第9話ていう訳で、俺達の異世界生活はここから始まるらしい
「納得は不要です、天野さん。セレーナ様にも深い事情があるのです」
「あら、そう。だったら、今の話のどこが浅かったのか説明して欲しいんだけど?ねぇ、ミレーナ様」
「生憎と、それだと地上の民には話せない内容にも触れる必要があります。これ以上の説明は難しく、結局の所、選択肢は一つしかありません」
「この世界で生きていけって?」
「はい!」
どうやら、この異世界に召喚された時から、俺と天野の運命は決まっていたらしい。
俺達が何故、勇者召喚に巻き込まれたのか。
その理由は分からないままだが、それを知った所で結果は変わらない。
第一王女・ミレーナ様が笑顔で俺達に告げる。
「お二方にはこれから、この世界で暮らしてもらいます。安心してください、想定外の事態だったとはいえ、この私が責任を持って支援しますわ」
マジか……。
実の所、まだ心の準備が出来ていないというか、そもそも本当に家に帰れないのか疑っている段階なのだが。
それは天野も同じなようで不服そうな顔をしていた。しかし、流石才女というべきか、直ぐに切り替えて言葉を返す。
「分かったわ。けれど、その支援は本当にあるんでしょうね。あったとして、どの程度、どの期間までそれは受けられるのかしら。あと言っておくけど、支援を受けるのに何か条件を呑めなんて言わないで。これだけは譲れないわ」
「承知しております。その辺の話は、心配ありません。後ほど遣いの者を寄越しますので、早速移動を始めましょうか。この場所も安全とは――」
「ミレーナ王女殿下!」
と、話を進めていると、部屋の外から酷く慌てたような声が聞こえて来た。
「どうやら、ここまでのようですね。貴女方が逃げた事が露見したようです。近衛騎士に入られては、隠れていても直ぐに見つかりますし、この窓から逃げてください」
なんて言って、お姫様は窓に近寄って戸を開けた。
めっちゃデカくて、外の地面からは恐らく数十メートル離れている場所の窓をだ。
おかしい。俺はポケットのスマホを取り出した。
色々あって画面はバキバキに割れているが、そこにはハッキリと今日の星占いの結果が出されていて、俺の誕生月は一位だった。
これを見るのはゲームでガチャ引く時の習慣で、それに従えば、今日は大当たりの日のはず。
にも関わらず、今日の俺は大外れだ。
――オワタ。
兎に角、俺は――いや、俺と天野はこれからエレミオンの国の騎士達から大逃亡を果たし、異世界で生活していかなければならなくなった。
もちろん、現実はそんな上手く行くはずがなくて、その度に頑張る訳だけど。
まぁ、それはまた別の話である――。
文月です。
本作はこれにて終了。
いかがでしたでしょうか?
少しでも面白いと感じて頂けれたなら、投稿して良かったなと思います。
また、本作を読まれて「良かった」、「笑えた」等々思われた方には★評価や感想をもらえたらなと。
文月が喜びます。
ということで、いつもの「なろうでの週一投稿」の生活に戻ります。
さらばだっ、とおー!