異世界美少女エリス チート魔法で現代無双~魔法の代償と復讐の果て~
異世界美少女エリス<リセットスティックの魔法>
長谷川修平は、ありふれたサラリーマンだった。朝から晩まで働きづめで、上司に怒鳴られ、同僚に手柄を横取りされる毎日。生活には張り合いがなく、特に結婚を約束していた婚約者に突然別れを告げられたあの日以来、心は灰色の霧に包まれていた。
ある晩、仕事帰りの公園でぼんやりとベンチに座っていた修平の前に、突然、銀髪の少女が現れた。
「こんばんは、長谷川修平さん」
「…誰だ?」
「私はエリス。少し面白いものを持ってきたの」
エリスはポケットから一本の木の棒を取り出した。それは鉛筆のように見えたが、光沢のある紫色で、不思議な模様が刻まれていた。
「これは『リセットスティック』。何かを完全に元の状態に戻す力を持っているわ。壊れた物でも、散らかった部屋でも、疲れ果てた体でもね。ただし、一度触れると、その物事の状態を完全にリセットするの」
エリスは微笑んでスティックを修平に渡した。
「試してみて」
半信半疑の修平は、帰宅してすぐ、リセットスティックを試してみた。机の上にあった割れたマグカップに棒を触れると、瞬く間にカップは新品同様になった。
「すごい…本当に戻った!」
彼は興奮して、次々とスティックを試した。壊れた電気ポット、擦り切れた靴、ボロボロの本。それらはすべて瞬時に元通りになった。
修平はこれを「掃除」に使えると考えた。乱雑だった部屋があっという間にきれいになり、まるで新築のようだった。
しかし、物だけではなかった。彼は試しに疲れた肩にスティックを触れると、筋肉の痛みや疲労が消えた。
「こいつはすごいぞ…」
最初は生活を便利にするだけだったが、次第に彼の使い方は変わっていった。ある日、仕事で大きなミスを犯した修平は、リセットスティックをパソコンの画面に当てた。すると、締切間近の資料が完成状態に戻り、失敗はなかったことになった。
「なるほど、これは時間も巻き戻せるのか」
修平は自信を得て、日常の問題をスティックで次々と解決した。
だが、それだけでは満足できなかった。修平はある日、婚約破棄した元婚約者の家を訪れた。スティックを使えば、彼女の人生のある部分を「リセット」できるのではないかと考えたのだ。
彼女が去り際に言い放った「あなたと一緒にいても未来がないから」という言葉が、修平の心に深く突き刺さっていた。
彼女の新居に忍び込んだ修平は、リセットスティックを机の上にあった結婚写真に当てた。すると、写真は消え、結婚そのものがなかったことになったように見えた。翌日、彼女から連絡があり、「なぜ私が結婚していないのか覚えていない」と困惑する声を聞いた。
この成功に味を占めた修平は、かつて彼を嘲笑した同僚や上司にも同様の手を使い始めた。彼らの成功を次々と「リセット」していったのだ。修平の胸には、「ざまぁ」という痛快さが渦巻いていた。
しかし、リセットスティックを使いすぎた結果、周囲の世界は徐々におかしな様相を呈し始めた。修平が「リセット」した出来事の影響で、時系列が混乱し、物事が成立しなくなったのだ。ある日、彼は目を覚ますと、隣の家も、職場も、町全体が消えていた。
「どうなってるんだ…」
恐怖に駆られた修平の前に、エリスが再び現れた。
「楽しめたかしら?」
「なんだ、これは!」
「『リセット』をやりすぎたのよ。物事のつながりは、元に戻せば解決するわけではないの。あなたは、自分の行いで周囲を壊してしまった」
「どうすればいい…戻してくれ!」
エリスは首を横に振った。
「残念だけど、それはできない。でも、一つだけ救いがあるとすれば…」
エリスはスティックを取り上げ、修平の額にそっと触れた。
目が覚めると、修平は元のベンチに座っていた。エリスもスティックもいない。時計を見ると、彼女に出会う直前の時刻だった。
「夢…だったのか?」
しかし、ポケットにはあの紫色のスティックが入っていた。修平はしばらくそれを見つめてから、公園の池に向かって投げ捨てた。
「もう二度とこんな力は使わない」
修平は、地道に生きることの大切さを心に刻み、再び日常へと戻っていった。