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第13話 ヒトナキ山

 次の日、私はジャージに着替え、屋敷の前へ移動した。

 そこで、いつもの日課である筋トレ開始。


「フン!! フン!!」


 ストレッチの後は、腕立て伏せ。次に腹筋、背筋。

 いい汗が流れて気持ちがいい。


 今日も天気がいいから、風も気持ちがいいし、筋トレ日和だ。

 はぁ、ずっと筋トレしていたい。


「水喜様。もうそろそろ逢瀬のご準備をいたしませんか?」


「あ……。そ、そうです、よね」


 私が筋トレをしている間、羅刹様は仕事をしているから急がなくてもいいと聞いていた。

 けど、確かに待たせすぎては駄目だ。


 もっとしたいけど、汗もかいたし、今日はいいか。

 高浜家にいる時も、長く出来る時と出来ない時があったし、短縮版で行こう。


 残りの筋トレメニューを終わらせて、百々目鬼さんが準備してくださった服へと着替えた。


 用意されていた服は、ワイドパンツに白いノースリーブ。上に羽織るように透けるくらい薄い、黄色の上着。


 あとは、肩掛け鞄。靴はスニーカーを準備してくださいました。


「ラフな感じですね」


「羅刹様があまり肌を出させ過ぎるのは駄目だとおっしゃりましたので」


 あら~、羅刹様、可愛い。

 かっこいいだけではなく、かわいらしさも兼ね備えるとは、最強の婚約者様です。


「準備は出来たか?」


「はっ――――イケメンがイケメンになったぁぁぁああ!!!」


「は?」


 スキニーパンツが羅刹様の細長い足を際立たせ、Tシャツの上には黒色の上着。

 ポケットにはお財布が入っており、チェーンが繋がれている。


 チェーンは、女性のロマンです。

 あ、鼻血が……。


「よ、よくわからんが、行くぞ。いいか?」


「は、はい。あ、でも、どのように行かれるのですか?」


 歩いて行くには、ここは田舎。

 どこに行くかにもよるけれど、移動手段は必要だろう。


 田舎だったら、バスかな。でも、一時間に一本すら走っていない印象だけど。

 そんなことを考えていると、予想外の返答に私は思わず唖然としてしまった。


「飛んでいく」


「え? 飛んで??」


「一反木綿」


 羅刹様が言うと、どこからともなく白い布、一反木綿が現れた。


「お呼びですか、羅刹様」


「我らを街にある大きなショッピングモールまで連れていけ」


「かしこまり!!」


 あ、私達の前に降りて、背中? を出してきた。


「バランスが難しいから、我から離れるなよ」


「は、はい」


 羅刹様が乗り、私に手を差し伸べてくる。

 なんか、淡々としているなぁ。


 そこもまたかっこいいですがね!!

 でも、百々目鬼さんから逢瀬の言葉を聞いただけで羅刹様は慌ててしまっていた。


 女性慣れはしていない、はず?

 でも、今はすごく手慣れたように私をエスコートしてくださる。


 まぁ、百々目鬼さんや雪女さんが近くにいるんだもんね。

 女性の扱いに慣れていてもおかしくはないか。


 手を借りて、一反木綿に足を乗せる。

 た、たしかにバランス難しい。けど、鍛えてきたし、これなら大丈夫!!


「筋トレの成果か? 体感が鍛えられておるのだな」


「はい」


 一反木綿に羅刹様が座り、膝の上に私が座る。

 すると、私達に気を使いながら、一反木綿が空中へと上がった。


「では、いってまいるよ~」


 呑気な一反木綿さん。

 下にいる百々目鬼さんに手を振っている。


「お気をつけて。羅刹様、絶対に最後までお守りくださいね」


「…………出来る限りは」


「はぁ…………」


 あっ、百々目鬼さんが呆れてため息をついてしまった。

 ふふっ、大丈夫ですよ。


 私は、守られるだけの女ではありませんから!!


 屋敷から出て、青空が近くなるくらいに高くまで一反木綿が空へと舞い上がる。


 昨日、見上げていた桜の木が小さくなった。

 雲が近く、風が気持ちいい。


「わぁ、空って、こんなにも気持ちがいいんですね」


「そうだな」


 羅刹様も、口元に笑みを浮かべている。

 楽しそう、良かった。


「本当に、気持ちがいい――ん?」


「…………なんだ、この気配」


 なんだか、田舎の田んぼや自然を眺めていると、生暖かいというか。

 肌に巻き付くような気配をかすかに感じ始めた。


「えぇっと、これって、なんかの気配ですか?」


「やはり、祓い屋だな。こんな微かな気配を感じ取れるのか」


「ま、まぁ。なんとなく、ですけど……」


 羅刹様が私の頭を撫でながら、周りへと視線を彷徨わせる。


「――――もっと奥だな」


「奥……」


 羅刹様が見ている方向には、大きな山がある。

 あの山って、たしか名前が”ヒトナキ山”。


 あの山に入ると、絶対に戻ってこれないという噂があったはず。

 だから、人は誰も近づかず、閉鎖されていると聞いたことがある。


「あの山は確か、高浜家が一度祓いに向かったはず。だけど、誰も戻らず、失敗。その後からは閉鎖になったと聞きましたよ」


「なるほどな。祓い屋が駄目だとすると、今の我では太刀打ちできんな」


「え、でも……」


 こんなまとわりつくような気持ちの悪い気配、放っといてもいいの?

 不安に思いながら羅刹様をみると、困ったように笑った。


「安心しろ。夜の我が一度調査に向かうだろう。その方が安心だ」


「そ、そうですか……」


 眉を下げ、羅刹様は前を向く。

 そのままヒトナキ山を通り抜け、街へと向かった。


ここまで読んで下さりありがとうございます!

出来れば次回も読んでいただけると嬉しいです!


出来れば☆やブクマなどを頂けるとモチベにつながります。もし、少しでも面白いと思ってくださったらぜひ、御気軽にポチッとして頂けると嬉しいです!


よろしくお願いします(*・ω・)*_ _)ペコリ

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