。
「では、行きましょう」
「あ、あぁ」
女性陣に一礼をして、するりと羅刹様の腕に私の腕を絡める。
そのまま、離れるように歩き出した。
後ろを確認すると、女性陣が顔を赤く染めて私達が去るのを見続けている。
ふふ、羅刹様は後ろ姿でも美しいでしょう?
カメラに納めなければ、いくらでも見ていいわよ~。
「はぁ……」
「あ、大丈夫ですか?」
「大丈夫だが、少々疲れたなぁ」
さっきより顔色が悪い。
もしかしたら、羅刹様が人酔いしているのかもしれない。
「どこかで休憩しましょう? ショッピングモールですし、カフェとかに入って一息つきましょう」
「すまない」
「いえ。もとはと言えば、私がお手洗いに行ってしまったから起きた事故なので」
私が一緒にいれば、少なからず牽制はできたはず。
バレッタは家に帰ってからゆっくりと拝めばよかっただけのこと。
私の完全なる落ち度。もっと考えてから行動するべきでした。
近くのカフェ、どこかいい所はないかな。
「あぁ、人が多い……」
さすが、人気のショッピングモール。
カフェも人だかりができていて、休める席があるのかわからない。
並んでいるし、ずっと立ちっぱなしってしんどいよね。
そう言えば、今って何時だろう。
雑貨屋さんに入る前も歩いていたし、夕方位になっていてもおかしくはない。
周りを見ると、親子連れは少なくなり、逆に学生さんが多くなってきた。
学校帰りに寄っていると推測すると、やっぱり夕方位かも。
「あの」
「は、はい。あの、逆ナンでしたら後程――」
声をかけられ咄嗟に振り向くと、そこには羅刹様には負けるけれど、長髪イケメンが立っていた。
身長が高く、藍色の腰まで長いロングはしっかりと手入されているらしく、艶がある。
女性のようにも見えるけど、体の作り的に男か。
白いワイシャツに、黒いスーツでわかりにくいけど、程よく筋肉がついている。
ニコニコと、目だけが笑っていない笑みを向けてくる。
胡散臭い奴だな。なんとなく、関わってはいけない気がする。
羅刹様を少しだけ後ろに下がらせて、前に出る。
笑顔を張り付け、男性を見上げた。
「すいません。今、少々急いでおりまして」
「あ、いきなり声をかけてしまい申し訳ありません」
頭を下げられても困る。
早くこの場から去りたい。
謝るくらいなら早く解放してほしい。
早く羅刹様を休ませたい。
「では、これで失礼しますね」
「あ、あの。お連れの方、顔色が悪そうですが、大丈夫ですか?」
羅刹様を見て、わざとらしく眉を下げている。
こいつ、狙いは羅刹様か?
「大丈夫ですよ、お気になさらず」
またも去ろうとするけど、男性は私達を解放してくれない。
「もしよければ、私のお店に案内しますよ」
「いえ、けっこっ――――私のお店?」
「はい」
もしかしてこの人、経営者?
だから、胡散臭いのか?
これは、私の勝手な偏見だけど。
「今はおそらく、休めるところはほぼ埋まっていますよ。今は緊急事態、私の従業員休憩室に案内します」
言いながら、私の肩に手を置き項垂れている羅刹様を覗き込んだ。
瞬間、驚いたかのように目を開き、固まってしまった。
どうした?
羅刹様のイケメン度の高さに驚き、固まってしまったのか?
「…………では、ご案内します」
「ありがとうございます。ですが、手を離してください。羅刹様は私が運びます」
「羅刹様、ですか」
「? は、はい」
何だろう。なんか、空気が変わった気がする。
この人についていっても大丈夫なのだろうか。
「わかりました。では、こちらです」
私に背を向け、歩き出した。
不安はあるけど、ここで断って休む場所が見つけられなかった方が羅刹様に負担がかかってしまう。
ここは、ついていくしかないかも。
「いかがいたしましたか?」
「…………いえ、なんでもありません」
もし、仮にこの人が羅刹様を襲おうとすれば、私が守ればいい。
無駄に体を鍛えていたわけではないんだからね!!
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