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あなたと食べたい学食で〜食べて悩んで味わって、あるのは恋か幻覚か〜  作者: 汐見かわ
8章 本校文化祭_屋台フード(じゃんじゃん集めるわよ)
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周りのアクが強すぎる

 学園祭の準備はテーブルを動かし、ただ出来上がった印刷物を貼るだけなので学園祭当日の開場2時間前に11号館の604号室に集合させられた。

 教室に行くと既に小早川さんと未島がいて、業者に印刷を発注したものをテーブルの上で広げていた。


「何か映画館みたいじゃないですか。ポスターっていうか。めちゃくちゃ見栄え良いですね」

「他のサークルはだいたい模造紙に手書きしているもののようですが、我々のは目立ちますな」


 紙は模造紙と違って光沢があり、触ると表面も裏面もつるつるとしている。少し濡れても水を弾きそうな丈夫な紙だった。


「これまた何か高いのをオプションでつけたんじゃ?」

「バレましたか。ひゅひゅひゅ。あまり値段が変わらなかったので経年劣化に強く保存に適している方の用紙を選びました。太陽光をあびても変色しにくいらしいですよ。いやなに、ほんの数万円の違いですよ」

「さらっと金持ち発言するのやめてもらってよいですかね……」

 

 そんな未島のポケットマネーで印刷されたポスター程の大きさの紙に、学食のメニューを撮った画像と、俺達がつけた評価や感想などが書かれている。それがずらりと並んでいる様子を見ると、本当にこの人達は学食っていうものが好きで学食メニューの食レポに情熱を捧げているのだなと感心させられる。


「こんなに並べてあると、改めて今まで美波里先輩と未島先輩が頑張って学食でご飯を食べてきて研究してきたんだなぁと実感がわきますね。すごいです。似たような名前のメニューでも盛り付けも味も全然違うってパッと見てわかりますし」


 一枚一枚を両手で持ち、まじまじと眺めながら小早川さんが言った。


「それは今井氏も含むみんなで食べて評価してきた結果ですな」

 

 数回しか学食研究会として活動していないし、運営しているサイトも積極的に見た事も無かったが、こうして今まで俺が食べて評価してきたメニューが大きく印刷されて目の前にできあがると自分達はなかなか面白い活動をしてるんだなと思う。

 なるほどね、学園祭って人を呼び込んで宣伝するだけじゃなくで自分達の活動を振り返る場でもあるんだな。

 

「テーブルはどういう形に並べましょうか?」


 小早川さんの問いに何か応えようと思った時、廊下からカツカツと床を鳴らすヒールの音が聞こえてきた。来たな美魔女。


「グッドモーニンッ! 愉快な仲間達!」


 肩と背中が大きく開いた黒いワンピース姿で案の定、美魔女が登場した。見るからに寒そうな格好をしている。そろそろ秋も深まってきているのだが。


「入り口はこっちの扉側でテーブルは2つ。受付は茉依と今井大輔の二人でやってちょうだい。そしてテーブルは教室を囲む形で設置して、真ん中に4つ。未島君に頼んだ物は壁と真ん中のテーブルのところに貼る」


 美魔女は遅れて来るなりひとしきり指示を出し始めた。偉そうだなぁ。そしてテーブルに浅く腰を掛けると顎を天井に向け、なぜか手を首あたりに添えてポージングをとっている。


「ホワイトボードの貸し出しを2枚申請してるから、未島君は下の階に取りに行って来てちょうだい」

「わかりましたぞ」

「テーブル移動させますんで、そこどいて下さいよ」


 美魔女に声を掛けると美魔女は大人しくテーブルから離れ、広げてある展示用の紙を見ている。


「美波里先輩、貼りましょう。食べた順で入り口から貼って行きますか?」

「入り口は我らがマスターとミューズの学食メインで貼った方が良いわね。その後に大学は名前順が良いかしらね」

「わかりました」

 

 マスターとミューズの学食って何だよ。この人時々変な言葉使うんだよな。

 壁に貼る展示物の方は二人に任せるとして、俺はテーブルの移動をしていた。決められたことを決められた通りにするだけなのでさほど時間はかからずにテーブル移動は終了した。

 ちょうどその時に、ホワイトボードを調達してきた未島が教室に戻って来た。


「何やら隣りのヘビメタは機材の調子が良く無いみたいですぞ。しばらく演奏はできなさそうです」


 それは良かった。ヘビメタフェスには悪いが、爆音を出されたらうるさいし、人が来なさそうだもんな。


「よし! 後は全員で貼るだけよ。テーブルのところに貼るのを置いておいたから、そのまま壁に貼ってちょうだい。それで展示の準備は完了」

「わかりましたぞ。では、今井氏、私と一緒にやりましょう」

「はいはい」


 果たしてこんなマイナーなサークルの展示に人なんて来るのだろうか。

 せっかく他の大学の学食を食べて渡り歩いているし、けっこう真剣にメニュー評価はつけているし、誰も来なかった……なんてことがないと良いな。

 未島は履いていた靴を脱ぎ、よいしょと重そうにテーブルの上に乗った。テーブルに置いてある用紙を持ちながら両腕を目線の高さよりも上に持ち上げると、両腕はふるふると小刻みに震えていた。


「私めが抑えておきますので、どうぞ貼って下さい」

「はいよ」


 セロハンテープを先に4枚切って手の甲にまとめて貼り付ける。


「は、早くぅ! 腕が!」

「はいはいはい、もう少し頑張って」


 今、ちょうど貼ろうとしていた紙は、先日みんなで食べた『鶏唐プレート』の紹介文だった。

 あの頃は真夏で暑かったが季節はもう秋だ。時間が経つのも、そして学食研究会に馴染んだのも案外早かったな。

 文化祭開場まであと1時間40分。

 

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