表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あなたと食べたい学食で〜食べて悩んで味わって、あるのは恋か幻覚か〜  作者: 汐見かわ
5章 城山大学_鶏唐プレート(夏と言ったらこれだよこれ!)
27/53

複雑ぅう

「確かに金色ですなぁ」


 網の中の金魚を逃がしながら未島が言った。未島の釣った金魚は網から放たれるとすぐに慌てて泳いで遠くに行ってしまった。


「……この子、綺麗で泳ぎも力強くて優美でどことなく美波里先輩に似てるなと思って」


 ぎょっとした。

 金魚に似てるって……それって悪口なのではと思ったが、小早川さんの言いっぷりからしてどうやら褒めているらしい。まぁ確かに金色の金魚は他のに比べると尾も長く、悠然と泳いでいる姿がふてぶてしくてそう言われてみると美魔女と似てなくもない……かも。


「ほほう、なかなか独創的で面白い視点ですなぁ」


 未島は指をあごにつけてまじまじと網の中を眺めている。


「それでは、こっちの金魚は今井氏に似てますな」

「はぁ?」


 未島が指をさしている先には白とオレンジ色のまだら模様の金魚がいる。白色の部分が顔にかかり、ちょうど真ん中分けをしている俺の髪型のように……見えなくも……いや、無理があるだろ。


「ならこっちの丸いのは未島さんに似てますよ」

「ほほう、確かに!」


 他の金魚より丸々として恰幅(かっぷく)の良いヤツを指さして言ってやった。

 でも金魚に似てるってさぁ……もうわけがわからないな。くだらない会話をしていて楽しいけど。

 

「やっぱり持ち帰ります。金魚の先輩方と別れるのは寂しいですし」

「しかし持ち帰れるのは2匹までですぞ。誰か1匹は脱落ですな」


 脱落って言い方が嫌過ぎる。


「美波里先輩は確定で……」


 あ、そこは確定なんだ。しかも即答だったな。小早川さんにとって美魔女は何なんだ。憧れの存在? あんなのが? 理解できない。変な迫力があって遠慮なくズバズバと言うし。ああいうわけのわからない威圧感があって超個性的なのが小早川さんにはウケが良いのだろうか……。


「あとは今井氏か私ですな。さぁどちらを連れ帰るのですかな」


 どうか俺であってくれ……!


「う~ん……悩みますね。……こっちの今井先輩の方にしようかな」


 よっしゃ! 俺(金魚)が小早川さんに選ばれた! 思わず小さくガッツポーズをしていた。

 ……でも、どうして? なぜ俺の方を選んだのか、ほのかに期待してしまう。


「えっと……理由とかあるの?」

「未島先輩はたぶんこのまま大きく育ちそうで、狭い水槽の中にいるよりもここにいた方が良いかなと。あと、今井先輩は針を取るときにちょっと手こずった子で弱ってるかなって。かわいそうなので」


 かなり消極的な理由だった。つまり同情だな、憐れみの目で俺(金魚)を見ていたのか。

 

 こうして金魚の俺と美魔女はそばにあった器に移しかえられ、未島をはじめとする他の金魚たちは生け簀の中へと戻された。

 

「家に空いてるプラケースがあって、とりあえずはそこに入れようかなと思ってます」

「それ良いね。でも水入れたら重くなりそうだね」

「兄に聞いてみましょう。なにかしら飼育セット一式があると思いますよ」

「お手数をおかけします。ありがとうございます。嬉しいです」


 小早川さんの手元にいる俺と美魔女(金魚)を見ると、美魔女はひらひらと泳いでいるが、俺の方は動かないでじっとしていた。そうだよな。美魔女とひとつ屋根の下で暮らすとか恐ろしいもんな。きっと俺はすぐに衰弱して死ぬだろう。かわいそうに……。

 金魚の入った器をレジに持って行くと、店員が手慣れた手つきで金魚を持ち帰り用の袋に移し替えた。小早川さんは受け取った袋を少し上の方に掲げて眺めていた。


「この2匹を先輩達だと思って大切に育てます!」

「うん……そう……だね」


 何か違う。いや、何かじゃない。絶対に違う。何もかも違う。俺、人間だし。


「私、金魚を家にお迎えしなきゃいけないのでそろそろ帰ります。今日はとても楽しかったです。ありがとうございました」

「家に良い水槽がありましたら連絡しますぞ!」

「未島先輩ありがとうございます。ではまた」


 空気が入りパンパンに膨らんだ金魚の入っている袋を大事そうに抱えて小早川さんは足早に帰ってしまった。

 俺と未島がその場に残されて、2人してお互いに顔を見つめた。


「さて、この後どうしますかな。時間は昼を少し過ぎた辺りですね」

「帰りましょう。特にやる事ないし」

「……そうですか。同い年ですし、今井氏と親睦を深めようかと思いましたが」


 小早川さんも先に帰ってしまったし、俺は未島にもこの場所にももう用は無い。暑いし早く帰りたい。


「今度サシで飲みに行きましょうよ。俺、いつでも空いてるんで。未島さんに合わせますよ」

「何と……」


 未島は両手で口を押さえて目を見開いている。何か変なこと言った? どうした?


「私めは実はサークル以外で懇意にしている友人がいないのです。今、いたく感動しておりますぞ……!」


 友達がいなかったわけね。そりゃほぼ露出狂みたいな美魔女とつるんでたら周りからは警戒されるだろう。


「ゼミの話もできますし、後は……就活の話なんかもできますな。サークルの話、好きな食べ物の話、高校の話など……あ、あとは今井氏自身のことも聞いてみたいですな……」


 未島は指を降りながらぶつぶつ何かを言っている。1人でぶつくさ言っている未島と俺は釣り堀りを出て、駅に向かった。

 季節は夏でもうすぐ夏休みに入る。学食が営業していなければサークル活動はしないわけで、どうせ夏休みに活動はしないのだろう。小早川さんとも夏休みの間は顔を合わせることは無い……と思う。

 結局、東京タワーに行った後に誰と会う約束をしていたのかは聞けなかった。



【城山大学内食堂 鶏唐プレート】

名称、3

値段、3

味、4.5

見た目、4.5

ボリューム、4

大輔的所感▶︎唐揚げは正義。ソースが無くても美味い。金魚釣りはコツってあるの?

 

※あとがき※


ここまでお読みいただきありがとうございました。

無事にお持ち帰りされた大輔(金魚)、茉依はどんな思いで家に迎えるんでしょうね。

次回からはながーい夏休み回です。

評価(★)やブックマークは励みになりますので、応援していただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ