第12話 家事
屋敷に戻り、筋トレも終わってしまった私は、用意していただいた部屋で時間を持て余していた。
ちなみに、羅刹様はこれからお仕事らしく、部屋にこもってしまった。
一人で自由に過ごしても良いと言われても、正直やりたいことがない。
私が今、一番やりたい事は、家事と鍛錬。それと、愛しの妹の現状把握。
妹は今、何をしているのだろうか。
両親に酷い目に遭わされていないだろうか。
心配だ、心配だよ、お姉ちゃんは心配だよ。
「…………そう言えば、羅刹様は何で私に縁談を持ち込んだんだろう」
縁談を持ち込んだ理由を、今更ながら聞いていなかったことを思い出した。
祓い屋の力が欲しいとかなら、私ではなく確実に妹である水奈に出すはず。
水奈のことを知っていたのも気になる。
ただ、調べていたら知った。とかなら特に気にしない。
けれど、口止めをされていると羅刹様は言っていた。
それって、水奈からだよね、きっと。
水奈が、羅刹様とお話しして、口止めをした。
その理由は?
そもそも、二人の接点は? 何もかもわからない。
水奈も、羅刹様も変なことを考える方ではない。
私を陥れようなんて、絶対に考えないだろう。
だって、水奈はひとまず女神で天使で、私の愛しの妹だから絶対に悪いことは自らしないだろう。
羅刹様も、私を陥れるのなら、何度も婚約について聞いて来るはずがない。
私から情報を抜き出したいと考えていたとしても、婚約をしてしまえば何でも言う事を聞かせられる。
「んー。今考えていても仕方がないし、時間を持て余しているのなら筋トレを――――」
そう言えば、さっきから廊下を人が行き来している。
襖を少しだけ開けていると、色んなあやかしさん達が拭き掃除をしていた。
もしかして、この現代でも、手で拭き掃除を行っているの!?
「す、すいません!!」
※
「あ、あの。これは一体、どういう状況で??」
「あっ、百々目鬼さん!! 聞いてください!! 私は――……」
「まず、ろくろ首の肩を話してもらってもよろしいかしら。怖がっているので」
「ハッ!! すすすすすす、すいませーーーーーーーん!!」
百々目鬼さんに言われて、手を離すとろくろ首さんは一歩後ろに下がってしまった。
「す、すいません。本当に、すいません……」
「大丈夫ですよ。痛みはありません、少し驚いただけなので」
「本当にすいません!!」
気を遣わせてしまった!!
あぁ、怒られる、むしろ怒って。
「それで、なぜ今のような事態になっていたのでしょう?」
百々目鬼さんが頭を抱えて聞いた。
素直に伝えると、何故か驚き目を開く。
「え? 掃除がしたい?」
「はい」
「な、なぜ? 貴方は羅刹様の婚約者ですよ? そんな、女中がするようなことを無理にしなくても……」
百々目鬼さんが困惑気味に言うけど、私は違うのです。
今迄、ずっと掃除をさせられていた身として、なんとなく気が休まらない。
そいうより、時間を持て余している今が結構辛い。
掃除でもして、気を紛らわせたい。
けど、これ以上迷惑をかける訳にもいかない。
感情的になって、ろくろ首さんの肩を掴んでしまう始末だし……。
「すいません。わがままが過ぎました。私、部屋に戻りますね」
「あっ、あの――」
反省して、部屋に戻ろうとすると、廊下の奥から羅刹様が歩いて来た。
「どうした?」
「あっ、羅刹様!」
百々目鬼さんが急ぎ足で駆け寄り、現状を急ぎで伝えている。
怒られるかな、怒ってほしいな。
流石に、勝手が過ぎた!!
「ふむ。そうか。それなら、ろくろ首、お主が主体となり水喜に色々教えてやってくれ」
「それは、掃除のことでしょうか?」
「あぁ。やりたいのなら、やらせてやる。少々、考えるものがあるがな」
頬をポリポリと掻き、複雑そうな顔を浮かべている羅刹様だけれど、私がやりたい事を優先してくれた。
「あ、ありがとうございます!!」
「いや、時間を持て余していたのだろう。好きにするが良い」
言いながら、笑みを浮かべ羅刹様は廊下の奥へと姿を消した。
「では、羅刹様の許可も下りましたので」
「は、はい!! よろしくお願いします!!」
ろくろ首さんにいろいろ教えてもらいながら、掃除を頑張るぞ!!
気合を入れていると、またしても廊下の奥から人が現れた。
「おや、雪女さんではありませんか。いかがいたしましたか?」
「少し、ここを立ち寄っただけよ」
「そうですか」
わぁ、雪女さん、百々目鬼さんと話している時、頬が少し柔らかくなるんだ。
凄く美人で、目を奪われてしまう。
私の視線に気づいた雪女さんは、目を合うのと同時に眉間に深い皺を寄せてしまった。
悲しいです、私……。
「なぜ、水喜様がこんな所にいらっしゃるのでしょうか」
「水喜様は、体を動かすのがお好きなようで、羅刹様の許可も下りたため掃除を一緒に行おうと思っております」
「掃除、ですって?」
な、なんか、声が、さっきまで百々目鬼さんと話していたような透き通るような声色ではないのだが?
ドスの効いている声なのだが?
怖い、普通に怖い。
「…………そうやって羅刹様に好かれようとしているのね!! でも、残念ね! いい? 貴方みたいな女子力がない女性など、羅刹様は眼中にないのですからね! 勘違いしないでくださる?」
…………ん?
ど、どういうことだろうか。
私、女子力が、ない?
いや、確かに、そこまで自分を磨いているわけではないのだけれど、面と向かって言われるとは思わなかった。
固まっていると、雪女さんが鼻息荒く、言葉を続けた。
「羅刹様は、もっと美しく美貌に恵まれた方がふさわしいの。貴方みたいな子供体型な子なんて興味すらありませんことよ!!」
ふくよかな胸を揺らしながら、雪女さんが訴えて来る。
白い着物から今にもはみ出しそう……。そんな人から見たら、私は確かに子供体型だ。
なんで、急にそんなこと――あっ、もしかして。
「雪女さん、羅刹様のこと好きなんですか?」
「っ!?!? そ、そそそそ、そんなこと言っていないわよ!! 変な事を言わないで!!」
あっ、顔を真っ赤にして廊下を走り去ってしまった。
…………へぇ、雪女さん、羅刹様が好きなんだ。
お二人がご結婚されたら、美男美女カップルの誕生ですね。
私はそれはそれで幸せで、毎日カメラでお二人を隠し撮り――ゴホン。
カメラにお二人の姿を収めたいですよ。
でも、羅刹様の婚約者は私……。
「い、いいいい、いいのかぁぁぁぁぁああ!?!?!?」
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