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あなたと食べたい学食で〜食べて悩んで味わって、あるのは恋か幻覚か〜  作者: 汐見かわ
8章 本校文化祭_屋台フード(じゃんじゃん集めるわよ)
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ケンカを売られた!

 学祭が始まってからそこまで多くは無いにしてもひっきりなしに教室には人が入って来ていた。

 俺と小早川さんはずっと受付をしており、(受付と言っても人数のカウントをするだけ)美魔女と未島は教室には戻って来なかった。ただ、来る人はほとんどチラシを持っているので2人はどこかでチラシ配りを一真面目にしているのだと思う。思っていたよりもちゃんとチラシ配りを頑張っているようだった。


「あの、すみません」


 展示を見ていた男子学生風の人に声を掛けられた。学祭には1人で来ているようで近くには友達らしき人がいなかった。


「この展示に使用している紙、光沢がありますがどこで発注したんですか?」

「えっと……」


 受付にいた小早川さんと俺は顔を見合わせた。

 メニューの事を聞かれればサイトの更新をしている小早川さんが全て答えられるが、展示に使っている用紙は未島がどこかに発注をしていたのでそんな専門的な質問をされてもわからない。


「わかるものが今不在でして。戻って来たら答えられるんですけど……」

「これ光沢あるし、たぶん合成紙だと思うんだけど、こんだけ量あって印刷代とか。部費とか高いんです? 部員は何人なんですか?」


 急にいろいろと質問され、きょとんとしていると


「もしかして! このサークルに興味のある方ですか?」


 小早川さんが勢い良く立ち上がった。あ、そうか研究会の活動に興味ある人ね。勧誘チャンス到来か。


「まさか。冗談はやめて下さいよ」


 男子学生風の男は鼻で笑った。

 何だこいつ。感じ悪いな。腹立つ。


「私はこういう者です」


 鞄から名刺を取り出して小早川さんの前に差し出した。


「慶永大学、総合政策学部2年生、山中悠人……学食研究会!」

「何だと……こいつ」


 思わず俺も立ち上がった。敵だ敵が攻めて来たっ! 何をしに来たんだ。


「あれ、あなた……以前にもしかして」

「ふっ……やっと気付きました? 秀峰食堂で会いましたよね」

「え、何だっけ? 誰?」


 俺がアホみたいにぼんやりしているとこそっと小早川さんが教えてくれた。


「カレーを食べてその後に嫌味を言って来た……」

「あ! あいつか」

 

 なんてことだ。思い出したぞ。慶永大学の食堂で席を譲ってくれて、スマートで良い奴だと思っていたところに後から嫌味を言ってきたヤベー奴か。


「偵察と言いますか。どんな展示をされるのかなと気になりまして。いかがでしたか? 我々の展示と比べて」

「我々の展示?」


 我々の展示って、慶永大学の学食研究会の展示と比べて俺達の展示がどうだってことを聞いているのか?


「どうって言われてもねぇ……」


 俺と小早川さんは再び顔を見合わせた。慶永大学の学祭は行っていないし、比べようがない。

 しかし、この『当然見に来ていますよね』的な圧は何だ。正直、他の大学で似たような活動をしている学食研究会があったとしてもそこまで展示が気になるかと言うと、別にそこまでじゃないし……。


「あの……すみません。慶永大学さんに学食研究会があるのは知りませんでしたし、展示には行っていません。来年は行くかもしれないし、行かないかもしれないです……なので、展示の比較ができないです。わからないので」


 小早川さんがもごもごと慶永生に言った。男はみるみるうちに顔面が青くなり、何やらぶつぶつと言っている。「は? ありえなくないか?」「何てことだ」って聞こえてる。怖いんだけど。ていうかさっさと帰れ。不審者め。

 小早川さんに危害が及ばないように、とりあえず彼女の前に俺が出ることにした。


「……いや、来ていないのは想定外でしたが、まぁ良いでしょう」


 いや、逆に何で来てると思ってる? 自意識過剰過ぎるだろ。別にそちらさんには興味無いですなんて言ったらどんな顔するんだろうか。


「悔しいけどまずこの展示物のポスターの素材そのもののクオリティーが高く驚きました。部費が潤沢にある証拠。一体部員は何名いるのだろう……やはり30人はかたいと見ました」

「はぁ、まぁそうですかね? ありがとうございます」


 部員は4名だ。そして展示に利用している紙は未島のポケットマネーだけどな。

 相手を刺激しない程度の気のない返事をしておいた。

 

「あと、一番納得がいかないのがこの我が秀峰食堂のカレーがなぜこんな低評価なのですか。明らかにひいきをしている。公平ではないでしょう。おかしいですよ!」


 何なんだこいつは。好き勝手に言ってやがる。食べて思ったままの点数を小早川さんとつけたのだが。この手のやべー奴には何を言っても聞く耳を持たないだろう。

 相手するのも面倒だし、文化祭の委員でも呼んでつまみ出してもらうか。腕章をつけた委員がそこら辺をうろうろしているはず。小早川さんに呼んできてもらおう。


「小早川さん、ちょっと……」


 と言いかけて後ろを振り返ると、小早川さんは俺の横を通り慶永生の前に出ていた。


「え、小早川さん危ないから下がって……」


 俺の言葉は届いて無いらしく、一歩を踏み締め慶永生に近づいた。急な出来事に男は少し後ろにたじろいだ。


「不正だなんて失礼です! この評価は1人ずつが点数をつけてその平均点で出しています。皆が真剣に食べて考えて感動して感謝をして評価をつけています。あんまりふざけた事を言ってるとさすがに怒りますからね!」


 慶永生にぐいと近寄り、胸ぐらをつかみそうな勢いだった。まさか相手にこんなに反論されるとは思っていなかったのか、慶永生は完全に面くらって言葉を失っている。

 この不審者を追い出すなら今だな。小早川さんと男の間に立ち、手を添えて教室の外に誘導しようとした。

 

「じゃあほら他のお客さんもびっくりしちゃうんでお引き取り下さいね。来年はそちらさんの文化祭に行きますから。たぶんね。忘れて無ければ。あのほら、お昼時間になるんでね、そろそろ教室閉めますよ……っと」

「いや、まぁ、不正ではないなら別に良いです。あと、あなた既に怒っていると思いますが……」


 小早川さんの方に振り返りぶつくさ言いながら、渋々慶永生は教室の外に出た。

 と、同時にばったり廊下でたくさんのビニール袋を手にしている美魔女と未島に出くわした。


「あら……あなた。その顔はどこかで」

 

 ややこしいのが戻って来てしまった。

 

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