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あなたと食べたい学食で〜食べて悩んで味わって、あるのは恋か幻覚か〜  作者: 汐見かわ
5章 城山大学_鶏唐プレート(夏と言ったらこれだよこれ!)
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水をかけたらこんな感じ……ね

 未島に手招きをされて呼ばれた小早川さんは一緒に見ていた水槽から移動をしてしまった。

 おい、未島! 呼ぶんじゃない! 邪魔をするな邪魔を。

 まだ1年生とあって、部活の先輩が手招きしていればそれに素直に従うものなのだな……そうだよな。無視してたら感じ悪いもんな。俺もすぐ後から未島の元へと向かった。


「金魚釣りが30分で500円だそうです。金魚を釣りませんか? いかがですかな?」

「お、良いですね。小早川さんどうする? バイトの時間大丈夫?」

「30分なら全然大丈夫です。金魚すくいはやったことありますけど、釣りは初めてです」

「では、私めがまとめて払いますのでお代を……」


 未島に500円を手渡し、小早川さんは千円札を渡していた。俺が渡した500円がそのまま釣り銭として小早川さんの元へと渡って行った。

 レジで支払いをすませると、店員さんが竿と金魚用の餌を渡してくれた。


「針がついてる……」

「まぁ釣りだからね。エサは水の中に入れるとすぐ崩れるから固めると良いよ」

「詳しいですな」


 外に出て釣った金魚を入れる為の網を手に取る。来た時にいた親子はもういなかった。自分達以外に人がいないので、金魚釣り堀の真ん中でお互いに少し離れて釣りをすることにした。釣り糸が絡まっても面倒だし。


「時間あるし、早く釣らないと」

「あ、エサが柔らかくて固めるの難しいですね」


 小早川さんはエサを小さくこねて釣り針に刺していた。


「指がベタベタになりますなぁ……」

「金魚の餌がちょっと臭うんだよな。あ、手洗い場は後ろに」


 未島の後ろには洗面台がある。ハンドソープもついているので汚れたら手洗いはバッチリだ。

 

「あ! エサを入れたらすぐに来て全部食べられちゃいました」

「釣り針の交換は確か有料なはず。気をつけないと」

「そうなんですね……金魚たち活きが良いみたいです」


 小早川さんは再びエサを釣り針につけている。俺も早く釣りを始めないと。


「おぉ! 釣れましたぞ!」


 未島が釣れた金魚を手でつかみ、口に刺さっている釣り針を外していた。白くて大きな金魚だった。


「あー! 釣れました! 口に刺さってる! 針が! 針が! 口に!」


 小早川さんは金魚を糸につけたまま慌てていた。金魚は空中で暴れている。


「まずは針を外すんだよ」


 小早川さんの釣った金魚を手でつかみ、釣り糸を外してから金魚はアミの中へ入れた。


「ありがとうございます。口に刺さってるのを見てビックリしました。針痛そうですね……」

「痛いかもしれないけど、釣りってそういうものだし」

「……そうですよね」

「一説によると魚は痛みを感じないとも言われているそうですな。見解は分かれているようですが……あ、釣れた!」


 未島が再び金魚を釣り上げた。オレンジ色が鮮やかな金魚だった。


「あ、私も!」


 未島に続き、小早川さんも2匹目の金魚を釣った。今度は自分で口に刺さった針を取り外している。

 俺だけがまだ釣れていない……。

 エサを水の中に入れると、エサ目掛けて何匹かが勢い良く食い付いてきた。腹を空かせているのか、動きはとても俊敏だ。


「あ、また釣れました! 金色だ」


 くそう……金魚釣りをするのは初めてだと言う小早川さんは既に3匹目か。俺は経験者だが今だに1匹も釣れていない。悔しい。


「お! 食い付いた!」


 と、思ったらエサだけを上手いこと持って行かれて逃げられる始末。

 夏のためか金魚の動きも活発でエサを入れたらすぐに食い付き、そして逃げられてしまう。


「あ、また」


 小早川さんはさらに小さめの金魚を釣っていた。ぴちぴち跳ねている金魚がしずくを飛ばすので目を細め、顔を金魚から離しながら針をとっている。その姿がビーチで水をかけあっているようなカップルの風景を想像させる。夏のひとときの思い出ってやつか……。

 しかし彼女はさっきから針を入れたらすぐに金魚が釣れているな。なんで? 天賦の才(てんぶのさい)でもあるの?


「糸を引かれてそこからグッと釣り上げる感覚が気持ち良いですよね……!」


 何か「趣味は釣りです」って感じの感想言い出してるし……。

 そうこうしているうちにあっという間に30分は過ぎてしまった。暑さを忘れさせるほど金魚釣りに熱中していた。


「おや、今井氏は一匹も釣れなかった感じですかな。まぁそういう日もありますよ。残念でしたね」

「……」


 未島には手元にある網を覗き込まれ、にやにや笑われ……てはいない。いっそのこと笑われたりバカにされた方が悔しくはなかった。育ちが良いからか、人を小馬鹿にするような事を言わないのが本当に人としても負けた気がしてやるせない。


「この金魚って持ち帰れないですかね……」


 小早川さんの網には何匹も金魚がいて、ぐるぐると網の中を泳いでいた。


「有料ですが2匹までは持ち帰れるようでしたな。レジのところに確かそう書いてあった気がしますぞ」

「そうなんですね。可愛いし、持ち帰りたいなぁ」

「水槽はあるの?」

「いえ……持ってなくて。やっぱり水槽がないと飼育は難しいですかね?」

「どうだろ……小さいのだったらバケツとかでもいけるんじゃないかな? 陶器の金魚鉢で飼われてるイメージあるし」

「そう言えば兄の使っていた空の水槽が家にありますな」


 どうせ何メートルもある大型水槽なんじゃないか? どうやって小早川さんの家まで運ぶんだよ。それに部屋にも入らないだろうよ。親切も休み休み言えってんだよ。


「しかし、確実に2メートル以上はある水槽なので重くて持ち運べませんな」

「運ぶ前に絶対に部屋に入らないですよ。やっぱり金魚をお持ち帰りするのはあきらめようかな……でも見て下さい。この子。金色でひらひらしていて綺麗なんですよ」


 網の中には1匹だけ金色で尾びれがひらひらとした金魚が泳いでいた。鯉が混ざっているのだろうか。確かに他の金魚に混ざっていても目立っている。いかにも「当たり」って感じがする。


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